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医療費が39兆円に増加 過去最高を11年連続で更新

 2013年度の医療費(概算)の総額が39兆3,000億円(前年度比2.2%増)に上り、過去最高を11年連続で更新した。
後期高齢者では医療費が4.5倍に膨張
 厚生労働省によると、昨年度の医療費は、概算で39兆3,000億円。前の年度に比べて8,500億円(2.2%)増加した。

 概算医療費は、1年間に使った医療費の合計である国民医療費の約98%に当たる。11年連続の増加で過去最高を更新しており、医療費の増加が止まらない。

 増加の主因は高齢化だ。国民1人当たりの医療費を年代別にみると、74歳以下では20万7,000円だったが、75歳以上の後期高齢者では92万7,000円となり4.5倍近くに増えた。全体の平均は前の年度より7,000円増えて30万8,000円になった。

 診療種類別では、入院が約15兆8,000億円で40.2%を占め、次いで入院外が約13兆6,000億円(34.7%)、調剤が約7兆円(17.9%)となっている。

 高齢化の進展や医療技術の高度化に伴い、今後も医療費の増加は避けられない。1日あたり医療費は1万5,213円で、前年度比3.1%増えた。抗がん剤などの新薬、新型の医療機器や手術が増え、医療費の膨張につながっている。

医療費の「西高東低」が続いている
 1人当たり医療費の地域差をみると、前年度に引き続き高知県が62万5,000円でもっとも高く、もっとも低い千葉県(40万1,000円)の1.56倍だった。医療費が多い地域は西日本が上位を占め、関東や東北など東日本の都県が下位を占めた。

 地域格差のカギは、医療費全体の4~5割を占める入院費用だ。入院患者に限定すると、もっとも高い高知県(34.3万円)はもっとも低い千葉県(16.4万円)の2.09倍となり、差が開いている。

 人口10万人あたりの病院ベッド数でも、西高東低の傾向は続いている。もっとも多いのは高知県、鹿児島県など西日本、少ないのは東京都や千葉県を含む東日本だ。

地域差指数 最高は福岡 最低は千葉
 厚労省は、2012年度の医療費の地域差の分析結果も公表した。「地域差指数」とは、地域の1人当たり医療費を、人口の年齢構成の相違による分を補正し、指数化したものだ。

 地域差指数のもとになっているのは、市町村国民健康保険と後期高齢者医療制度の情報。指数が1より高いほど、医療費の水準が高いことになる。

 地域差指数がもっとも高かったのは福岡で、全国平均を1とした場合に1.208だった。一方、もっとも低かったのは千葉の0.874だった。

 福岡の次に高かったのは高知(1.161)で、以下は長崎(1.159)、佐賀(1.158)、北海道(1.155)と続いた。一方、千葉の次に低かったのは新潟(0.877)で、静岡(0.881)、長野(0.889)、茨城(0.893)と続いた。

医療「ビッグデータ」で地域格差を是正
 厚労省は公定価格である診療報酬を調節することで入院の平均日数を短くするよう病院を誘導しようとしている。政府は25年度までに、医療・介護費を計5兆円抑制する方針を掲げている。来年度には都道府県ごとに医療費の支出目標を導入する方針だ。

 地域差の要因として、厚労省は(1)人口の年齢構成、(2)病床数など医療供給体制、(3)健康活動の状況、健康に対する意識、(4)受診行動、(5)住民の生活習慣、(6)医療機関側の診療パターン――などを挙げている。都道府県でこれらの要因が影響する度合いは異なる。

 きめ細かく医療費を管理するには、病院数やベッド数を調整する枠組みが必要になってくる。医療制度改革の最大のポイントは、各都道府県別に医療などに関する1年間の「支出目標」(上限額)を設定させるというものだ。

 目標設定に当たっては、医療機関が請求するレセプト(医療費の内訳を記した診療報酬明細書)や特定健診などの膨大なデータを活用する。すでに医療機関のレセプトの9割以上が電子化されており、77億件以上に上る医療「ビッグデータ」が蓄積されているという。

 加えてどの種類の病気で病院にかかっているか、平均入院日数、また後発医薬品をどの程度使っているか、さらに高齢者数などの人口構成などの指標も使う。

後発薬への切り替えの浸透をはかる
 医療費を抑制する有力手段として価格の安い後発(ジェネリック)薬の普及を位置づけており、医薬品全体に占めるシェアを数量ベースで今の4割から2017年度末までに6割に引き上げる方針だ。

 厚労省は医療費が高額になっている患者が割安な後発医薬品をなるべく使うよう、健康保険に対策を求める検討も行っている。

 健康保険は患者が負担する医療費に月額ベースの上限を定める「高額療養費制度」があり、この制度に該当している患者が対象になる。

 高額療養費の該当患者は、抗がん剤など単価が高い先発薬を使うケースも多く、後発薬への切り替えが浸透すると、医療費の抑制効果が大きい。

 厚労省は、高額療養費の該当患者に絞った対策を検討している。診療報酬明細書(レセプト)を分析するなどして、該当者が使う薬のうち後発薬の割合がどの程度あるかなどの実態を調査する。

平成25年度医療費の動向(厚生労働省)
医療費の地域差分析(厚生労働省)

[Terahata]
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