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認知症の社会的処方箋 認知症にやさしい社会づくりを通じて早期発見・診断

 製薬企業の日本イーライリリーは、「認知症の社会的処方箋 認知症にやさしい社会づくりを通じた早期発見と早期診断の促進に向けた白書」と題した提言書を発表した。
 認知症は日本でも急速に増えている疾患だ。認知症は早期発見し、早期に治療を開始するのが重要な疾患だが、現状では早期診断が遅れ、適切な治療を行えないケースが多い。
 白書では認知症に対する考え方を改めて、新たなアプローチをする必要があると提言している。

 白書は日本医療政策機構(HGPI)とマッキャングローバルヘルスと共同で制作したもので、日本イーライリリー、マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンが協賛している。
認知症の早期発見・早期診断の重要性の理解の促進を目指す提言書
 世界保健機関(WHO)は、世界で認知症の人々は現在の4,700万人から2030年までに7,500万人に増え、2050年までに現在の約3倍になると予測している。日本でも、65歳以上の高齢者で認知症のある人は、2012年の7人に1人から、2025年には5人に1人に増えるという予測が、厚生労働省の研究班の研究で示されている。

 認知症は、患者だけではなく、家族や介護者の生活にも、身体的、心理的、経済的な影響を与える。

 WHOや英国のアルツハイマー学会、世界認知症会議、厚生労働省など、認知症の医療に関わる組織や機関が、早期発見や早期診断の重要性を強調している。しかし、多くの人は、認知症の症状があるにもかかわらず、必要な診断を受けようとしない。英国では、認知症の診断に当てはまる人で診断を受けていない人の割合は45%にのぼることが明らかになっている。

 そうした中で、政府や自治体、非政府組織(NGO)や企業などは、認知症の早期診断を促進するためにさまざまな取り組みを行っている。しかし、早期診断への行動を促進するエビデンスが適切に整理されていなかったり、広まっていなかったりするために、多くのプログラムや活動が、科学的な根拠にもとづいて行われていない現状がある。

 そこで白書では、認知症の早期発見・早期診断に関する学術文献のレビューに加え、キーオピニオンリーダーや専門家へのインタビュー、注目すべき日本のケーススタディ紹介を加え、「認知症の社会的処方箋」として、5つの提言をまとめている。

1. 認知症のケアと治療のゴールを再定義すること

 認知症は治癒するのが難しい病気だ。早期発見と診断の障害のひとつとして、医療従事者(特に医師)による、治癒を目的とした治療がないことに関わる躊躇があることが分かった。

 この点を解決するために、認知症のケアと治療に関して、医療従事者の役割を「再定義」することが必要だと専門家は述べている。

 例えば、医療従事者が認知症を治癒させることを役割とするならば、治療薬ができるまで彼らは何もできないという状態になってしまう。

 その代わりに、医療従事者の役割および認知症ケアと治療のゴールを患者と介護者の生活の質を向上させることへとシフトさせることが必要だ。この新しい定義であれば、医療従事者や他の実務家も、できることがたくさんあることが分かってくる。

2. 社会的かつコミュニティを基盤にした認知症予防、発見、ケア、サポートの重要性を広めること

 1の提言に関連して、新しい認知症ケアとゴールを達成するためには、コミュニティを基盤としたケアとサポートを日本、および高齢化に直面している他の国々で広めることが必要だ。

 この考えを普及させることで、認知症に関して、社会的に支援する規範を広めることができるようになる。

3. エビデンス(科学的根拠)に基づいて社会的・コミュニティを基にした施策や早期診断・発見のプログラムを計画すること

 上の規範を確立するために、社会的なプログラムに対してもエビデンスの考えを用いることが重要となる。これには、政策やプログラムを組み立てる際に科学的根拠を生み出していくことと、データを使って政策やプログラムの評価をすることが含まれる。

 行動科学や他の公衆衛生の理論などにひとづいてプログラムを設計し、効果検証を行うことは、早期発見・診断の分野でも重要となる。

 また、コミュニティを基盤としたアプローチでは、公衆衛生学的なエビデンスを出し、検証している点で、ケーススタディで紹介した武豊サロンプロジェクトがこれにあたる。このような効果検証が、将来のプログラムを開発する上でも重要となる。

4. データや活動を共有するための仕組みを作ること

 研究者や関連機関が認知症分野の研究結果を共有するためのプラットフォームやデータベースづくりが必要だ。3の提言でも紹介したようなエビデンスをシェアするためにも、このような仕組みづくりが必要となる。

 また、これは医学的な研究のみではなく、公衆衛生の研究に関しても応用されるべきだ。このようなプラットフォームは、認知症のような比較的新しい分野の活動や貢献を活性化させるためにも役にたつだろう。高齢化研究のリーダーとして日本がこのような仕組みを作ることには意義がある。

5. 官民のパートナーシップを強化すること

 最後に、企業の巻き込みは、上で述べた提言を実行する上でも非常に重要だ。企業の専門性やネットワークは、新しい活動を作ったり、プログラムを広範囲に普及させたり、官民のパートナーシップを作ったりする上で役に立つ。

 日本では、すでに、多くの企業が認知症に関連した活動やプログラムを行っている。次のステップとしては、企業が研究者と手を組み、これらの活動やプログラムの効果検証を行い、一つひとつが行動や健康のアウトカム、そして費用の面でどのような効果やインパクトをももたらすのかを評価することだ。

 このような効果検証を通して結果を可視化することは、公衆衛生的な利益だけでなく、企業のビジネスにとっても、プラスとなり、結果的に取り組み自体の持続可能性に貢献できるようになる。

 白書では、これらの課題について、認知症に関わるさまざまな利害関係者がともにソリューションを検討していける環境づくりができることを期待している。

日本医療政策機構(HGPI)

日本イーライリリー
認知症の社会的処方箋 認知症にやさしい社会づくりを通じた早期発見と早期診断の促進に向けた白書
[Terahata]

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