ニュース

森林浴とウォーキングが心を癒やす メンタルヘルスの改善効果を確認

 自然の中をウォーキングすると頭の中がすっきりする――そんな経験をおもちの人は少なくないのではないだろうか? 最近の研究で、木々に囲まれた自然が豊かな環境でウォーキングをすると、ネガティブな思考が減り、抑うつ的な思考が減るという研究が「米国科学アカデミー紀要」に発表された。
自然の豊かな環境をウォーキングし反芻思考を改善
 スタンフォード大学の研究チームは、環境の異なる90分のウォーキングで、脳の状態がどう変わるかを実験で調べた。実験の参加者を2つのグループに分け、それぞれ90分のウォーキングをしてもらった。

 19人の男女にスタンフォード近辺の樫の木や灌木などが茂る自然の豊かな環境でウォーキングをしてもらい、別の19人にはパロアルト市の交通量の多い街道をウォーキングしてもらった。

 「わずか90分のウォーキングでも、環境の影響は大きいことが分かりました」と、スタンフォード大学生物学部のグレゴリー ブラットマン氏は言う。

 「抑うつ的反芻」(ルミネーション)とは、同じことをいつまでもくよくよと考えたり、自らの欠点や問題について考え続ける思考プロセスを指す。過去の研究では、ルミネーションは抑うつ気分を助長し、その習慣の強い人ほど落ち込みやすく、ストレスを感じる出来事に対する抵抗力をもちにくい傾向があることが示された。

 参加者に、アンケート調査に答えてもらい、「ルミネーション」の傾向について調べた。自然豊かな環境でウォーキングしたグループでは、都市でウォーキングしたグループに比べ、反芻思考が減ることが明らかになった。

 さらに、研究チームは、ウォーキングの前後に参加者の脳をMRI(核磁気共鳴画像法)で検査し、「ルミネーション」によって活性化する脳の前頭前野の部位の活動を調べた。

 その結果、自然の豊かな環境でウォーキングをしたグループでは、前頭前野の部位の活性化が抑えられていることが判明した。このことは、木々の多い自然な豊かな環境でウォーキングをすると、うつ傾向が軽減できることを示している。
自然とふれられる場所を増やす都市計画が必要
 人口増や住居環境の悪化、経済的な負担の増加、近隣社会とのつきあいなど、都市生活には多くのストレス要因が伴う。「ストレスがもたらす否定的な影響がルミネーションになってあらわれるときに、自然がストレスの影響をやわらげる装置(バッファ)として作用する可能性があります」と、ブラットマン氏は言う。

 都市にはますます多くの人が集まってきている。米国では、全人口の50%が都市に集中しており、2050年には70%に増加すると予測されている。

 「うつ病などの精神疾患の増加は、急速な都市化と自然環境の減少と関連がある可能性があります。都市に暮らす人々が自然とふれあう機会を増やせるよう考慮した都市計画が必要とされています」と、スタンフォード大学環境科学部のグレッチェン デイリー氏は言う。

 都市住民は自然の豊かな田舎の住民に比べ精神疾患のリスクが高いという調査結果がある。都市で暮らすことで、不安障害のリスクは20%、気分障害のリスクは40%、統合失調症のリスクは2倍にそれぞれ上昇するという。

 「世界の多くの地域で都市化が急速に推し進められています。メンタルヘルスを向上させるために、都市に暮らす人々が自然とふれあう機会を増やせるよう考慮した都市計画が重要であることを、今回の研究は示唆しています」と、デイリー氏は述べている。

Stanford researchers find mental health prescription: Nature(スタンフォード大学 2015年6月30日)
Nature experience reduces rumination and subgenual prefrontal cortex activation(米国科学アカデミー紀要 2015年5月28日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「メンタルヘルス」に関するニュース

2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
2023年08月21日
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月21日
「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に
2023年08月15日
軽いウォーキングなどの低強度の運動でも脳を活性化できる 運動で高齢者の認知機能を維持・増進
2023年08月15日
スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶