ニュース

手軽な運動で筋内脂肪を減少 「ウォーキング+筋力トレーニング」がもっとも効果的

 自宅で手軽にできる運動によって、筋肉内に脂肪が霜降り状に蓄積する「筋内脂肪」を減らせることが、名古屋大学などの研究で分かった。運動は、ウォーキングに筋力トレーニングを組み合わせると、もっとも効果的だという。
 「筋内脂肪」はインスリン抵抗性を引き起こす糖尿病の危険因子であり、運動が糖尿病の病状を改善するメカニズムが明らかになった。
筋肉の量が減ると血糖値が上昇
 筋肉はエネルギーの貯蔵庫でもあり、血糖値の調整を行う働きをする。食事をすると、血液中に増えた糖の一部は筋肉に取り込まれる。筋肉の量が減ると、血糖値が上昇するのは、糖をためる場所が少なくなり、糖を調節する力が低下するからだ。

 さらに、筋肉内に脂肪が霜降り状に蓄積する「筋内脂肪」は、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性を引き起こす。高齢者では、「筋内脂肪」が多いほど、歩行能力や日常生活機能が低下することが分かっている。

 ウォーキングなど自宅で手軽にできる運動を10週間続けると、筋肉量を増やし、「筋内脂肪」を減らせることが、名古屋大学などの研究で明らかにになった。

 ウォーキングだけでも効果があるが、それに自身の体重を負荷として用いる「自重負荷レジスタンストレーニング」を加えると、さらに効果が増すという。

 研究は、名古屋大学総合保健体育科学センターの秋間広教授と中京大学の吉子彰人助教らの研究グループが早稲田大学と共同で行ったもの。詳細は科学誌「European Review of Aging and Physical Activity」オンライン版に発表された。
「筋内脂肪」は糖尿病の危険因子
 皮下脂肪と内臓脂肪に加えて"第3の脂肪"と呼ばれる「異所性脂肪」が注目されている。異所性脂肪とは、本来は脂肪が蓄積されないはずの筋肉、膵臓、肝臓などにに蓄積される脂肪のこと。

 なかでも筋肉内に蓄積する脂肪は「筋内脂肪」と呼ばれ、加齢や肥満、運動不足によって増加し、筋機能や運動機能を低下させることが分かっている。また、2型糖尿病の原因となるインスリン抵抗性を引き起こすことが知られている。

 「レジスタンストレーニング」は筋肉に負荷をかけて行う運動で、筋量や筋力を増やすために行ういわゆる「筋トレ」のこと。

 そのうち「自重負荷レジスタンストレーニング」は、ダンベルやマシンなどを使わず、自分の体重を使って筋肉に負荷をかけるトレーニングだ。

 研究グループは、手軽にできるウォーキングや、自宅でできる「自重負荷レジスタンストレーニング」など、日常生活に取り入れられる運動によって「筋内脂肪」をどれくらい減らせるかを検証した。

■ 家庭でも行いやすい「貯筋運動」

 健康・体力づくり事業財団は、家庭でも行いやすい自重負荷レジスタンストレーニングとして、「貯筋運動」を提唱している。
 貯筋運動は、▽いす座り立ち、もも上げ、▽カーフレイズ(ふくらはぎの筋トレ) 、▽立位での横への脚上げ、▽上を向いて寝た状態での上体起こしなどで構成される。
 大腿四頭筋や腓腹筋、腹直筋など、体を支える重要な筋肉を鍛えることができる。

貯筋運動 立位 アップ

週2~3回の運動で効果がある
 試験には2014~2015年に行った運動教室に参加した高齢者計64人が参加した。参加者を、ウォーキングを実施する群(33人、平均年齢72歳)と、ウォーキングに加えてレジスタンス運動を実施する群(31人、平均年齢73歳)に分け、自宅で10週間のトレーニングを実施してもらった。

 ウォーキングは、1回30~60分、週2~3回、1日の平均歩数1万歩を目標とした。レジスタンス運動は、椅子座り立ち、太もも上げ、つま先立ち、脚の横上げ、上体起こし(腹筋運動)の5種類から構成されていた。

 これらの運動の動画が保存されたDVDを高齢者に配布。リズムに合わせて、各項目45回ずつの反復を1セットとし、週2~3セットの実施を目標とした。

 超音波断層装置で筋肉部分の濃淡を示す輝度(筋内脂肪)、筋肉の厚み(筋量)、皮下脂肪の厚み(脂肪量)を測定した。

 さらに、運動機能測定として、腹筋運動、日常生活に関連する機能、下肢筋力指標、歩行能力、持久力の測定を行った。これらの測定は、トレーニング開始前と後の2回行なった。
ウォーキング+レジスタンス運動で「筋内脂肪」がより減少
 その結果、10週間のトレーニングによって、皮下脂肪量と筋量には変化がみられなかったが、「筋内脂肪」は両群で低下し、ウォーキング+レジスタンス運動群ではより顕著に改善した。

 さらに、「筋内脂肪」を示す指標の変化と運動機能、筋量の変化に相関関係がみられた(筋量の変化との相関係数:ウォーキング+レジスタンス群r=-0.35、P <0.05;ウォーキング群r=-0.46、P <0.05)。これは、筋量が増えた人ほど「筋内脂肪」が減少していたことを示している。上体起こしなどの運動機能の一部にも改善がみられた。
自宅で手軽にできる運動で効果を得られる
 これまでは「筋内脂肪」を減少させるためには、専用のトレーニングマシンを使用した高い負荷での筋力トレーニングが効果的だと考えられていたが、こうしたトレーニングは専門のマシンや専門家の助けが必要となり、高齢者などが家庭で行うのは無理があった。

 今回の研究では、日常生活の中で、より「簡単」で「汎用性が高い」運動でも、効果的なトレーニング方法となることが実証された。

 手軽にできるウォーキングと、筋量の増加を導くレジスタンストレーニングを並行して行うと、2型糖尿病の危険因子である「筋内脂肪」を減少でき、筋肉量も増やせることが明らかになつた。

 「近年、高齢者のレジスタンストレーニングの実施は、サルコペニアの改善策のひとつとして勧められています。これに加えて、筋内脂肪を減らし、筋肉の質を改善するという観点からも、レジスタンストレーニングの有用性は注目されます。高齢者の健康を維持・増進させる手軽で効果的な方法として、社会に大きく貢献できます」と、研究者は述べている。
名古屋大学総合保健体育科学センター
Effects of 10-week walking and walking with home-based resistance training on muscle quality, muscle size, and physical functional tests in healthy older individuals(European Review of Aging and Physical Activity November 2018年11月19日)
[Terahata]

「保健指導リソースガイド」に関するニュース

2019年03月26日
【レポート】スローカロリー研究会 第5回年次講演会 ゆっくり吸収されるカロリーを具体的に活用
2019年03月20日
運動は若さを保つための最善の策 40歳以降は筋肉を増やす運動が必要
2019年03月20日
糖尿病リスクはBMIが22以上から上昇 若い頃からの体重管理が重要 順天堂大学
2019年03月20日
保健指導と介護予防を一体的に実施 フレイル対策を強化 厚労省が方針
2019年03月20日
うつ病の発症原因は「仕事の不満足」 回復では「職場ストレス」が重要 職場でのヘルスマネジメント戦略
2019年03月20日
長時間労働が心筋梗塞リスクを1.6倍に上昇 日本人1.5万人を20年調査
2019年03月20日
歯周病がCOPDの引き金に 歯周病の人は発症リスクが4倍に上昇
2019年03月13日
「睡眠負債」は週末の寝だめでは解消できない 睡眠を改善するための6ヵ条
2019年03月13日
認知症リスクは糖尿病予備群の段階で上昇 体と心を活発に動かして予防
2019年03月13日
994万人が高血圧 脂質異常症は221万人 糖尿病は過去最多の329万人 【2017年患者調査】

最新ニュース

2019年03月26日
【レポート】スローカロリー研究会 第5回年次講演会 ゆっくり吸収されるカロリーを具体的に活用
2019年03月25日
【新連載】住み慣れた地域で最期まで暮らすことを目指した「暮らしの保健室」~医療・看護・介護を通じた住みよいまちづくりの試み~
2019年03月25日
地域保健・健康増進事業報告②~健康診査についてなど「健康増進事業」の概要
2019年03月22日
2017年度 特定健診の実施率は53.1%、特定保健指導の終了者は19.5% 目標との隔たり埋まらず
2019年03月22日
【健やか21】春本番、自転車の思わぬ事故に注意! ~安全のために知っておきたいポイント~
2019年03月20日
運動は若さを保つための最善の策 40歳以降は筋肉を増やす運動が必要
2019年03月20日
糖尿病リスクはBMIが22以上から上昇 若い頃からの体重管理が重要 順天堂大学
2019年03月20日
保健指導と介護予防を一体的に実施 フレイル対策を強化 厚労省が方針
2019年03月20日
うつ病の発症原因は「仕事の不満足」 回復では「職場ストレス」が重要 職場でのヘルスマネジメント戦略
2019年03月20日
長時間労働が心筋梗塞リスクを1.6倍に上昇 日本人1.5万人を20年調査
2019年03月20日
歯周病がCOPDの引き金に 歯周病の人は発症リスクが4倍に上昇
2019年03月19日
地域保健・健康増進事業報告①~母子保健など「地域保健事業」の概要
2019年03月14日
【健やか21】募集開始!周産期メンタルヘルスと児童虐待予防セミナー
2019年03月14日
保健師の職業紹介番組を放映(テレビ神奈川、3/17)
2019年03月14日
「産業保健プロフェッショナルカンファレス」主催者変更のお知らせ
2019年03月13日
「睡眠負債」は週末の寝だめでは解消できない 睡眠を改善するための6ヵ条
2019年03月13日
認知症リスクは糖尿病予備群の段階で上昇 体と心を活発に動かして予防
2019年03月13日
【新連載】LGBTについて、学校保健分野・地域保健分野・産業保健分野で考える
2019年03月13日
994万人が高血圧 脂質異常症は221万人 糖尿病は過去最多の329万人 【2017年患者調査】
2019年03月13日
日本人妊婦で「静脈血栓塞栓症」が増えている 女性でも珍しいくない病気に エコチル調査
2019年03月13日
高齢者の多くが複数の病気を併発 医療費と介護費が増加 保健指導が必要
2019年03月12日
アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 動画を公開
2019年03月12日
【参加申込受付中】産業保健師会 2019年度 第1回研修会「産業保健師活動のあり方の本質に迫る―今どきの職場不適応の背景とその対応―」
2019年03月08日
睡眠に不満がある人は9割超―求められる十分な睡眠時間と質の高い眠り
2019年03月07日
【取材】多職種連携でも必要な「保健師の技術の可視化」を考える【平成30年度 日本保健師連絡協議会】
2019年03月07日
【健やか21】世界自閉症啓発デー2019(4/6東京) 参加申込み受付中
2019年03月06日
太っていなくても糖尿病やメタボに 日本人は少しの体脂肪増加や運動不足で異常が
2019年03月06日
糖質に着目した「1:1:1お弁当ダイエット法」 主食・主菜・副菜を最適に
2019年03月06日
大阪府が「健活10」を開始 健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標 1人ひとりの主体的な健康づくりを促す
2019年03月06日
認知症の発症を血液検査で予測 100%の的中率で判別に成功 長寿研
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,762 人(2018年12月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶