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女性の健康の支援が置き去りに 働く女性の病気で年間6兆円の損失

 女性の活躍推進が活発になっている一方で、女性特有の健康リスクへの対策が手薄になっている現状が、日本医療政策機構などの調査で浮き彫りになった。「女性の身体の特徴や、女性特有の病気の予防・治療法について、女性も男性も学べる機会を増やすことが大切」と同機構は指摘している。
女性の健康面に対する配慮が置き去りにされている
 政府は女性の活躍推進を成長戦略のひとつとして掲げており、産業界も女性役員・管理職への登用に関する行動計画を策定し、数値目標を設定するなど動きを活発化させている。社会全体で働く女性の活躍を推進する機運が高まっている一方、女性が働き続けるための健康面への配慮は十分に行われていない現状がある。

 女性が担う役割や責任が大きくなり、ストレスなどの精神的負担や、慢性的な疲労感といった身体的負担を抱えている女性は増えている。専門家は「女性が働き続ける環境の整備にばかり注目されており、健康面に対する配慮が置き去りにされているのではないか」と指摘している。

 日本の将来を考える上で、女性の健康への配慮が不可欠であり、女性の活躍推進の取り組みには健康増進に関連した施策も含めることが求められている。そこで、女性の健康増進が社会にもたらす社会経済的な効果をとらえるという観点から、日本医療政策機構は、東京大学大学院薬学系研究科・五十嵐中特任准教授らと「働く女性の健康増進に関する調査」を実施した。

 調査は昨年11月に、20~60歳代の正規雇用の女性2,091人(平均年齢42.1歳)を対象に行われた。このうち1,495人は健康な女性、残る596人は乳がん、子宮頸がん、子宮内膜症のある女性だった。病気による休業や仕事の効率低下に伴う損失がどれだけあるかを分析した。
婦人科系疾患の経済的損失は年間6.37兆円
 その結果、子宮頸がんや乳がん、子宮内膜症など、婦人科系疾患を抱えて働く女性の年間の医療費支出と生産性損失を合計すると、年間6.37兆円にのぼることが判明した。
婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失
婦人科疾患によって女性の生活の質は低下
 婦人科疾患をもつ女性は、いずれにもかかったことがない女性に比べて、QOL(生活の質)や労働の生産性が低下することも分かった。

 調査では、QOLを簡易に測定できる尺度として「EQ-5D-5L」を使用。「移動の程度」「身の回りの管理」「ふだんの活動」「痛み・不快感」「不安・ふさぎ込み」の5項目を調査した。

 その結果、婦人科疾患をもつ女性のEQ-5D-5Lのスコアは0.911で、発症してことない女性の、スコア0.959を下回った。

 また、月経前や月経中に感じる下腹部痛や腰痛、乳房がはる、眠くなる、便秘になるなど、人によってあらわれる症状は変わってくるが、これらは「月経随伴症状」と称されている。婦人科系疾患をもつ女性は月経随伴症状を強く感じる人が多いことも分かった。

 調査では、代表的な35項目の症状について5段階で判定する「MDQ質問票」を用いて、月経随伴症状について評価した。その結果、月経随伴症状が重くなるほどQOL(生活の質)が低下する傾向が示された。QOLスコアは症状が弱い女性で0.972であるのに対し、症状が非常に強い女性では0.866に低下した。
定期的に婦人科を受診している女性は2割
 さらに、月経随伴症状を有する女性の多くは、症状が重度であっても婦人科を受診しない傾向があることが判明。また、それが個人的負担のみならず、社会に対して労働生産性の損失を伴う経済的負担となっている。

 定期的に婦人科を受診している女性の割合は2割にとどまることも分かった。受診しない理由は、「健康なので行く必要がない」(53.2%)、「仕事や家庭が忙しい」(23.6%)、「受診が面倒」(21.9%)という回答が多かった。

 働く女性の3割が、これまでに婦人科検診(子宮頸がん検診、子宮体がん検診、乳がん検診など)に行ったことがなかった。また、たとえば子宮頸がんは近年、20歳代~30歳代の罹患者が増えているが、早期発見につなげるべき20歳代の約半数が婦人科検診にこれまで1度も行ったことがないと回答した。

 日本でも「がん対策推進基本計画」に従ってがん検診の受診率50%を目標に取り組みが行われている。米国のように女性の社会進出が進んでいる国は8割を超えているのに対し、日本は4割程度というのが現状だ。

 女性特有のがんなど、早期発見と治療が大切な病気については、定期的な健診が有効にだ。例えば子宮頸がんは、初期には自覚症状がないことが多く、早期発見のため2年に1度は検診を受けるのが良いとされる。

 調査では、女性が積極的に検診を受診するよう働きかける必要があることも示された。調査対象者が検診を受診した理由としては、「自分の健康状態を知っていたい」(74.2%)が多く、「職場で勧められたから」(24.3%)を大きく上回った。

 海外をみると、受診率の高い国では公的な予算による補助のほか、かかりつけ医が定期的な受診を促す仕組みや、未受診者への個別勧奨と再勧奨を行う制度である「コール・リコールシステム」が整備されている。
対策が必要 女性の健康面に対する配慮を向上
 日本医療政策機構では、女性の健康面に対する配慮を向上させるために、国や自治体は次のことに取り組む必要があると提言している。
働く女性の健康増進に関する調査結果(日本医療政策機構 2016年1月21日)
[Terahata]

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