ニュース

日常診療におけるバイオマーカーとしての尿中L-FABPの有用性と可能性

L-FABPの測定法と保険適用

 L-FABPの測定法と保険適用についてまとめておく。2010年に製造販売承認された時点での測定法はELISA法で、現在もそのキットは販売されている。その後、ラテックス免疫比濁法が開発された。これは生化学の汎用自動分析装置を用いて短時間で測定でき、またクレアチニン補正値も同時に得られるという特徴があり、日常臨床において使いやすい(表1)。

表1 ラテックス免疫比濁法によるL-FABPの特徴等
測定原理ラテックス免疫比濁法
適用検体種随時尿および蓄尿 ※酸性及びトルエン蓄尿は不可
測定範囲1.5~200ng/mL(7180形日立自動分析装置による)
測定時間約10分
特 徴院内の検査室で簡便に測定できる。診察前に尿中クレアチニンと同時に結果が出せる
〔積水メディカル株式会社資料〕

 また最近、イムノクロマト法によるPOCキットも登場した。定性的な検査ではあるが尿試験紙のような要領で測定できるという簡便性から、ベッドサイドや訪問診療などでの使用が期待される。このほか、化学発光酵素免疫測定法という測定法も出てきている。

 重要なことは、これら測定法の開発に全て同じ標準物質を用いていて、どの試薬で測定しても同じ値が出るということだ。測定が標準化されているということである。これは臨床検査として当たり前のことではあるが、意外にも標準化が遅れている検査項目がある中で、L-FABPの信頼性は保証されていると言える。

L-FABPはAKIとCKDに保険適用

 保険については原則として3カ月に1回算定でき、医学的必要性からそれ以上算定する場合は明細書の摘要欄に理由を記載することとされている。AKIとCKDの両方に適応があるが、前者においてL-FABPとNGALの両者を用いた場合、主たるもののみを算定できる(表2)。L-FABPをAKIに用いる場合はNGALに準じて、診断時に1回、その後は3回までが保険適用になる。

表2 L-FABPとNGALの保険適用条件
 D001 尿中特殊物質定性定量検査
 L-FABP(尿)
[全測定法に共通]
NGAL(尿)
点 数実施料:210点 判断料:34点(尿・糞便)
留意事項原則として3カ月に1回に限り算定する。AKIの診断時又はその治療中に、CLIA法により測定した場合に算定できる。診断時においては1回、その後はAKIに対する一連の治療につき3回を限定として算出する。
医学的な必要性からそれ以上算定する場合においては、その詳細な理由を診療報酬証明書の摘要欄に記載する。
両検査を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する。
対象疾患CKD, AKIAKI
保健収載2011年8月1日2017年2月1日

CKDバイオマーカーとしてのL-FABP

 次にCKDとの関連に話を進める。図4は聖マリアンナ医科大学在職中の横断研究で、糖尿病患者の腎症病期の進行とともにL-FABPの排泄が増加することを示しているが、正常アルブミン尿期でも既にL-FABPは健常対照群に比し有意に上昇していることがわかる。また、糖尿病性腎症患者104名を4年間追跡し腎症進展予測因子をROC解析で検討したところ、L-FABPのAUCは尿アルブミンと同等であり9)、かつ両者の併用により予測能がさらに向上することがわかった。

図4 糖尿病性腎症のステージ別にみた尿中L-FABP

図4 糖尿病性腎症のステージ別にみた尿中L-FABP
〔Diabetes Care 34:691-696, 2011〕

 CKDは末期腎不全とともにCVDイベントの危険因子であることが知られている。しかし実際にどの患者にCVDイベントが起きるのか、何を指標に介入すればイベントを抑制できるのかが明確でなく、新たなバイオマーカーの確立が期待されている。

 図5は滋賀医大からの報告で、618名の糖尿病患者をL-FABP値で三分位に分け、末期腎不全に心血管イベントを加えた複合エンドポイントとし、12年間追跡した結果だ。L-FABPが腎症進展だけでなくCVDイベントリスクとも有意に関連することがわかる。さらにこの検討では、尿アルブミンが正常レベルであってもL-FABP高値群ではイベントリスクが有意に高いことが示されている(表3)。

図5 L-FABP別にみた心腎イベント発生率の推移

図5 L-FABP別にみた心腎イベント発生率の推移
〔Diabetes Care 36:1248-1253,2013〕
表3 正常または微量アルブミン尿期におけるL-FABPと心腎イベントの関連
L-FABP
第一分位
(≦5.0μg/gCr)
第二分位
(5.0-9.5μg/gCr)
第三分位
(>9.5μg/gCr)
イベント発生率(1,000人年)*1
正常アルブミン尿 7.8 10.9 21.7
微量アルブミン尿 17.8 25.7 31.0
調整ハザード比(95%信頼区間)*2
正常アルブミン尿 1(reference) 1.49(0.72-3.09) 2.26(1.15-4.45)
微量アルブミン尿 1.72(0.68-4.38) 2.70(1.26-5.81) 2.18(1.08-4.40)
*1:末期腎不全、急性心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、末梢動脈疾患の複合エンドポイント
*2:年齢、性、BMI、HbA1c、TC、logTG、logHDL-C、高血圧、RAS阻害薬の使用、収縮期血圧、拡張期血圧、CVDの既往、eGFRで調整
〔Diabetes Care 36:1248-1253,2013〕

 以上の成績は2型糖尿病患者での検討であるが、1型糖尿病においても同じようにL-FABPの高値が腎症進展の予測因子であることや10)、アルブミン排泄とは独立してL-FABP高値が死亡のリスクとなること11)が報告されている。

腎硬化症も含めた検討でもL-FABPはCVD・透析導入・死亡と関連

 糖尿病性腎症だけでなく、透析導入原因疾患として経年的に増加している腎硬化症についても、L-FABPの有用性が示されている。例えば、厚労省の多施設共同研究で既に採取されていた尿検体244件を用いた後ろ向きの検討を行った。脳卒中、心筋梗塞、手術が必要な閉塞性動脈硬化症、透析導入、死亡を複合エンドポイントとし、各種バイオマーカーの感度・特異度を解析した。それによるとL-FABPのAUCは3種のマーカーの中で最も大きかった(図6)。

図6 各種尿中バイオマーカーの心腎複合エンドポイントに対する感度・特異度

図6 各種尿中バイオマーカーの心腎複合エンドポイントに対する感度・特異度
〔Clin Exp Nephrol 20:195-203. 2016〕

次は...
運動とL-FABP

[soshinsha]

「健診・検診」に関するニュース

2018年09月19日
日本人の28%が65歳以上 女性の高齢者は2000万人超 働く高齢者も最多
2018年09月19日
「糖尿病腎症」のリスクは糖尿病予備群の段階で上昇 検査で早期発見を
2018年09月19日
早期乳児の腸管内ビフィズス菌 母親の分娩時の抗菌薬投与で減少
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月12日
【申込開始】あらゆる世代の健康支援に役立つ一冊 保健指導用・健康事業用「教材・備品カタログ2019年版」 
2018年09月11日
肥満でなくても「高コレステロール」に注意 日本人を30年調査 滋賀医大
2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年09月11日
「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位
2018年09月11日
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果

最新ニュース

2018年09月20日
健やか親子21全国大会事前申込み受付中(10/12日(金)〆切)
2018年09月19日
日本人の28%が65歳以上 女性の高齢者は2000万人超 働く高齢者も最多
2018年09月19日
「糖尿病腎症」のリスクは糖尿病予備群の段階で上昇 検査で早期発見を
2018年09月19日
早期乳児の腸管内ビフィズス菌 母親の分娩時の抗菌薬投与で減少
2018年09月18日
男性の同性間性的接触によるA型肝炎患者が激増
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月13日
【9/10~9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます!
2018年09月12日
【申込開始】あらゆる世代の健康支援に役立つ一冊 保健指導用・健康事業用「教材・備品カタログ2019年版」 
2018年09月11日
肥満でなくても「高コレステロール」に注意 日本人を30年調査 滋賀医大
2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年09月11日
「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位
2018年09月11日
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果
2018年09月07日
「運動不足」が世界に蔓延 日本でも3人に1人が運動不足 WHOが報告
2018年09月07日
【母子保健担当者】災害時の母子保健対策に関するマニュアル等について
2018年09月06日
「保健師の活動基盤に関する基礎調査」を開始 日本看護協会
2018年09月06日
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動
2018年09月05日
高齢者のフレイル対策は栄養指導の大きな課題 日本栄養士会が全国大会
2018年09月05日
「スマートミール」認証がはじまる バランスの良い健康な食事の証
2018年09月05日
育児中の女性の孤独感 SNSなど双方向的な育児支援が必要 京都大
2018年09月05日
禁煙後の体重増加で糖尿病リスクが上昇 でも禁煙のメリットは大きい
2018年09月05日
暑さに対策してウォーキング 安全に運動するための10ヵ条
2018年09月04日
「ストレスチェック制度の活用」へるすあっぷ21 9月号
2018年09月03日
【「STOP!肥満症」強化月間記念行事】特別セミナー&市民のための身体健康チェック体験会ご案内
2018年08月31日
【健やか親子21】18歳から"大人"に!成年年齢引き下げで変わること、変わらないこと。(内閣府)
2018年08月30日
【参加募集中】2018年度 第1回産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「保健指導」※定員に達したため、応募を締め切りました
2018年08月29日
「アルコール」は健康に悪い? 総合的にみて安全な飲酒量はないと結論
2018年08月29日
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか?
2018年08月29日
朝食で「牛乳」を飲むと1日を通じて血糖値が低下 糖尿病を予防
2018年08月29日
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,421 人(2018年08月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶