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食物繊維をとって脳卒中を予防 1日7g増やすと効果的

 食事で食物繊維を多くとると、脳卒中を発症する危険性が低下するという研究が英国で発表された。食物繊維の摂取量が1日7g増えると、脳卒中のリスクは7%低下するという。

 食物繊維が悪玉のLDLコレステロールを減らし、肥満や高血圧の改善に役立つことは、多くの研究で指摘されている。今回の研究は日本を含む5ヵ国の8件の研究をメタ解析したもので、食物繊維を多く摂取していると脳卒中の発症が減ることを裏付ける結果になった。

 研究チームは、1990~2012年に発表された研究論文の中から、米国、日本、フィンランド、スウェーデン、オーストラリアで行われた8件の前向き観察研究を解析した。いずれの研究も、健康な人を対象に、食物繊維の摂取量と脳卒中の発症について調査したものだ。

 4件の研究は脳の血管が詰まり発症する脳梗塞などの「虚血性脳卒中」に関するもので、3件の研究は脳の血管が破れて発症する「脳出血」と「クモ膜下出血」を中心に報告していた。

 解析した結果、食物繊維の摂取量が1日7g増えると、脳卒中のリスクは低下することがあきらかになった。食物繊維の摂取量を1日に7g増やすと、脳卒中の発症リスクは7%減少したという。これは、これは全粒粉のパスタ1皿、野菜2皿に含まれる食物繊維と同じくらいの量だ。

 食物繊維は「食品に含まれる消化酵素で消化されない成分」と定義されている。タンパク質、脂質、炭水化物などは、消化管の中で消化液中の酵素によって分解され体に吸収されるが、食物繊維は消化酵素の作用を受けずに腸を通過する。

 「食物繊維の摂取量を増やすために、食生活の全てを変えなければならないというわけではありません。食物繊維を豊富に含む野菜や果物食品を、毎食一皿ずつ加えるといった、ちょっとした工夫で食物繊維を増やせます」と、リード大学栄養サイエンス学部のビクトリア バーリ氏は話す。

 日本人の食物繊維の摂取量は、1950年代では1人あたり1日20gを超えていたが、食生活の欧米化や、ライフスタイルの変化にともない、年々低下しつつあるのが現状だ。最近の報告によると、平均摂取量は1日あたり14g前後と推定されている。

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によると、1日あたりの目安量は、男性19g以上、女性17g以上となっている。エネルギー摂取量とあわせてみると、おおよそ1,000kcalに対して8g以上の食物繊維を取ることが望ましいとされている。

 食物繊維は、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、海藻類などに多く含まれている。さつまいも、かぼちゃ、ごぼう、いんげん豆、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、しらたき、切り干し大根、しいたけ、ひじきなどには、1食中に食物繊維が2~3g含まれている。

 食物繊維は、小麦ふすまに含まれるセルロースに代表される水に溶けない「不溶性食物繊維」と、野菜や果物に含まれるペクチンや海藻類に含まれるアルギン酸など代表される水に溶ける「水溶性食物繊維」とがある。

 今回の研究では、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のどちらが、脳卒中を予防する効果があるか、はっきりとした結果は出なかった。

 「野菜や果物、小麦ふすま、ナッツ類など、食物繊維を豊富に含む食品を食べることで、脳卒中の発症リスクを減らせます。脳卒中の危険因子は、肥満、喫煙、高血圧などがありますが、身近な食事を見直すことで、はっきりとした効果を得られます」と、研究者は指摘している。

Eating more fibre may lower risk of first-time stroke(リード大学 2013年3月13日)

[Terahata]
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