ニュース

「体内時計」が糖尿病・メタボに影響 「時間生物学」が注目されている

第61回日本糖尿病学会年次学術集会
 体内時計が乱れてくると、2型糖尿病、肥満、心血管疾患、がんなどのリスクが高まる。
 体内時計の性質を解明し、それをコントロールする治療法の開発に期待が高まっている。
 5月に東京で開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会で、「時間生物学」の最新の研究が紹介された。
体内時計が狂うと糖尿病や肥満に
 体内時計と食事や運動との関係を調べる「時間生物学」が注目されている。2017年のノーベル医学・生理学賞は「体内時計」に関する研究に授与された。

 体には体内時計が備わっており、ヒトを含む生き物はそれをコントロールしながら生活をしている。

 夜になると眠くなり、朝になると覚醒に向かうのは、体外の時間情報を必要としない自律性のリズムである体内時計が備わっているからだ。

 この体内時計は環境に同調するために、主に光と食事によって、調整されることが分かっている。食事は栄養をとるためのものだが、体内時計を環境に同調させる刺激としての役割も担っている。
体内時計のずれが臓器間の不調の原因に
 東京大学の深田吉孝教授らは、刺激を与えると細胞の中にある体内時計を変化させる新たな遺伝子をみつけた。マウスやヒトなどの細胞を使った実験で、特定のタンパク質をつくりだすことで、細胞内で変化する周期が遅くなることを解明した。

 マウスの研究で明らかになったことだが、本来と異なるタイミングで食事をとると、肝臓など代謝にかかわる臓器は素早く応答し、これらの臓器では体内時計がずれてしまう。

 すると、体内時計のタイミングが臓器間でずれを起こすことになり、臓器間に「時差ぼけ」に似た状態が生じる。臓器はお互いに連絡をとりあって活動しているので、このずれは体にとっての負担となる。

 こうした体のリズムに合わない食事の摂取が、2型糖尿病をはじめとした疾患や、健康障害を引き起こす原因になっていると考えられている。

 体内時計を正しく調整するためには、規則正しい食事や運動の習慣が重要になってくる。
体内時計のリズムを安定化させるタンパク質を発見
 早稲田大学の柴田重信教授らは、体内時計を食事で同調させる新しいメカニズムを発見した。食事に含まれるタンパク質やアミノ酸が体内時計に影響しており、インスリンに代わる働きをしているという。

 体内時計はインスリン分泌にも影響し、糖尿病にも関わると考えられている。

 食事を適切なタイミングで摂取することで、体内時計を同調させ、生活リズムを維持できると考えられている。食事による体内時計の同調には「炭水化物―インスリン」のシグナルが重要だ。

 末梢時計は炭水化物に含まれるインスリンのシグナルを利用して同調するが、タンパク質が豊富な食事では「IGF-1」(インスリン様成長因子-1)や「グルカゴン」が、インスリンに代わって同調シグナルを引き起こすことが分かった。

 「インスリン様成長因子」(IGF)は、肝臓や骨格筋などで産生される、インスリンに類似した作用をするペプチドホルモン。「グルカゴン」は、グリコーゲンとして蓄えられたグルコースを血液中に放出するよう働きかけ、血糖値を上昇させる働きをするホルモンだ。

 さらに研究グループは、タンパク質がもつ20種類のアミノ酸の中で、「システイン」がIGF-1の上昇を伴ってより強力な同調作用を引き起こすことも突き止めた。

 糖尿病の食事ガイドラインでは、総エネルギーの15~20%をタンパク質から摂ることが推奨されている。タンパク質を十分に摂ることが体内時計を正常に調整するのに役立つ可能性がある。
運動はどの時間帯に行うと良いのか
 糖尿病治療では運動療法も欠かせない。「時間運動学」という視点で、運動をどの時間帯に行うと良いのかを解明する研究も行われている。

 ウォーキングなどの有酸素運動をはじめると、しばらくは糖質が主なエネルギー源になる。それが尽きてくる20分くらいから体脂肪が使われだす。

 朝食前の血糖値の低い状態であると、血中の糖がすぐに底をつき、体脂肪が使われるようになる。空腹のときに有酸素運動をすれば、体脂肪を早く使い始めることができることは研究でも確かめられている。

 血糖値が下がってくると、肝臓のグリコーゲンが使われる。グルカゴンというホルモンが肝臓のグリコーゲンをブドウ糖に分解して、血液中に送り出し、血糖値を一定に保とうとする。
極端な空腹時の運動は避けた方が良い
 ウォーキングを行うときに注意したいのは、食事直後(30分以内)や極端な空腹時は、避けた方が良いということ。とくに糖尿病の人は、血糖降下薬を使っていると低血糖を起こすおそれもあるので注意が必要だ。

 肝臓のグリコーゲンを分解するときに、筋肉のタンパク質も同時にアミノ酸に分解する。糖質がエネルギー源にならない場合、筋肉量が減ってしまうおそれがある。

 また、体脂肪が分解されるときにできる「遊離脂肪酸」が大量に血液中に増えると、心臓の状態が良くない人では大きな負担をかけてしまう。

 さらに空腹時に運動をしてしまうと、運動の後すぐに食事をしたくなり、食べ過ぎてしまいがちだ。
運動はどの時間帯に行っても効果がある
 福岡大学の研究では、運動は朝・昼・夕のどの時間に行っても効果があることが分かった。研究では、1日を通して、1分運動+30秒休憩×3セットを30分おきに行う「細切れの運動」が、食後の血糖値の上昇をもっとも抑えられることが判明した。

 研究では、運動タイミングの違いが毎食後の血糖上昇抑制に与える影響について、24時間血糖値が測定可能なCGMを用いて検証した。その結果、20分おきの2分間の歩行運動が、食後の血糖上昇をもっとも抑制することが明らかになった。

 短時間の運動であっても、頻回にわたり繰り返し運動することで糖取り込みが進み、血糖値の上昇を抑えられるという。

 「運動するのに最適な時間は人によって異なる可能性はあります。血糖値の日内変動を細かく調べれば、1日のどの時間に運動をすれば良いかも分かるようになるでしょう」と、研究者は述べている。
体内時計の乱れを調整する方法
● 食事が体内時計を調整している

 生活リズムの乱れが、体内時計の調整を難しくする。食事の時間が規則正しくないと、体内時計のコントロールが乱れ、肝臓など代謝にかかわる臓器に負担をかけ、さらにリズムが乱れるという悪循環をまねく。

 就寝3時間前までに夕食を済ませるなど、できるだけ規則正しく食事することを心がけよう。

● 1日3食をきちんと摂る

 朝食、昼食、夕食のバランスは体内時計に大きく影響する。規則的に3食を摂ることが体内時計の調節に役立つ。

● 朝食が体内時計をリセットする

 体内時計のリズムを整えるには、朝食が大切だ。食事をすることで、インスリンが分泌され、時計遺伝子が発現して時計がリセットされる。光の刺激と同様に、朝食を食べることで、眠りから活動に向かうリズムが整えられる。

● 朝はしっかり食べると効果的

 忙しい毎日の生活リズムでは、食事は、朝は小食で、昼と夜にしっかりと摂るという人が多い。しかし、体内時計を考えると、朝にしっかりとした食事を摂る方が、2型糖尿病や肥満を改善するのに効果的であることが研究で示されている。

● 規則正しい生活で体内時計を調整

 夜更かしや夜間のスマートフォンの使用などによる体内時計の乱れが、睡眠障害や肥満などを引き起こし、糖尿病を悪化させる原因となる。体内時計の異常は、気分や感情にも強く影響する。

● 睡眠は糖尿病に大きく関わる

 正常であれば、食事によりとりこまれたブドウ糖などを、インスリンが全身の臓器で利用できるように働くので、血糖値は一定の範囲に保たれている。

 睡眠の質の低下や時間の短縮は、インスリンの働きを低下させたり、食欲を増進させるホルモンの分泌を増やしたり、食欲を抑制するレプチンの分泌を抑えたりして、過食や肥満を助長して、糖尿病をますます悪化させる。

● 睡眠障害や不眠の治療も大切

 睡眠障害や不眠と糖尿病の悪循環は明らかになっている。糖尿病の人は適切な睡眠習慣を心がけることが大切だ。

 不眠を改善する睡眠薬は安全で効果的なものが使えるようになっている。「最近、よく眠れていない」と感じていれば、早めに主治医の先生に相談することが必要だ。

第61回日本糖尿病学会年次学術集会
[Terahata]

「特定保健指導」に関するニュース

2019年06月26日
「低炭水化物ダイエット」がメタボや肥満のリスクを減少 ただし長期の安全性には疑問も
2019年06月26日
肥満やメタボは「脂肪肝」の危険因子 見逃されやすい「NAFLD/NASH」に対策
2019年06月26日
人生の後半戦で「運動」は絶対に必要 筋力トレーニングを週2回 若さを保つためにも必須
2019年06月26日
体幹筋量が減ると「腰痛」は悪化 日常生活の動作が困難に 世界で初めて大規模データで解明
2019年06月26日
高齢者の歯の喪失 糖尿病や骨粗鬆症があるとリスクが増加 教育歴や職歴も影響
2019年06月25日
「人事労務×産業看護職のコラボでもう一歩ふみ出す!健康経営 社員を巻き込むNEXTステップ」産業保健と看護 4月号
2019年06月21日
高尿酸血症のリスクは痛風だけではなかった! 中高年だけでなく、若い世代から気をつけたい尿酸値
2019年06月18日
「超加工食品」が肥満や糖尿病の原因に 悪玉ホルモンを増やし食欲を増進
2019年06月18日
夜間に照明やテレビをつけたまま寝る女性は肥満になりやすい
2019年06月18日
座ったままの生活で死亡リスクは上昇 「1日30分、体を動かそう」

最新ニュース

2019年06月26日
「低炭水化物ダイエット」がメタボや肥満のリスクを減少 ただし長期の安全性には疑問も
2019年06月26日
肥満やメタボは「脂肪肝」の危険因子 見逃されやすい「NAFLD/NASH」に対策
2019年06月26日
人生の後半戦で「運動」は絶対に必要 筋力トレーニングを週2回 若さを保つためにも必須
2019年06月26日
体幹筋量が減ると「腰痛」は悪化 日常生活の動作が困難に 世界で初めて大規模データで解明
2019年06月26日
高齢者の歯の喪失 糖尿病や骨粗鬆症があるとリスクが増加 教育歴や職歴も影響
2019年06月25日
「人事労務×産業看護職のコラボでもう一歩ふみ出す!健康経営 社員を巻き込むNEXTステップ」産業保健と看護 4月号
2019年06月24日
パワハラの防止措置を初めて義務化―女性活躍推進法等改正案が成立
2019年06月21日
高尿酸血症のリスクは痛風だけではなかった! 中高年だけでなく、若い世代から気をつけたい尿酸値
2019年06月20日
【健やか21】児童虐待予防支援のための「パパカード」活用について
2019年06月20日
統括保健師のいる職場で仕事にやりがい、継続就労にも―保健師の活動基盤に関する基礎調査
2019年06月18日
「超加工食品」が肥満や糖尿病の原因に 悪玉ホルモンを増やし食欲を増進
2019年06月18日
夜間に照明やテレビをつけたまま寝る女性は肥満になりやすい
2019年06月18日
座ったままの生活で死亡リスクは上昇 「1日30分、体を動かそう」
2019年06月18日
脂肪肝は内臓脂肪よりも深刻? 脂肪肝が筋肉のインスリン抵抗性を引き起こす ウォーキングなど運動が必要
2019年06月18日
筑波山の特産品「福来みかん」に肥満抑制の効果 ストレス回復も 茨城大
2019年06月14日
【書籍紹介】「精神科医の話の聴き方 10のセオリー」
2019年06月13日
最新版「カリフォルニアくるみ 科学的研究に基づく健康効果~ヘルスプロフェッショナルのためのリソースガイド」をご提供します くるみに関する科学的知見を解説
2019年06月13日
【健やか21】「溶連菌の感染症が増加中!抗菌薬は適切な使用方法を守って―」(国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター)
2019年06月12日
健診・検診/保健指導実施機関 集計結果と解説(2018年度版)
2019年06月12日
事業所で働く保健師の法的位置づけの確保などを厚労省へ要望-日本看護協会
2019年06月11日
企業向け「がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック」 がん治療と仕事の両立 心がけるべき7ヵ条とは?
2019年06月11日
「生活にゆとりのない」家庭は食育に関心がない 子供の孤食や栄養バランス不足に親の生活習慣病が影響
2019年06月11日
7つの簡単な生活改善が糖尿病リスクを減少 4つ以上実行で80%低下
2019年06月11日
日本小児科学会などが「幼児肥満ガイド」を作成 小児期の肥満は成人後にリスクに 保健師による声掛けは効果的
2019年06月11日
ホエイ(乳清)やチーズに含まれるアミノ酸に認知機能を改善する効果
2019年06月10日
がん治療と就労の両立支援に、産業医を積極的に活用 アフラック生命保険株式会社に聞く
2019年06月07日
特定保健指導(積極的支援)モデル事業の実施事例を紹介―厚労省の検討会
2019年06月06日
【健やか21】「自殺予防」リーフレットを公開しました
2019年06月05日
運動が高齢者の「ADL(日常生活動作)」を高める 1日1万歩を達成できなくても効果がある
2019年06月05日
寿命を縮める「転倒」を効果的に防ぐ 60歳超では4割近くが「転倒」 食事と運動で対策
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,441 人(2019年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶