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糖尿病足病変の現状報告 全国に広がるAAAの下肢救済活動

 糖尿病のために30秒に1回、世界のどこかで足が失われているという。糖尿病は下肢切断の極めて重要な危険因子だ。国内でも年に1万例以上の大切断が糖尿病患者に行われていると言われている。このような現状に関して社会の認識はまだ十分とは言えない。その一方で治療法は着々と進歩し、診療報酬改定による医療環境が整備されるなどの進展がみられる。発足3年目を向かえたAAA(Act Against Amputation)も、足病変予防・治療の啓発にさらに注力している。

 一般社団法人 Act Against Amputation(代表理事:大浦 紀彦・杏林大学教授)は、病気による下肢切断(Amputation)を減らすために、下肢切断の深刻さとその予防・治療法、医療環境の整備の必要性などを、患者さんや一般市民と医療関係者へと広く訴求することを目的に、2014年2月に設立された団体。設立3年目を迎える2017年1月、下肢切断の主要リスク因子である糖尿病をメインに取り上げ、国内の現状を紹介するメディアセミナーを都内で開催した。

下肢を切断しても「装具を使えば歩ける」わけではない
QOLや予後に深刻な影響

大浦 武彦 氏
大浦 武彦 氏

 セミナーではまず大浦武彦氏(日本下肢救済・足病学会理事長)が下肢の病気と糖尿病との関連、足を守ることが重要である理由をオーバービュー。

 糖尿病は全身病であり合併症はあらゆる部位に生じる可能性があり、当然、下肢も例外ではなく、特に動脈硬化を背景に発症する重症下肢虚血(足の血流不足)という病気は病状の進行が速く、切断を防ぐには一刻を争う適切な治療が必要であることを強調した。

 また、「足を切断しても義足などを用いれば歩けるようになるだろう」とのイメージが社会一般にもたれていることを問題視。義足などの装具を付けて歩けるようになるのは、事故などで足を失った若い世代の場合であって、病気のために下肢切断に至る場合の多くは高齢者であり、一人では装具を付けられなかったり既に動脈硬化が進んでいるために再発や他の病気が発症しやすいという相違があることに言及。生活の質(QOL)が著しく低下するばかりでなく、死亡リスクも極めて高いことをデータで示した。

 こうした現状への対策として、診療報酬において慢性透析患者の下肢動脈疾患のリスク評価に加算が設けられたことと、地域ごとに診療連携の輪が広がりつつあることを紹介し、国内は今"足病の夜明け"に当たると述べた。

元横綱 曙太郎氏からのメッセージ「少しでも早く受診すべき」

曙 太郎 氏
曙 太郎 氏

 ここで元横綱 曙太郎氏のビデオメッセージが放映された。

 曙氏は日本人以外で歴史上初となる第64代横綱をつとめ、若貴兄弟や武蔵丸とともに平成初期の四横綱時代の相撲ブームにおける第一の立役者である。相撲引退後は総合格闘技に参戦。格闘家として活躍を続けるとともに、新人活躍の場を広げるために新団体「王道」を設立している。同氏は昨年末に右足蜂窩織炎を再発し治療を続けている。また、両親が糖尿病で、特に父親はわずかなアクシデントがきっかけで両下肢切断に至ったという。

 最初に同氏が足に異常を感じたときは、自分で自分を「大丈夫だ」と納得させリングに上がり続け、結果として蜂窩織炎(ほうかしきえん)の治療のために再入院・通院が長引くようになってしまったという。一般の方へのメッセージとして「少しでも足に気になることがあれば、必ずすぐに病院に行ったほうが良い」と述べるとともに、「自分自身は足を完全に直し、皆様の前で暴れるような試合を見せたい」と闘志を語った。

曙さんからのメッセージはこちら ▶

糖尿病の足を救うには、
虚血と感染に対応できる医療システムとフットケアが必須

大浦 紀彦 氏
大浦 紀彦 氏

 続いてAAA代表理事の大浦紀彦氏(杏林大学医学部形成外科教授)が「Act Against Amputation 日本人の足を救う活動を全国へ」と題して基調講演。糖尿病と足の関係、および、糖尿病が原因の半数近くを占める慢性透析治療と足の関係を中心に、現在の問題点を整理した。慢性透析患者においては1年間に1,640例の新規下肢切断が発生(下肢切断の既往がない透析患者からの新規発生)しているが、そのうち8割近くの1,280例はその後1年以内に死亡しているとの推計データを紹介。これは、下肢の問題が下肢だけにとどまらないことを如実に表す数値と言え、下肢の病気を全身疾患の一つとして認識することの大切さを述べた。

 また救肢のための形成外科的治療についても解説。糖尿病患者の足を救うには、虚血に対する血行再建、細菌感染の制御、そして適切なインソールの選択などの足を守るためのフットケアが欠かせないとし、それらをトータルで提供できる医療供給体制の確立が必要とした。

誰でも一定レベルの診療を可能とする、
足の医療の標準化を目指す

富田 益臣 氏
富田 益臣 氏

 内科医の立場からは、富田益臣氏(下北沢病院糖尿病センター長)が「糖尿病患者さんの足はいま?糖尿病性足病変の現状」をテーマに講演した。

 医療者の中では足の病気を最も早く見つけられる立場にあたり、プライマリーケアを担う内科医が、その役割をより確実に実践することで重症下肢虚血などへの進展を減らすことが可能であると述べた。しかし国内の現実をみると、糖尿病医療の基幹病院であっても下肢の定期的な診察の実施率は満足できる結果ではないという調査結果を紹介。その理由として、下肢切断に至るリスクの低い者も含めて非常に多くの外来患者の中からハイリスク患者を見つける方法や、足病変を見いだしたあとの医療体制の確立が遅れているなどの問題点を挙げた。

 このような現状に対して、ハイリスク患者を短時間でピックアップするスクリーニングツールとして開発した「AAAスコア」を紹介。また、内科において一定レベル以上の下肢診療ができるようにするための診療ガイドライン的なものが必要であろうとまとめた。

「AAAスコア」の詳細はこちら ▶

下肢救済のために、さまざまな領域、職種のパワー集結を

横井 宏佳 氏
横井 宏佳 氏

 続いて虚血を伴う救肢に欠かせない血行再建等、治療の最前線の情報を横井宏佳氏(福岡山王病院循環器センター長)が「下肢救済のために団結せよ?Unite for Limb Salvage?」とのテーマで、福岡山王病院からオンライン講演した。

 まず、心筋梗塞と下肢虚血を併発した症例を紹介し、足の血管病が他の臓器の血管病と関係していることを具体的に述べたのに続き、動脈硬化が進展し血管が詰まり虚血が発生するまでのメカニズムを図説。虚血発作の発生の多くは突然起こること、その基盤には血管の内皮(血管の最も内側の層)の働きが低下してしまっていること、血管の内皮の働きを改善するためには運動が必要であること、運動をするためには健康な足がなければならないこと、ABI(ankle-brachial pressure index.足関節-上腕血圧比)測定が足だけなく全身の血管病の発見に役立つことなど、血管と足の関係に焦点を当てながら、救肢に求められる円滑な診療連携の構築の必要性にも言及した。

足を守り、救うための医療環境の整備・提供に、
診療報酬の面からのパックアップも進む

秋野 公造 氏
秋野 公造 氏

 最後は参議院議員で医学博士でもある秋野公造氏が「国の重症化予防対策とかし末梢疾患指導管理加算の意義」と題し、下肢切断を減らすための国家戦略のこれまでとこれからをまとめた。

 平成27年に政府が閣議決定した『骨太の方針2015』に、初めて「合併症予防を含む重症化予防」という文言が盛り込まれたことがターニングポイントととなり、その後、日本下肢救済・足病学会とともに立法府への働きを推進。短期間のうちに論点が整理され、具体的な施策の検討が進行し、結果として平成28年度の診療報酬改定における「下肢末梢動脈疾患指導加算」の新設につながったという、下肢診療を取り巻く環境改善の背景を語った。

 今後は新設された診療報酬加算が広く活用させ、実際に下肢切断を減らしていくことが課題であり、そのためには全ての透析患者の足を診ることがスタートであることを強調した。また、医学的には、診療報酬算定基準の「ABI0.7以下またはSPP40mmHg以下」という数値が介入のカットオフ値として最適なのかを検証するためのエビデンスの構築と、他に良いマーカーはないのかといった研究の継続が必要だと述べた。

「下肢末梢動脈疾患指導加算」の詳細はこちら ▶

関連情報

一般社団法人Act Against Amputation(AAA)
足病変とフットケアの情報ファイル

[soshinsha]

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