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母乳で育った子どもは肥満になりにい 小児の知能発達にも影響

 母乳で育った子どもは肥満になりにくく、知能指数が高い傾向があることが、米国とブラジルで行われた研究で明らかになった。母乳育児は食欲コントロールの早期の発達につながり、さらに母乳には脳の発育にも良い成分が含まれるという。
授乳期間が数ヵ月違うだけで肥満リスクに差
 子どもの肥満は、生活スタイルや食生活の変化にともない世界的に増えている。小児期の肥満は、成長してから糖尿病や高血圧などさまざまな生活習慣病を引き起こすおそれがある。

 そんな中、母乳育児と小児の肥満に関する研究を米コーネル大学が発表した。「授乳を長期間行うと、小児の肥満が進行しにくくなる可能性があります」と、コーネル大学のステイシー カーリング氏は言う。

 研究チームは小児595人を対象に、出生時から2歳までの体重と身長を追跡し、成長の軌跡と母乳育児期間を比較した。一般的に、成長に伴う体格指数(BMI)の増加速度が平均より速い小児は、体重増加リスクが高いと考えられている。

 「肥満リスクの高い赤ちゃんについて分析したところ、授乳期間が2ヵ月以下の場合は、4ヵ月以上の場合に比べて、体重が急速に増える可能性が2.5倍になりました。授乳期間がわずか数ヵ月違うだけで、肥満リスクに差が出るのです」と、カーリング氏は言う。
授乳を早期にやめると肥満になりやすい
 幼児期に過度に体重が増加すると、成長してから肥満になりやすくなることは、過去の研究でも確かめられている。小児を母乳で育てるのを早期にやめると、将来に肥満が増えるおそれがあるという。

 「母親は赤ちゃんの求めに応じで授乳を行い、赤ちゃんは空腹や満腹の脳内信号にしたがい、母乳の摂取量をコントロールしています。それが赤ちゃんの食欲コントロールの早期の発達につながると考えられます」と、カーリング氏は説明している。

 また、母乳に含まれるホルモンなどの成分、母乳と粉ミルクの摂取方法の違いなども、肥満に影響している可能性がある。
母乳で育てることが脳の発達に影響
 母乳で育てられた乳児は、成人してから知能が高く、高等教育を受け収入も多い傾向があるという調査結果が発表された。この傾向は乳児が30歳になるまで続くという。

 「母乳で育てることが脳の発達に良い影響をもたらし、小児の知能の発達に影響することは、過去の調査でも確かめられています。この影響が成人してからも続くかは不明でした」と、ブラジルのペロタス連邦大学のバーナード レッサ ホルタ氏は言う。

 研究チームは、1982年にブラジルで生まれた6,000人の幼児に対し、両親の年齢や学歴・収入、妊娠期間中の母親の喫煙、授乳の有無や期間など、出生に関するさまざまな調査を行った。30年後に3,493人に対しIQテスト(ウェクスラー知能検査)を行い、最終学歴や収入などについて調査した。

 その結果、乳児期の授乳期間が1年以上だった人は、1ヵ月未満だった人と比べ、IQが4ポイント高く、教育を受けた期間が0.9年長かった。また収入は1ヵ月あたり341ブラジルレアル(約1万3000円)多かった。
母乳にはDHAが豊富に含まれる
 今回の研究では、母乳で育てられた小児はそうでない小児に比べ、30歳になるまで知能が高く、学歴と収入も高い傾向があることが分かり、母乳がもたらす社会的メリットは大きいことが示された。

 「ユニークなのは、授乳を行う女性は、教養が高く収入の多い層に多いというわけではなく、どの社会層にもまんべんなく分布していることが示された点です」と、ホルタ氏は言う。

 母乳で育てられた小児が知能が高い傾向がある原因として、「母乳には、脳の発達に欠かせない不飽和脂肪酸である"ドコサヘキサエン酸"(DHA)が豊富に含まれるからではないか。小児の飲んだ母乳の量が多いほど、体に吸収されるDHAの量は増えます」と、ホルタ氏は指摘している。

 「知能の発達が良好な小児は、成長後に学歴や収入が高くなる傾向があるのは自然なことですが、母乳で育てることで生じた発育上の違いは、成長するにともない環境的な因子により弱められる可能性もあります。今後の研究で確かめる必要があります」と、デンマークのコペンハーゲン大学のエリック モーテンセン氏は指摘している。

Breastfeeding past two months helps babies avoid obesity(コーネル大学 2014年12月18日)
The Lancet Global Health: Longer duration of breastfeeding linked with higher adult IQ and earning ability(Lancet 2015年3月17日)
[Terahata]
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