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骨粗鬆症のメカニズムを解明 骨をつくる骨芽細胞の移動能力が影響

 東京医科歯科大学大学の研究チームが、骨粗鬆症の原因になる骨量減少に、骨芽細胞が組織の間を移動する「遊走(運動)」の低下が関わっていることを突き止めた。
骨粗鬆症を引き起こすメカニズムを解明
 骨粗鬆症は超高齢化社会において急速に増加しており、人口のおよそ1割が罹患していると推定される。大腿骨の頸部骨折や脊椎の骨折を起こし重症になると、骨折後に寝たきりになったり死亡することもある深刻な病気だ。

 骨粗鬆症の根幹である骨量減少がどのようなメカニズムで引き起こされるか十分に解明されていない。そこで、研究チームは、骨をつくる骨芽細胞が組織の間を移動する「遊走(運動)」に着目した。

 最近の研究で、骨芽細胞の遊走にさまざまな遺伝子が関わっていることが分かっているが、骨量減少との関連は不明であり、骨粗鬆症を引き起こすメカニズムは詳しく解明されていなかった。

 そこで研究チームは、どのようにこの骨芽細胞やその前駆細胞が遊走してくるかや、これがどのように骨の量の制御に関わるかを実験で解明した。
骨芽細胞の遊走は骨形成の維持や骨量の維持に必要
 骨は絶えず作り変えられており、「リモデリング」という代謝を繰り返す。リモデリングとは、(1)最初に破骨細胞が古い骨を吸収して欠損部ができ、(2)その後で、骨を造る骨芽細胞やその前駆細胞がこの欠損部に遊走してきて、骨を造ることで欠損部を修復し、(3)新しい骨ができるとともに元の骨の量が保たれるというサイクルを示す。
 研究チームは骨リモデリングにおける骨芽細胞の遊走による骨形成の仕組みを明らかにするために、マウスを使った実験で、細胞の骨格と細胞遊走を制御する遺伝子である「Nck」を骨芽細胞で破壊してその影響を調べた。

 その結果、骨芽細胞でNckを働かなくすると、細胞の動きが鈍くなり骨粗鬆症の状態になった。古い骨が壊されるペースに、修復が追い付けなくなったとみられる。

 これにより、骨芽細胞の遊走は骨形成の維持や骨量の維持に必要であり、この機能が損なわれると骨粗鬆症を発症することが解明された。
患者によって異なる骨粗鬆症の治療法を開発
 骨粗鬆症の治療には、破骨細胞の活動を抑える「ビスホスホネート」や骨代謝を促す「副甲状腺ホルモン」、骨代謝のバランスを整える「カルシウム薬」や「活性型ビタミンD薬」が使われることが多いが、長期間使うと副作用が生じることがある。

 この研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子薬理学分野の江面陽一准教授と野田政樹教授の研究チームによるもの。

 野田教授は「患者によって異なる骨粗鬆症の詳しいメカニズムを解明し、薬の応答性の評価や新薬の開発につなげたい」と話している。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
[Terahata]
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