ニュース

PCSK9阻害薬の適正使用フローチャート 動脈硬化学会が見解を表明

 日本動脈硬化学会は3月2日、PCSK9阻害薬の適正使用の指針となる見解を発表した。同剤は家族性高コレステロール血症、または、冠動脈疾患二次予防の高リスク症例に用いるべきとし、これらの病態における同剤適用のフローチャートを明示した。

 強力なLDL-C低下作用を有するPCSK9阻害薬が2016年に発売され、従来の薬剤では十分な管理が困難であった患者においても、LDL-C管理目標の到達を目指すことが可能になった。しかし、薬価が高額であり、未知の副作用が存在する可能性を完全には否定できていないことから、現時点において適用は同剤の恩恵を強く受け得る患者に限定する必要がある。

 今回の同学会の見解において、その患者像が明確に示された。同剤を積極的に用いるべき対象である家族性高コレステロール血症(FH)が未診断のまま非専門医のもと不十分な治療が行われていたり、スタチンの最大耐用量を用いずにPCSK9阻害薬を使用しているといったケースが散見される現状に対する注意喚起も含む内容。

家族性高コレステロール血症(FH)

 発表された見解では、PCSK9阻害薬の適用は、家族性高コレステロール血症(FH)と、冠動脈疾患二次予防の高リスク症例としており、それぞれにおいて同剤使用に至るまでのフローチャートを掲げている。

 まずFHに関しては、既に『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』に掲載されているフローチャートを踏襲したものを発表。スタチン最大耐用量にエゼチミブを併用して1~2カ月後にLDL-C低下効果を判定し、管理目標に未達ならPCSK9阻害薬の使用を積極的に考慮することを促している。

家族性高コレステロール血症(FH)へのPCSK9阻害薬適正使用フローチャート
家族性高コレステロール血症(FH)へのPCSK9阻害薬適正使用フローチャート

* スタチン不耐症の場合、別のスタチンの処方や投与間隔を考慮し、できる限り最大耐用量まで増量する
** PCSK9阻害薬を開始するときには専門医に相談することが望ましい
*** PCSK9阻害薬はアフェレシス時に除去されるため、アフェレシス後に皮下注射する
*** LDLアフェレシスはヘテロ接合体では二次予防で適応となる

冠動脈疾患二次予防の高リスク症例

 一方の冠動脈疾患二次予防の高リスク症例とは、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』において、LDL-C70mg/dL未満、non-HDL-C100mg/dL未満を目指すとされている病態のこと。具体的には、急性冠症候群と、糖尿病患者のうち「高リスク病態」(後述)を合併している症例。

 このいずれかに該当する場合、スタチン最大耐用量にエゼチミブを併用しても前記の管理目標に到達しない場合、PCSK9阻害薬の追加を考慮する。ただし、スタチン最大耐用量にエゼチミブを併用しても管理目標に到達しない時には、FHである可能性を改めて疑う必要があるとしている。またPCSK9阻害薬使用にあたっては、スタチン最大耐用量とエゼチミブの併用を中止せず、そのまま継続するとともに、脂質以外の血糖、血圧、喫煙等の古典的リスク因子の管理を徹底する。

 なお、FHにおいても冠動脈疾患二次予防の高リスク症例においてもPCSK9阻害薬の開始に際して、専門医に相談することが望ましいと述べている。

冠動脈疾患二次予防(非FH)でのPCSK9阻害薬適正使用フローチャート
冠動脈疾患二次予防(非FH)でのPCSK9阻害薬適正使用フローチャート

◆ 高用量ストロングスタチンにエゼチミブを併用しても十分なLDL-C低下が得られない場合には、あらためてFHを疑う
◆ PCSK9阻害薬を検討する症例では、高血圧・糖尿病・喫煙など古典的危険因子も十分にコントロールする
◆ PCSK9阻害薬を開始するときには専門医に相談することが望ましい

糖尿病患者の冠動脈疾患二次予防では、高リスク病態合併例が少なくない

 本見解において糖尿病と直接関係があるのは冠動脈疾患二次予防に該当する糖尿病患者のうち、「高リスク病態」を合併している症例だ。その「高リスク病態」としては具体的に、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)、喫煙、末梢動脈疾患(PAD)、非心原性脳梗塞、主要危険因子の重複が掲げられている。

 年余にわたる糖尿病治療の経過中に冠動脈疾患を発症した場合、これらのいずれかが該当することが多いと考えられ、糖尿病患者の多くは、「高リスク病態」合併例と言えそうだ。二次予防における脂質管理ではLDL-C70mg/dL未満、non-HDL-C100mg/dL未満をめざし、まずはスタチン最大耐用量とエゼチミブを併用することが先だが、それでも目標に到達しない場合、PCSK9阻害薬の使用を考慮することになる。

スタチン不耐症など、「今後の課題」も明記

 適正使用の推進に向けて上記のフローチャートを公開するとともに、見解では現時点で明らかにできていないことを「今後の課題」として明記している。

 例えば現在、保険上PCSK9阻害薬はスタチン最大量を用いた上で処方する必要があるが、スタチン投与によりCK上昇、筋肉痛などを生じるスタチン不耐症例への保険適応拡大を進めるにはスタチン不耐症の診断基準を明確にする必要がある。また、冠動脈疾患以外の動脈硬化性疾患の予防・治療に本剤を用いるべきか否かの検討や、本剤の未知の副作用が存在する可能性などが挙げられている。

関連資料

日本動脈硬化学会/ヒトPCSK9モノクローナル抗体薬の適正使用について

[soshinsha]

「健診・検診」に関するニュース

2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
2018年12月19日
「10の食品群」の栄養バランスをチェックできる無料アプリ 東京都健康長寿医療センターなど共同開発
2018年12月19日
転倒経験がある高齢者は、自転車での転倒発生率も高い 肥満も転倒の要因に
2018年12月19日
「オーラルフレイル」の予防を啓発 無料アプリや冊子の提供を開始
2018年12月18日
[ 2/6 市民公開講演会参加者募集中!]全国生活習慣病予防月間2019
2018年12月17日
【新連載】業務効率化で「働くひとと組織の健康を創る」
2018年12月12日
年末年始にアルコールを飲み過ぎないために 知っておきたい5つの対処法
2018年12月12日
手軽な運動で筋内脂肪を減少 「ウォーキング+筋力トレーニング」がもっとも効果的

最新ニュース

2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
2018年12月19日
「10の食品群」の栄養バランスをチェックできる無料アプリ 東京都健康長寿医療センターなど共同開発
2018年12月19日
転倒経験がある高齢者は、自転車での転倒発生率も高い 肥満も転倒の要因に
2018年12月19日
「オーラルフレイル」の予防を啓発 無料アプリや冊子の提供を開始
2018年12月18日
[ 2/6 市民公開講演会参加者募集中!]全国生活習慣病予防月間2019
2018年12月17日
【新連載】業務効率化で「働くひとと組織の健康を創る」
2018年12月14日
【健やか21】不登校傾向にある子どもの実態調査 中学生約33万人
2018年12月12日
年末年始にアルコールを飲み過ぎないために 知っておきたい5つの対処法
2018年12月12日
手軽な運動で筋内脂肪を減少 「ウォーキング+筋力トレーニング」がもっとも効果的
2018年12月12日
うつ病を早期支援するのための社員向け研修プログラムを開発 職場のメンタルヘルス不調を早期発見・介入 九州大学など
2018年12月12日
保健指導にインセンティブを 世界の1億人の運動量を増やす「Vitality」の戦略
2018年12月12日
骨粗鬆症の検診受診率 全国ランキングを発表 1位は栃木県 骨粗鬆症財団
2018年12月06日
【参加募集中】第8回 産業保健プロフェッショナルカンファレンス「健康経営の視点での産業保健活動」
2018年12月06日
【健やか21】近年急増の梅毒 男性は40代、女性は20代が最多
2018年12月05日
保健指導をオンラインで支援 金沢大学がIoT活用で新たな保健指導サービス
2018年12月05日
【山梨県】糖尿病対策推進会議などと連携 「糖尿病腎症」の重症化予防
2018年12月05日
ペットロボ「アイボ」の癒やし効果を医療に活用 成育医療研究センター
2018年12月05日
骨が分泌する「若返り物質」 運動が若さを保つメカニズムを解明
2018年12月05日
「ストレス反応」は朝と夜で異なる 体内時計をストレスマネジメントに応用
2018年12月04日
糖尿病ネットワークがベトナムに進出 アジアの糖尿病医療を底上げ
2018年12月04日
「依存症を知る~今日的課題と対応~」へるすあっぷ21 12月号
2018年11月29日
「健康寿命をのばそう!アワード」最優秀賞決定~介護予防・高齢者生活支援分野/母子保健分野~
2018年11月29日
「健康寿命をのばそう!アワード」最優秀賞決定~生活習慣病予防分野~
2018年11月29日
【健やか21】伝染性紅斑が流行しています(東京都)
2018年11月28日
【参加募集中】第7回 産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~」※申込みを締切りました
2018年11月28日
高齢者の入浴に「要介護」を防ぐ効果 ただし冬の入浴には注意も必要
2018年11月28日
高カロリー飲料やお菓子はなぜ危ないか メタボや糖尿病の原因糖質が判明
2018年11月28日
毎日30分のウォーキングが乳がんを防ぐ 女性の運動を増やすアイデア7選
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,558 人(2018年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶