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タクシー乗務員に学ぶ糖尿病対策 「ちょっと糖尿病」は危険?

 糖尿病の治療を続けながら、仕事もおろそかにしないための具体的な施策が必要とされている。
 タクシー乗務員は、1日を座ったまま過ごす職業の代表格だ。座ったまま過ごす生活が定着している現代人にとって、タクシー乗務員の知恵は参考になる点が多い。
糖尿病を放置すると確実に合併症が
 日本イーライリリーと日本交通は、糖尿病患者または糖尿病予備群を含む、血糖値が気になるタクシー乗務員を対象に、「自分のライフスタイルに合わせた糖尿病の治療と対策」の提案と管理を行うプロジェクトを開始した。

 両社は共催で1月23日、日本交通・赤羽営業所に所属するタクシー乗務員約30人を対象にセミナーを開催した。

 2型糖尿病の危険因子として不健康な食事や運動不足、不規則な生活習慣などが挙げられるが、こうした因子に当てはまりやすいのが、昼夜交代のシフト制で勤務するタクシー乗務員だ。

 2型糖尿病は初期の段階では自覚症状が乏しく、治療を行わなくとも、働き続けるのが困難になるような問題は直ちには起こらないかもしれない。しかし放置しておくと、10年後、20年後に確実に、深刻な合併症を引き起こす。

 この日、奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は、糖尿病と合併症、自分のライフスタイルに合った治療の重要性について「糖尿病『あなたにぴったりの治療』を見つけましょう」と題した講演を行い、生活スタイルに合った治療について説明した。

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糖尿病の症状がない状態でも治療の継続を
 参加したタクシー乗務員のひとりは「症状はないけれど、血糖値が高いと言われている状態です」と回答。

 石井教授は「『自分はちょっと血糖値が高いだけ』と思っている患者さんがよくいらっしゃいますが、糖尿病かどうかは検査を受ければ数値ではっきりと出ます。自分の体の状態を知り、糖尿病であることが分かったら、症状がない状態でも、ずっと治療に通い続けてほしい」と語る。

 「血糖値が高いのを放っておくと、腎臓や目や神経に症状が現れます。その他にも心筋梗塞や脳梗塞や足の血管が細くなりしびれなどの合併症状が出てきます。治療により血糖値が正常化しても、『もう治ったのだ』と思い、治療を中断することなしに、いったん糖尿病と診断されたらずっと継続して治療を受けることが大切」と、石井教授は言う。

 「糖尿病の治療では、食事と運動、薬物療法が行われます。特に薬物療法では、主治医と飲み方や回数をよく相談して決めてもらいたい」とアドバイスしている。
糖尿病は薬をもらって終わりではない
 タクシー乗務員は深夜勤務も多く、また処方された血糖降下薬によっては、副作用で低血糖を来すおそれがある。タクシー乗務員の場合は交通事故につながる危険をはらんでいるので、治療薬選びには細心の注意を払う必要がある。

 「最近では、医師と患者が相談しながら治療薬を決めていくようになってきました。糖尿病治療薬も、服用回数が1日3回や1日1回、週1回など、さまざまです。どのような治療がいいのか、主治医に自分の希望を伝え、よく相談し、就業や生活状況に合わせた治療を選択してもらいたい。どんなに良い治療薬であっても、ご自分の生活に合っていないと上手く使えなくなってしまいます」と、石井教授は指摘する。

 「糖尿病というのは診断され、薬をもらって終わりではありません。糖尿病の治療薬にどのような効果があり、どのような副作用があるのか、必ず医師と相談してもらいたい」と石井教授は言い、糖尿病治療では医師と患者の双方のコミュニケーションがとりわけ重要だと強調している。
「自分に合った食事を選ぶ」という意識を
 次に、糖尿病の行動変容理論をベースに1万8,000人以上の栄養相談を受けた実績をもつ管理栄養士の浅野まみこ氏が講演し、血糖値を意識した外食時の食事の取り方や選び方、気をつけるべき点について具体例を用いて提案した。

 糖尿病だから「食事に気をつけなさい」と言われると、「食べちゃいけない」「我慢しないと」と思いがちだが、「自分に合った食事を選ぶ」という意識をもち、健康な食事を選ぶための『食選力』を身に付けることが大切だという。

 浅野同氏は外食で血糖値の上昇を抑えるポイントとして、(1)野菜を追加して先に食べる(ベジファースト)、(2)単品よりも定食・おかず付きを選ぶ、(3)調味料を追加しない――という3点を挙げている。

 例えば、うどん屋では、サラダうどんや山菜うどんを選ぶ、ワカメやネギ、野菜などをトッピングする、牛丼屋では牛皿定食にする、小皿を選ぶといった具合だ。コンビニでも単品ではなく、おにぎり、サラダ、インスタント味噌汁を購入し、「自分自身の定食」をつくる工夫が役立つ。

 外食では、野菜を追加することでカラフルを意識し、迷ったら噛み応えのある食材を選ぶことが大切だ。調味料を追加すると塩分が増えてしまい、食欲も早食いも増していくので、基本的に追加しない。

 「毎食の食事内容を少しずつ変えれば、1年後にはかなり変わります。一気に変えるのではなく少しずつ、1年間続けることで体は変わります」と、浅野氏は指摘する。
足の大きな筋肉でより多くの糖を使うことが運動のコツ
 最後に、数多くのトップアスリートをはじめ、中高生から高齢者、運動習慣がない一般の方々向けの講座開催の実績など幅広い層のトレーニング指導に携わるフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が講演した。

 糖尿病対策として行う運動は「より大きな筋肉で、より多くの糖を、より効率的に使うこと」が大切だという。具体的には、ウォーキングなどの足を使う有酸素運動に、ダンベル体操などの筋力トレーニングを組み合わせると効果的だ。

 「朝起きたら運動を5分間、帰宅したら運動を5分間といった、運動を日常生活のルーチンの中に取り入れる工夫が役立ちます。運動は生活習慣の一部に組み込むと、より長続きします」と、中野氏はアドバイスしている。

 「血糖値を効率的に下げるには下半身の運動や、股やお尻回りをたくさん使うトレーニングが効果的。筋力を向上させるには、両足より負荷が大きい片足運動が短時間でできます」と、中野氏は言う。

 会場では実際にトレーニングが行われた。オリジナルに開発されたタクシー乗務員向けの、業務の休憩時間中にできるエクササイズが紹介された。

 実際にやってみた乗務員はすぐに息が荒くなり、運動不足を実感。なかには「思ったより疲れる」「足がつりそう」とこぼす人も。短時間の運動で、下半身の負担を重く感じるのは、運動不足で体力が低下している証拠だ。

 参加した血糖値が高いという52歳の男性は「自分の健康を考える良い機会になった。糖尿病の合併症が怖い。極力提案された食事や運動をして、健康診断の数値を見て必要となれば医師に行ったりしたい」と話していた。
日本イーライリリー
日本交通
[Terahata]

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