ニュース

運動不足の人はアルコール依存のリスクが2倍に上昇 運動指導に期待

 運動不足の人はアルコール依存になる割合が2倍に上昇するという調査結果が発表された。
運動習慣とアルコール依存の関連を解明
 運動不足の人はアルコール依存になる割合がおよそ2倍に上昇することが、米国の大規模調査で明らかになった。調査結果は11月にシカゴで開催された米国公衆衛生学会の学術集会で発表された。

 世界保健機関(WHO)によると、世界で330万人がアルコール乱用が原因で死亡している。20~39歳の若い世代でも全死亡のおよそ25%がアルコールが影響しているとみられている。

 日本でも1日にアルコール60gを超えて飲んでいる「多量飲酒」の人の割合は成人の4.8%に上る(健康日本21[第1次]結果)。

 ジョンズ ホプキンス大学公衆衛生大学院の研究チームは、2001~2003年に実施された全米生活調査(NSAL)の全国調査の結果を解析。5,002人のアフリカ系米国人の生活スタイルと精神疾患との関連を調べた。

 アルコール依存については、米国精神医学会(APA)が策定した精神疾患の診断分類である「DSM-5」を用い判定した。

 その結果、運動をする習慣がまったくない人は、運動をしている人に比べ、アルコール依存になる割合が84~88%増加することが判明した。

 収入や地域の特性などの要素も考慮に入れても、運動不足がアルコール依存に影響することは明らかだった。

 「運動をする習慣のない人は、アルコール依存になるリスクが2倍に上昇することが分かりました。アルコールと運動習慣との関連についての調査は今回がはじめてです」と、ジョンズ ホプキンス大学公衆衛生大学院のエイプリル ダミアン氏は言う。
運動はアルコール依存症の治療に効果的?
 飲酒をコントロールできなくなるアルコール依存症は、飲酒量が少ない高齢者や女性でも増えている。

 アルコール摂取がうつ病や不安症の発症に影響することが、過去の研究で示されている。また、運動習慣のある人ではこれらの疾患の発症が少ないことが、英国のロンドン大学などが行った大規模研究で示されている。

 WHO(世界保健機構)は、アルコールは脂肪肝や肝硬変といった肝機能障害をはじめ、高血圧、食道がんなどのがん、不整脈・心不全などの心臓病などの原因になると報告している。さらに、アルコールは脳の神経細胞を破壊し、脳の萎縮や機能障害をまねくおそれがある。

 これらの疾患の多くは、運動によって改善が可能だ。「運動にはアルコール摂取がもたらす健康障害を改善する効果もあります」とダミアン氏は言う。

 アルコール依存症の問題は、本人の健康問題だけにとどまらず、家族や周りの人を巻き込み、さらに広く社会にまで影響を及ぼす。家庭内暴力や虐待のほか、事件、事故、飲酒運転も問題となっている。

 だが、運動をする習慣をもつことがアルコール依存症の治療に効果的であるかは、今回の研究では解明されていない。

 「運動がうつ病や不安症の改善に効果的であることが分かっています。アルコール依存症のリスクのある人に対しても、運動を指導することで介入すると効果的である可能性があります。今後の研究で確かめる必要があります」と、ダミアン氏は指摘している。

Lack of exercise linked to alcohol misuse(ジョンズ ホプキンス大学 2015年11月2日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶