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肺の健康を守るには口の健康から　歯周病が進行すると呼吸機能が急速低下

2018年10月05日

　九州大学は、歯周病の進行が呼吸機能の急速な低下に関わることを明らかにした。歯磨きや歯石除去などの口腔ケアにより歯周病の進行を予防することで、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症を抑制できる可能性があるという。

歯周病が重症化すると呼吸機能の低下が1.4倍に上昇

　慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、世界的に増加しており世界の死因の第4位を占める。COPDは、たばこの煙を主とする有害物質を長期間吸入することで、呼吸機能が成人期以降に経年で加速して低下することで発症する。

　研究チームは、喫煙以外の要因を調べるため、口の中だけでなく全身の健康を脅かす病気として知られる歯周病に着目した。福岡県久山町の40歳以上成人1,650人の追跡調査データを分析し、呼吸機能検査による1秒量の急速低下との関連を調べ、喫煙などの影響を取り除いて解析した。

　COPDは、閉塞性換気障害を中心とする疾患で、呼吸がどれだけ制限されているかをみる呼吸機能検査(スパイロメトリー)が診断のために必須となる。患者が最大限に息を吸い込んだ後に、強制的に吐き出した空気の量を努力肺活量(FVC)と呼ぶ。FVCの最初の1秒間の量を1秒量(FEV1)と呼んでおり、この数値の変化がCOPDの重症度を反映する。

　調べた結果、歯周病の進行がもっとも軽度な集団に比べ、もっとも重度な集団は、3年以内に1秒量が急速に低下する割合が1.4倍高く、歯周病が進行している人ほど呼吸機能の経年低下が急速に起こりやすいことが分かった。

　このことは、自宅や歯科医院での口の健康管理が、歯周病予防だけでなく、肺の健康を守るためにも重要である可能性を示している。

　「歯周病は、歯磨きなどのセルフケアや歯石除去などの歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせることで、予防・管理をすることができます。今回の研究により、肺の健康を守るために、口の健康をしっかりと守っていくことが重要であることが分かりました」と、研究者は述べてる。

　「久山町研究」は、九州大学と久山町の共同研究として、久山町の住民を対象に、1961年から行われている疫学調査。40歳以上の全住民を対象にした健康診断結果のデータを蓄積しており、健診受診率や剖検率、追跡率が高く、日本を代表する精度の高い研究として知られる。

　この研究は、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授が主任を務める久山町研究の一環として、同大歯学研究院口腔予防医学分野の竹内研時助教と山下喜久教授らが、同医学研究院呼吸器内科学分野の松元幸一郎准教授らと共同で行ったもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載された。