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メタボリックシンドロームの「未病」を解明 生体の「揺らぎ」に着目し先制医療につなげる

 メタボリックシンドロームの「未病」を、生体の「揺らぎ」に着目した理論を使い科学的に解明するのに成功したと、富山大学は発表した。未病に対する新たな先制医療戦略の構築につながる成果だ。
生体信号の揺らぎに着目
 研究は、富山大学大和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野の小泉桂一准教授、同情報科学分野の奥牧人特命准教授、同消化管生理学分野の門脇真教授、同大齋藤滋学長および東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構の合原一幸教授らのグループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載された。

 「未病」とは、疾患の発症前や超早期において予防的・先制的医療介入を行うこと。生活習慣病の発症や重症化を未然に防ぐ手段の確立が、社会で強く求められている。

 中国最古の医学書「黄帝内経」には、未病の時期を捉えて治すことが最高の医療であると記載されている。現代の日本でも、未病は重要な政策課題と位置付けられている。

 2017年に閣議決定された内閣府の「健康・医療戦略」には、「健康か病気かという二分論ではなく、健康と病気を連続的に捉える未病の考え方などが重要になると予想され(中略)新しいヘルスケア産業が創出されるなどの動きも期待される」と記載されている。
メタボ発症以前に「揺らぎ」が増加
 しかし、これまで未病という考え方は、経験知にもとづく概念的なものとされ、科学的には証明されていなかった。そこで研究グループは、未病を科学的かつ定量的に検出するため、生体信号の「揺らぎ」に着目した数学理論である動的ネットワークバイオマーカー理論(DNB理論)を用いて検証を行った。

 この理論では、健康な状態から病気の状態へと遷移する直前において、一部の互いに関連した生体信号の揺らぎが大幅に増加することが解析によって予測されている。

 つまり「揺らぎが大幅に増加した時点=未病の状態」と考えることができる。研究グループはこれにもとづき、未病を生体信号データの解析を介して定量的に直接検出することを考えた。

 まず、メタボリックシンドロームを自然発症するマウス(TSODマウス)を飼育し、3~7週齢まで1週間おきに、脂肪組織における遺伝子の発現量をマイクロアレイ法により網羅的に測定。次に、DNB理論に基づくデータ解析を行い、測定期間内で揺らぎの増加した時点の有無を調べた。

 その結果、マウスがメタボリックシンドロームを発症する以前の5週齢の時点において、147個の遺伝子の発現量の揺らぎが大きく増加していることを明らかにした。
予防・先制医療でもタイミングが重要
 研究では、メタボリックシンドロームへと至る過程で「揺らぎ」をみることで、未病を検出するのに成功した。

 さらに、この理論がこれまで主な対象としてきた急性疾患だけでなく、メタボリックシンドロームのような緩やかな時間変化をたどる疾患にも応用可能であることも明らかになった。アルツハイマー病などの認知症、サルコペニア、フレイルなどにも応用できる可能性があるという。

 研究成果により、慢性疾患の予防・先制医療でもタイミングが重要となる場合があることが判明。今後、未病に対する効果的な予防・先制医療介入を考える上で役に立つと期待される。

 研究グループではすでに、富山大学から部局横断的に8部局(医学部、和漢研、附属病院、工学部、薬学部、理学部、都市デザイン学部、人間発達学部)と東京大学生産技術研究所/ニューロインテリジェンス国際研究機構の研究グループが参加する重点研究領域プロジェクトを立ち上げ、未病に関する研究を推進している。
富山大学大和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野
東京大学生産技術研究所
Identifying pre-disease signals before metabolic syndrome in mice by dynamical network biomarkers(Scientific Reports 2019年6月24日)
[Terahata]

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