ニュース

東日本大震災 「差別・中傷」で福島原発の所員に強いストレス反応

 福島第一、第二原子力発電所で事故後も働く所員の「心的外傷後ストレス反応」(PTSR)が根強く残っているとする分析結果を、順天堂大学などのチームがまとめた。津波や知人を亡くした被災体験よりも、差別・中傷などの社会批判によるPTSRの方が強いという。
メンタルヘルスの不調 3年経過しても非常に強い
 順天堂大学の研究グループは、福島原子力発電所員のメンタルヘルスについて追跡調査を実施し、災害関連体験と心的外傷後ストレス反応(PTSR)との間に関連があることを明らかにした。

 原発事故の災害関連体験によるメンタルヘルスの不調は時間とともに回復するが、「差別・中傷などの社会批判によるPTSR」は、3年経過してもなお、非常に強く残るという。

 東京電力福島第一・第二原子力発電所員のメンタルヘルス支援を目的としたプロジェクト研究「NEWS」によると、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故における災害関連体験を経験している所員は、経験していない所員に比べて、PTSRや精神的苦悩(GPD)といったメンタルヘルスの不調があることが明らかになった。

 研究グループは、2011年?2014年までの3年間の縦断研究を実施し、原子力発電所員のメンタルヘルスを長期的に調査し、福島原子力発電所事故後の災害体験との因果関係について検討した。

 災害2~3か月後に実施した自己記入式アンケート調査をもとに、(1)自分の命に危険が迫る体験や発電所の爆発などの「惨事ストレス」、(2)同僚を失った「悲嘆体験」、(3)財産喪失、自宅からの避難といった「被災者体験」、(4)「差別・中傷」などの社会批判を受けたなど、災害関連体験を経験した所員と経験しなかった所員に分け、「出来事インパクト尺度」を用いて、PTSRの有無を評価した。

 その結果、「惨事ストレス」、「被災者体験」、「差別・中傷」といった災害関連体験を経験した所員のPTSRのリスクは、いずれも時間とともに徐々に低下する傾向があったが、経験していない所員に比べると、3年経過してもなお、PTSRのリスクが持続することが確かめられた。
心理面のサポートを考えるべき
 特に、「差別・中傷」といった社会批判を受けた所員は、受けていない所員に比べて、2011年時点では約6倍、2014年時点でも未だ約3倍のPTSRリスクが有意に高いことが明らかになった。

 また、同僚を失った「悲嘆体験」経験がある所員は、経験のない所員に比べて、2011年時点で約2倍、2014年時点においても回復することなく同等のリスクがあることが分かった。つまり、「悲嘆体験」といった悲しみの感情はずっと引きずることが示されている。

 災害後4?12ヵ月の間、メンタルヘルスの不調を訴える所員に対して、精神科医や臨床心理士が、継続的に治療や心理カウンセリングを提供し、精神的支援を行ってきたが、今回の調査で支援が不足していることが明らかになったという。

 研究をまとめた順天堂大学の谷川武教授(公衆衛生学)は、「惨事ストレス、悲嘆体験、被災者体験、差別・中傷といった災害関連体験は、長期間持続して、PTSRに強い影響を及ぼす。広範囲にわたる長期的な支援が必要だ」と話している。

 研究は、順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座の野田愛准教授、谷川武教授らの研究グループによるもので、英国の医学雑誌「Psychological Medicine」に発表された。

順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶