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「糖尿病性腎症の重症化予防」 課題が浮き彫りに 地域連携の整備が必要

 糖尿病性腎症の重症化予防に向けて、厚生労働省は省内に設置した「重症化予防(国保・後期広域)ワーキンググループ」(以下、ワーキンググループ)がまとめた報告書を公表した。
 継続的な指導のためには、かかりつけ医との連携が不可欠として、「計画 → 実行 → 評価 → 改善」の4段階を繰り返すPDCAサイクルを、市町村、都道府県、糖尿病対策推進会議、関係団体などで回していくことが重要としている。
糖尿病が人工透析の原疾患の半数近くを占める
 日本の新規の人工透析導入患者の数は約3万1,000人で、先進国の中でも多い。このうち、原因となる疾患が糖尿病性腎症である患者は43.7%ともっとも多い。人工透析には1人あたり月額約40万円の医療費がかかり、年間医療費の総額は1.57兆円に上り、医療費全体からみて大きな課題となっている。透析導入を抑制するために糖尿病性腎症の重症化を予防することが、日本では大きな課題となっている。

 厚生労働省は2016年4月に「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を作成し、日本医師会・日本闘病対策推進会議と重症化予防のための連携協定を締結した。

 ワーキンググループは、こうした取り組みをさらに推進・展開するために、(1)市町村、(2)広域連合、(3)都道府県、(4)糖尿病対策推進会議、(5)関係団体、(6)国民健康保険団体連合会----の各団体に向けて提言を行っている。

「糖尿病性腎症の重症化予防」に向けた高い意識をもつことが重要
 (1)の市町村に対しては、「糖尿病性腎症の重症化予防」に向けた高い意識をもつことが重要とし、首長・幹部に「施策の優先順位を上げる」よう求めている。さらに、担当課(健康増進担当と国民健康保険担当)の縦割り排除、指導対象者の抽出基準の明確化――などの重要性も指摘している。

 市町村の特定健診で実施されている尿蛋白定性検査のみで糖尿病性腎症の重症度を判断する場合、持続性に蛋白尿が出てくる第3期(顕性腎症)まで発見されず、予防可能な時期を逃す恐れがある。そのため、定期的な尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)検査で腎機能(eGFR)を把握することも必要となる。

 さらに、糖尿病性腎症の重症化を予防するため血圧のコントロールも重要だ。現在の市町村の取組状況では、対象者を抽出する際に血糖を基準としている場合が多いが、きめ細かい重症化予防を行うのであれば、血圧を基準に取り入れることも必要となる。

 市町村は、糖尿病性腎症のリスクの高い糖尿病患者に尿アルブミン/クレアチニン比検査および血圧測定を行い、糖尿病連携手帳を活用したり、かかりつけ医に確認して検査値を把握し、「適切な糖尿病性腎症の重症度の把握に努めることが必要」としている。
医師会やかかりつけ医と連携し、糖尿病性腎症の受療中断を防ぐ
 重症化予防に向けては、計画・準備→実施(受診勧奨や保健指導)→評価→改善(計画の修正など)というPDCAサイクルを回すことが重要となる

 PDCAサイクルでは、「Plan(計画) → Do(実行) → Check(評価) → Act(改善)」の4段階を繰り返すことによって、事業を継続的に改善する。糖尿病性腎症の重症化予防では、「計画策定 → 対策の実施 → 事業評価 → 次年度計画の修正」というPDCAサイクルを回すことが重要視されている。

 厚労省は、国保ヘルスアップ事業などの区分で助成を行っているが、2016年度からその対象として糖尿病性腎症重症化予防を明確に位置付けた。特に、国保ヘルスアップ事業は、データヘルス計画に沿った保健事業を実施することなどを要件とした上で厚めに助成しており、保健事業をデータ分析にもとづくPDCAサイクルにそって効率的・効果的に実施することを目指している。
 (2)の広域連合は、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の運営主体であり、医療機関が直接関わることが難しい「受療を中断している患者」「治療を受けていない患者」を洗い出して個別に直接アプローチを行う取組みをする。そのときにも、かかりつけ医に個別に連携を求め、協力を得ることが必要だ。

 (3)の都道府県に対しては、規模の小さな市町村に、人的・財政的支援を積極的に行うことが期待されている。市町村だけで事業を行うのではなく、地域の医師会やかかりつけ医と密接に連携し、個々の患者の状況に応じて対応していく体制をつくることがとりわけ必要とされている。

 ワーキンググループでは「計画の企画段階から医師会などと協議し、実施体制の構築に向けた合意形成を得る」「かかりつけ医・専門医などの連携が円滑に進むよう、地域の連携体制の整備が必要」と強調している。

 実際には、市町村での医師会との連携は約6割、かかりつけ医との連携は約7割にとどまっており、地元の医師会になかなか相談できない、相談をしても理解を得るまでに時間を要するなど、調整・関係づくりが円滑に進みにくい地域もあるという。また、かかりつけ医との連携の枠組みができた場合にも、受診勧奨や保健指導の結果がフィードバックされていない場合もあり、連携につながる関係づくりが急務となっている。

 さらに、都道府県版の重症化予防プログラムを策定することを求め、これを国民健康保険における「保険者努力支援制度」(医療費適正化に積極的な自治体に経済的インセンティブを付与する仕組み)で評価されることを強調している。
「糖尿病対策推進会議」の働きに期待
 (4)の「糖尿病対策推進会議」の働きも重要だ。日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会の三者は2005年に、積極的に糖尿病対策取り組む必要があるとの共通認識により「日本糖尿病対策推進会議」を設立した。その後、さまざまな団体が参加し、新たな体制で幅広く活動している。

 各地域においても都道府県等で糖尿病対策推進会議が立ち上がり、地域の実情に応じた活発な取り組みを行っている。市町村が新たに都道府県糖尿病対策推進会議と連携しようとする場合には、糖尿病対策推進会議との連携のあり方についてあらかじめ都道府県へ確認し、「市町村の実情に合った形で連携することが必要」と、ワーキンググループは指摘。

 実際には都道府県糖尿病対策推進会議と連携している市町村は、全体では3割程度に過ぎず、連携予定を含めて6割弱にとどまるという。ワーキンググループは「市町村とのさらなる連携(市町村担当者が直接相談できる一元的な窓口の提示など)」「かかりつけ医や専門医などを含めた構成員の拡大」を要望している。

 (6)の国民健康保険団体連合会(国保連)に対しては、▽特定健診・特定保健指導、医療(後期高齢者医療含む)、▽介護保険などの情報を統合し、健診データと合わせてレセプトデータから受診状況、服薬などの状況の確認ができるようにした「国保データベース」(KDB)のレセプトデータを活用することを求めている。

 さらにワーキングは国に対して、▽重症化予防に向けた研究の推進、▽各地域の取組状況の把握と情報提供・働きかけ、▽先進的事例の収集と横展開、▽医療関係者との連携――などを行うことも求めている。

 また、重症化予防は医師をはじめとする専門家だけで行うものではなく、患者・家族はもとより住民の積極的な参画が必要となる。そこで、▽患者・家族、近隣住民、地域の企業などへの周知徹底、▽患者自身が自主的に取り組むような個人インセンティブを促進、▽健康な街づくり(保健指導員や健康づくり推進員の養成、催しの開催、要望の吸い上げなど)――も重要だと提言している。

「糖尿病性腎症の重症化予防」に向けた先進的自治体の取り組み

 厚労省は「糖尿病性腎症の重症化予防」に向けた、先進的自治体の取り組みも紹介している。

 富山県では、県庁健康課と厚生センター(保健所)とが連携を取りながら透析患者等発生予防推進事業連絡協議会を開催するなどの糖尿病対策の基盤づくりを行っている。

 長野県では、市町村の特徴や保険者の取組状況を踏まえ、県版の「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定。

 島根県では、「島根県糖尿病予防・管理指針」を作成・改訂し、糖尿病専門医・腎臓専門医へ紹介する基準、各機関に期待される機能と実施できること等を明確に示し、 医師会や病院・糖尿病専門医、保健所が中心となり「糖尿病対策圏域合同連絡会議」を開催。

 高知県では、KDB(国保データベースシステム)と特定健診等データ管理システムを活用した「未治療者」および「治療中断者」の対象者抽出ツールを独自で開発。

重症化予防(国保・後期広域)ワーキンググループとりまとめ「糖尿病性腎症重症化予防の更なる展開に向けて」(厚生労働省 2017年7月10日)
[Terahata]

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