ニュース

「禁煙治療」の保険適用を拡大し若者の禁煙をサポート 厚労省が検討

 たばこが切れるとイライラし、たばこを吸いたくなるのは、たばこの煙に含まれるニコチンが依存性をもたらすからだ。どうしても喫煙がやめられないときは「ニコチン依存症」と判定される。喫煙者のニコチン依存症を対象とした「禁煙治療」の公的医療保険の適用を拡大する方向で、厚生労働省が検討を始めた。
厚労省が「200以上」という条件の撤廃を検討
 成人の喫煙率は、2013年度には19.3%とゆるやかな減少傾向にあるが、健康日本21(第二次)では2022年度に12.0%に引き下げる目標が掲げられている。そこで、2006年から禁煙治療に保険が適用されるようになった。

 患者はニコチン切れによる症状を軽くし、たばこをおいしいと感じにくくする「バレニクリン」を服用したり、ニコチンを含んだ貼り薬などで禁煙をする。現状では保険適用の対象となるのは、「1日の喫煙本数」と「喫煙年数」を掛けて計算した数値が「200以上」の患者に限られている。例えば、たばこを1日1箱(20本)吸っても、喫煙年数が10年を経過していなければ対象にならない計算だ。

 現在の条件では、若者の禁煙をサポートできないという問題がある。若者は20代は喫煙年数などが足らず、保険適用の対象外になるケースが少なくない。若くから吸い続けるとそれだけ長く吸ってしまうことになり、がんや虚血性心疾患をはじめ長期の健康影響のリスクがより高くなる。身体活動やスポーツへの影響、咳やたんといった呼吸器症状や喘息発作など、日常生活でみられる健康影響も確実にあることを見落とすことはできない。

 そこで、喫煙歴など保険の適用条件を緩和し、20代の若年層も、自己負担が少なくて済む保険適用による禁煙治療を受けやすくする方向で、厚労省は検討をはじめた。若い世代の喫煙を減らせば、将来の医療費を抑制できる。

 日本は海外に比べて禁煙治療の受診率が低く、喫煙年数が少なかったり、1日に吸う本数が少ない喫煙者には受診しづらい制度となっていることから、厚労省は「200以上」という条件の撤廃を検討している。厚労省の諮問機関・中央社会保険医療協議会で議論され、早ければ来年度にも実現する見通しだ。

 「保険適用から外れる人も、喫煙を続ければニコチン依存になりやすい。保険適用を拡大すれば、厚労省の一時的な医療費負担は増えるが、将来的には肺がんや脳卒中、心筋梗塞などに伴う医療費が減る」と、厚労省関係者は述べている。
たばこ税・価格の大幅な引き上げも必要
 日本では先進国の中でたばこの価格が安く、若者にとって入手しやすい環境にある。たばこの値上げは、成人喫煙者の禁煙に役立つだけでなく、若者の喫煙防止に有用であることがこれまでの調査で判明している。今後、若者の喫煙を減らすためには、たばこ税・価格の大幅な引き上げも必要だ。

 WHO(世界保健機関)は、たばこや関連製品への適切な課税をしている国が少なすぎると指摘。たばこの増税に焦点を当てた報告書「The Global Tobacco Epidemic 2015」によると、33ヵ国はたばこに小売価格の75%以上の税を課しているが、多くの国は非常に低い税率で、特別税を設けていない国もある。

 報告書によると、たばこ関連疾患による死亡者は年間約6万人で、6秒に1人が亡くなっている計算になる。強力な措置がとられない限り、2030年までに年間800万人以上に増加すると予測している。「たばこ製品の税金を上げることはたばこの消費を削減するもっとも効果的な方法の一つであり、多くの利益をもたらします」と、WHOのチャン事務局長は述べている。

たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)
たばこの健康影響評価専門委員会(厚生労働省)
WHO report on the global tobacco epidemic, 2015(世界保健機関)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶