ニュース

NHK「ガッテン!」に睡眠学会が反論 糖尿病治療に使うのは適応外

 NHKの番組「ガッテン!」の「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」の放送について、日本睡眠学会などは「糖尿病患者に過大な期待をもたせ、医療現場で混乱を招くおそれがある」などと批判しており、これを受けてNHKは謝罪した。

 糖尿病と睡眠障害は密接に関連しており、両方を治療することが重要であることは多くの研究で確かめられているが、睡眠障害の治療は医師の診断を受けて適切に行う必要がある。
睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない
 NHKは、2月22日に放送した生活情報番組「ガッテン!」の「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題した放送で、睡眠薬を使って睡眠障害を改善したところ、血糖値も改善したというデータを紹介し、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」と報道した。

 すると放送後に「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」などの批判が寄せられ、NHKは番組ホームページに謝罪文を載せた。3月1日の番組内でも、おわびの内容を放送する予定という。

 番組内に「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」などの表現や短絡的な表記があり、あたかも睡眠薬を糖尿病の治療や予防に、睡眠薬を直接使えるかのような誤解を与えているという。実際には睡眠薬のよる治療は、あくまでも睡眠障害と診断された患者が、医師が睡眠薬の処方が必要であると判断したときにしか行えない。
「良好な血糖コントロールに睡眠の改善が効果的」なのは確か
 番組の根拠のひとつとなったのは、大阪市立大学の研究グループが2015年に発表した、糖尿病と睡眠障害に関する研究。研究では、糖尿病と睡眠障害は密接に関連しており、両方を治療することが重要であることが示された。

 睡眠障害のある糖尿病患者に、睡眠の治療を積極的に行うと、不眠によりQOL(生活の質)が低下するのを防げ、交感神経活動の上昇を抑え、夜間・早朝の血圧を改善できる可能性がある。血糖コントロールの改善や、動脈硬化の進展を予防するために、睡眠を改善するのが効果的であることが示された。

 研究グループは「現在は睡眠導入薬が進歩しており、睡眠障害の治療は安全・効果的に行えるようになっている」とも指摘している。
かかりつけの医師などの診断が不可欠
 最近の睡眠薬には以前に比べ運動障害などの副作用が少なくなっているとはいえ、悪夢や頭痛などの別の副作用が起こることがある。しかし、番組では「副作用の心配がなくなっている」と表現していた。

 NHKの謝罪文では、「睡眠薬は、医師による診断があってはじめて処方されるものです」とした上で、「睡眠障害の治療には、生活習慣の改善などさまざまな選択があり、睡眠薬を使用するかどうか、どの種類の睡眠薬を選ぶかなどは、かかりつけの医師や睡眠専門の医師の判断に従ってください」と注意を促している。

 NHKの番組に対して日本睡眠学会は、「睡眠科学、睡眠医療に関わる学術団体として看過できない問題点が確認された」として、日本神経精神薬理学会と連携して、NHKに対して異議を申し立て、提供した情報に誤りがあった場合には速やかに訂正し、その内容を広く視聴者に公開するよう希望している。
日本睡眠学会が「睡眠薬」について見解を公表
 以下は、日本睡眠学会が放送内容に対する懸念と疑義として公開している見解の、日本睡眠学会ホームページからの抜粋――

1. 番組で取り上げられた睡眠薬については国で承認された効能または効果は「不眠症」に限定されており、糖尿病に対して処方することは認められていません。番組内ではそのような睡眠薬を取り上げ、血糖低下を目的として用いることを推奨しているかのような印象を与えています。これは適応外処方(承認されている効能効果以外の目的で使用すること、健康保険が適応されない)を推奨していることに他ならず、テロップで医師の指示に従うよう流すことで正当化されるものではありません。

2. 番組で取り上げられた睡眠薬については、既存の臨床試験データにおいても血糖降下作用は確認されていません。一部の研究者の限られた研究データを根拠として糖尿病治療に用いることは倫理的にも医学的にも許容されません。本番組ではそのような根拠に乏しい効能効果を視聴者に向けて強くアピールしており、糖尿病患者に過大な期待を持たせたばかりか、医療現場での混乱を招いています。

3. 向精神薬に分類される睡眠薬は適正処方が求められており、臨床的に不眠症と診断された患者にのみ処方されるべきです。しかしながら放送で登場した患者の方は自覚的に不眠症状がなく、睡眠状態に起因する心身の不調も訴えていませんでした。したがって不眠症の診断基準に該当しているとは考えにくく、睡眠薬の処方自体が不適切です。

4. 番組内では当該睡眠薬についてその安全性を過剰に強調していますが、どのような基準をもって安全であると主張しているのかその根拠が明らかでありません。睡眠薬に限らず、全ての医薬品には副作用があります。したがって、投薬の際には絶えずベネフィット(症状の改善など投薬によって受ける恩恵)がリスク(副作用による健康被害など)を上回っているか確認する必要があります。本件の場合、不眠症状がないにもかかわらず、また血糖降下作用が確立・承認されていないにもかかわらず睡眠薬を投与したことのベネフィットがリスクを十分に上回っているとは到底認められません。

一般社団法人 日本睡眠学会
一般社団法人 日本神経精神薬理学会
ガッテン!(NHK総合テレビ)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防

最新ニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」
2018年10月18日
帝京大学産業保健プログラム 受講生募集
2018年10月18日
【健やか21】平成30年度「麻薬・覚醒剤乱用防止運動東京大会」(参加申し込み受付中)
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月15日
厚労省専門委が5歳児虐待死亡事件の検証結果を公表
2018年10月12日
【健やか21】第 77 回日本公衆衛生学会総会 自由集会 ~知ろう・語ろう・取り組もう~
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防
2018年10月05日
乳がん検診に「人工知能(AI)」を導入 マンモグラフィの欠点を克服
2018年10月05日
肺の健康を守るには口の健康から 歯周病が進行すると呼吸機能が急速低下
2018年10月05日
「改正健康増進法成立! 受動喫煙対策を強化」へるすあっぷ21 10月号
2018年10月05日
厚労省が「働く女性の実情」を公表~女性活躍推進法に基づく取組状況を解説
2018年10月05日
「健康なまち・職場づくり宣言2020」2018年の達成状況を報告~日本健康会議
2018年10月04日
【講演会レポート】「10月8日は、糖をはかる日」講演会 「"これからの"血糖コントロール」
2018年10月04日
【回答期限延長(10/30 15:00まで)】「保健師の活動基盤に関する基礎調査」(日本看護協会)
2018年10月04日
【健やか21】若い世代に向けた妊娠・出産に関する普及啓発Webサイト(東京都)
2018年10月03日
【産保PC第5回(2018年度 第1回)レポート】テーマ:保健指導
2018年10月02日
心不全が急激に増えている 「心不全パンデミック」時代の3つの予防法
2018年10月02日
「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護
2018年10月02日
魚のオメガ3系脂肪酸が「不安症状」を軽減 魚を食事療法に活用
2018年10月02日
10月は「乳がん啓発月間」 定期的なマンモグラフィ検診は効果的
2018年10月01日
保健指導リソースガイド「よろず相談センター」が誕生
2018年09月28日
働き盛りの睡眠不足が問題に~睡眠障害への早期対応も必要
2018年09月28日
スマートフォンアプリ「ぜんそくリスク予報」をリリース~JMDCと日本気象協会
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,558 人(2018年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶