ニュース

「ビール腹」の人は要注意 内臓脂肪がたまると死亡リスクが上昇

 お腹が突き出たいわゆる「ビール腹」体形の男女は、標準体重を維持している場合でも脳卒中や心臓病の発症リスクが上昇することが、1万5,000人以上を対象とした調査で明らかになった。
「標準体重」の人も安心できない 内臓脂肪に注意
 肥満は、高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を引き起こし、最終的に脳卒中や心筋梗塞などで命を落とす危険性を高める。健康を維持するために、肥満の解消・予防が重要だ。

 肥満をコントロールするために、身長と体重から算出する体格指数(BMI)の数値が基準とされることが多い。健康診断でもBMIをもとに肥満が判定されている。日本人では18~49歳では18.5~24.9、50~59歳は20.0~24.9、70歳以上は21.5~24.9が理想的な体格とされる範囲だ。

 しかしBMIの数値により「標準体重」と判定された場合でも、脂肪が付き過ぎてお腹が突き出た肥満は注意を要することが、今回の調査で明らかになった。

 米国のメイヨー クリニックなどの研究チームが、全米で行われた米国健康・栄養調査(NHANES)に参加した18~90歳の男女1万5,184人を14年間にわたり追跡して調査した。

 その結果、ビール腹体形の男性は単なる肥満や過体重の男性に比べて死亡リスクが1.87倍に上昇することが判明。女性でも死亡リスクは1.48倍に上昇した。

 お腹がぽっこりとした肥満は内臓脂肪によるもので、このタイプの肥満は「内臓脂肪型肥満」と呼ばれている。研究グループが過去に行った調査でも、内臓脂肪型肥満の人は2型糖尿病や脳卒中、心臓病を発症するリスクが高いことが判明している。

 つまり、BMIで肥満と判定されなかった人でも、内臓に脂肪がついている人は死亡リスクが上昇することになる。この研究は、米国内科学会が発行している医学誌「アナルズ オブ インターナル メディシン」に発表された。
「隠れ肥満」が動脈硬化のリスクを高める
 内臓脂肪型肥満は、腹腔内の腸間膜などに脂肪が過剰に蓄積しているタイプの肥満で、下半身よりもウエストまわりが大きくなる体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれる。

 BMIが25未満で、肥満ではないものの内臓脂肪が蓄積している場合は「隠れ肥満」と呼ばれることがある。

 内臓脂肪型肥満が良くないのは、内臓脂肪組織から分泌されるホルモンである「アディポネクチン」が減ってしまうからだ。

 アディポネクチンには、傷ついた血管壁を修復する働きをしたり、悪玉のLDLコレステロールを抑制して動脈硬化を予防するほか、インスリンの働きを高めたり、血圧を低下させる作用などがある。

 アディポネクチンの分泌が減少すると、動脈硬化を防ぐ働きが低下し、インスリン抵抗性の状態が引き起こされ、血糖値が上昇しやすくなる。

 肥満を改善し内臓脂肪を減らすことはアディポネクチンの分泌を高め、動脈硬化のリスクを減らすことにつながる。

 そのためには、まず食事と運動を見直して改善することが重要だ。食事では「食べ過ぎない」ことと「食品の栄養バランスに気をつける」ことを意識することが求められる。

 また、運動には、「肥満を防ぐ」「血管をしなやかにする」「善玉HDLコレステロールを増やす」「血圧や血糖値を下げる」など、さまざまな効果がある。
アルコールは高カロリー 飲み過ぎに注意
 なお「ビール腹」はビールを飲み過ぎでお腹が出てきたことのみを意味するのではないので、注意が必要だ。内臓脂肪型のぽっこりと出たお腹がビール樽に似ていることから言われるようになったものだ。

 しかし、ビールをよく飲む人は肥満になりやすいのも事実だ。原因として考えられるのは、まずビールに合うおつまみは高カロリーのものが多いこと。から揚げや焼き鳥、餃子、フライドポテトなど、油が多いもの、味の濃いものをビールと一緒に食べると、ついたくさん食べてしまいがちだ。

 また、ビールが好きな方はたくさん飲む傾向があるのも原因に挙げられる。お酒のカロリーはその度数に左右され、アルコールの度数が高くなればなるほどカロリーが増えていく。ビールのアルコール度数は5度程度だが、4杯、5杯と飲んでしまうと、簡単に高カロリーになってしまう。

 一般的にアルコール量にして約20~30gを限度にすると、飲み過ぎを防げる。これは、缶入りビール(350mL)だと1~2本に相当する。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめる。

Normal-Weight Central Obesity: Implications for Total and Cardiovascular Mortality(アナルズ オブ インターナル メディシン 2015年11月10日)
Belly fat in men: Why weight loss matters(メイヨー クリニック 2013年6月8日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶