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糖尿病の医療費の節約志向が高まるアメリカ 5人に1人が受診を回避

 糖尿病の医療費が高騰している影響を受け、米国では十分な治療を受けられない患者が増えている。米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、医療費を節約したい気持ちから、診療を受けなかったり、薬を飲まない、処方箋を薬に代えるのを避ける45~64歳の糖尿病患者が増えているという。
糖尿病の医療費を払えない人が増加
 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施した2015年の国民・健康調査によると、糖尿病と診断された45~64歳の患者のうち、過去1年間に、医療機関での診療頻度を減らしたり、遅らせたことのある患者は18.8%に上るという。これは糖尿病ではない患者の9.6%の2倍に上る数値だ。CDCでは「医療費を節約したい」「医療費を払えない」という糖尿病患者が米国で増えていると推測している。

 調査では、薬の服用をスキップするという患者は13.2%(糖尿病ではない患者では6.4%)、受診をしなかったことのある患者は14.4%(同6.9%)、処方箋を治療薬に代えるのを避ける、つまり薬代を払えない患者は16.3%(同7.9%)に上った。

 CDCによると、米国の1型糖尿病と2型糖尿病の患者数は2015年には2,900万人に上り、2010年の2,600万人から増えている。
定期的に検査を受けないと薬の効果を理解しにくい
 「糖尿病を発症しても自覚症状が乏しいために、適切な時期に治療を行えない患者が少なくありません。治療を受けないでいると、発症の5~10年後に糖尿病合併症を発症する危険性が高まります」と、米国糖尿病教育者協会(AADE)のエヴァン シッシオン氏は言う。

 糖尿病は高血糖の状態が慢性化し、そこからさまざまな合併症が引き起こされる病気で、高血糖の他にいくつかの代謝異常が重なる症候群と理解されている。実際に、45歳以上の糖尿病患者の多くは高血糖の他に、高血圧や高コレステロールなどの異常や、腎臓病などを併せもつことが多い。これらを全てコントロールする必要があるので、糖尿病患者は数種類の治療薬が処方されることが多い。

 「多くの薬を服用していると、どの薬がどのように作用しているのか、患者は実感しづらいのです。そのため、たとえば"高コレステロールの薬を飲まなくとも、たいしたことはないのではないか"と、考えがちです。自覚症状がないと、なおさら治療の効果が分かりにくくなります」と、シッシオン氏は説明する。

 「頭痛があるときには頭痛薬を飲むなど、薬の効果をすぐに感じることは、慢性疾患である糖尿病では多くありません。そのため患者の多くは、定期的に検査を受けないと薬の効果を理解しにくくなります」。
糖尿病合併症を発症すると、体を元に状態に戻すのは難しい
 しかし、糖尿病は、適切な治療を受けないでいると、神経障害、網膜症、腎臓病、心血管疾患、脳卒中などの合併症の発症リスクを確実に高める疾患だ。糖尿病が合併症の危険性を高めることは、多くの疫学研究で明らかになっている。

 「そして、糖尿病合併症の多くは、いったん発症してしまうと、元に状態に戻すのは難しいのです。たとえば糖尿病網膜症は初期の段階では治療できますが、進行してしまうと網膜を発症前の状態に戻すことはできません。糖尿病網膜症は視力障害や失明の原因のトップを占めています」と、シッシオン氏は言う。

 糖尿病腎症が進行すると腎不全に陥り、透析治療をしないと生命を維持できなくなる。糖尿病は透析治療の主な原因となっている。腎臓病は網膜症と同じように、腎臓の最小血管が高血糖により障害されることで引き起こされる。「透析が必要な段階になると、痛めつけられた血管を元に戻すことは不可能です。透析に代わる末期腎不全に対する治療法は腎臓移植しかありません」。

 透析療法まで含めると糖尿病の医療費は高騰する。米国糖尿病学会(ADA)によると、米国の糖尿病の1人当たりの年間医療費の平均は約150万円に上る。特に医療保険に加入していない人は、医療費を払うのが困難になる。
良好な血糖コントロールにより医療費も削減できる
 米国には、日本の国民医療保険のような皆保険制度はなく、国民は「メディケイド」や「メディケア」のような公的医療保障制度に加入するか、勤務先を通して、もしくは個人で、民間の保険会社が提供する保険に加入する必要がある。

 「幸いなことに、良好な血糖コントロールによって、糖尿病合併症を防ぐことができることは確立されています。そしてそのことは、糖尿病の医療費を削減することにもつながります」と、米国糖尿病学会(ADA)のウィリアム チェファルー氏は言う。

 「糖尿病の医療費の多くは、糖尿病合併症のために費やされているのです。糖尿病の医療費を減らすために必要なのは、糖尿病合併症を予防することです。いま自覚症状がないからといって、診療を避けたり、血糖降下薬やインスリンの購入を止めるのは危険なことです」。
未来を勝ちとるために、いま治療を受けることが必要
 ADAは、米国の糖尿病による経済的な負担は2012年には27兆円に上ったと推定している。その内訳は、糖尿病の直接的な医療費19.5兆円と、糖尿病による経済的な損失7.6兆円だ。

 糖尿病合併症が起きてしまうと、患者の生活の質(QOL)が大きく低下するだけでなく、医療費は飛躍的に高額になる。糖尿病合併症を防ぐために、血糖コントロールに加え、血圧やコレステロールなどのコントロールも必要だ。これらをチェックするのに、定期的に診療と検査を受け続ける必要がある。

 「糖尿病の治療の目的は、糖尿病合併症と、心血管疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患を予防することです。そのためには、通院して医師や医療スタッフによる治療を受け続けることが大切なのです。このことを働き盛りの人やご高齢の人には認識してほしいと思います。治療を怠ったり中止してしまうのは危険なことです。未来を勝ちとるためには必要なのは、いま行動することなのです」と、チェファルー氏は強調している。

Percentage of Adults Aged ≥45 Years Who Reduced or Delayed Medication to Save Money in the Past 12 Months Among Those Who Were Prescribed Medication, by Diagnosed Diabetes Status and Age(米国疾病予防管理センター 2017年6月30日)
[Terahata]

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