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乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」

 理化学研究所は、乳がんの手術中に摘出した組織で有機合成反応を行い、乳がん細胞の有無に加えて、がんのさまざまな種類(形態)を、5分間という従来よりも大幅に短い時間で、簡易に識別できる診断技術を開発した。
 乳がんの切除範囲を迅速・簡易・安価に判断することで、手術でのがんの取り残しを減らせる。この診断技術は、従来の手術中の病理学的診断法に代わる、新たな世界基準になる可能性がある。
乳がんの迅速・簡易・安価な手術中がん診断技術を開発
 理化学研究所は、乳がんの手術中に摘出した組織で有機合成反応を行うことにより、乳がん細胞の有無だけでなく、がんのさまざまな種類(形態)を従来よりもはるかに短い時間で、簡易に識別できる診断技術を開発した。

 乳がんは、日本人女性で最も患者数の多いがんで、12人に1人が罹患する。現在、乳がん切除手術では、乳房の膨らみを残して乳腺を部分のみ切除する「乳房温存手術」が主流になっている。

 この手術では、手術中に端の乳腺組織により顕微鏡で診断を行い、がんが残っていないかどうかを確認し、がんが残っていた場合には、さらに乳腺組織を追加して切除することで、できるだけ乳がんを取り残さないよう治療が行われる。

 また、退院後に最終的な顕微鏡検査(病理組織診断)で切除断端にがんが残っていた場合には、再度切除手術を行うことになり、乳がん手術の断端検査を厳密に行うことはとても重要だ。

 現在利用されているヘマトキシン・エオジン手法(HE染色法)と呼ばれる病理学的診断では、1回の検査に40分程度を要する。この間、全身麻酔の状況の患者と執刀医は結果を待つ必要があり、検査をする病理医の数も少ないことも課題になっている。

 そのため、患者の手術中の負担を減らし、短時間で簡便にできる迅速術中診断技術の開発が求められていた。

関連情報
5分で乳がんの術中診断ができる
 研究グループは、がん細胞で「アクロレイン」が多量に発生していることに着目。「アクロレイン」は、アルデヒド基が二重結合と炭素--炭素結合を介してつながった構造をもつ化合物のうち、アルデヒド基につながる二重結合がすべて水素で置換されている分子で、生体内のさまざまな分子と反応し、毒性が非常に強い。

 乳がん手術で摘出した生の組織に、細胞で発生する「アクロレイン」と、蛍光基をもつ「アジドプローブ」と有機合成反応させることで、がん細胞を選択的に蛍光標識できるかを調べた。その結果、手術中に患者から摘出した乳がんの断端をアジドプローブ溶液に5分間浸すだけで、97%の高い確率でがん細胞を判別できることが判明した。

 さらに、7種類の乳がん(浸潤がん、非浸潤がん、増殖病変、小葉がん、乳頭腫、微小浸潤がん、微小非浸潤がん)を、それぞれアジドプローブ溶液に5分間浸した後、顕微鏡で観察したところ、これらのさまざまながんの種類(形態)を確認できることも分かった。
 この結果は、従来の病理学的診断で用いられるHE染色法で得られた画像とほぼ同じ結果だが、アジドプローブ染色法を用いる方法では5分で同じ画像を得られ、圧倒的に短時間で簡便に診断ができる。

 同研究所では今後、乳がん診断検査の臨床研究を行い、多くの乳がん手術現場でこの技術が活用できるかを検証する。さらに、AI(人工知能)の画像診断技術とを併用することで、乳がんの切除手術の効率化を高めることも視野に入れている。

 「今後の臨床研究で、この技術が世界基準となり、専門的な技術や病理医の主観を必要としない技術が開発されれば、乳がんに含め、あらゆるがん手術の現場を改革できる可能性がある」と、同研究所では述べている。

 研究は、理研開拓研究本部田中生体機能合成化学研究室の田中克典主任研究員、アンバラ・プラディプタ基礎科学特別研究員、盛本浩二客員研究員、大阪大学大学院医学系研究科の多根井智紀助教、野口眞三郎教授、カザン大学のアルミラ・クルバンガリエバ准教授らの国際共同研究グループによるもの。
理化学研究所開拓研究本部田中生体機能合成化学研究室
Cascade Reaction in Human Live Tissue Allows Clinically Applicable Diagnosis of Breast Cancer Morphology(Advanced Science 2018年11月27日)
[Terahata]

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