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「治療と仕事の両立」は困難と6割超が回答 多様な働き方を選択できる社会へ 2018年版厚生労働白書

 厚生労働省は「2018年版厚生労働白書」を公表した。テーマは「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会」。
 「障害や病気を抱える人への配慮や支援ができる職場作りを進め、すべての人が活躍できる社会」を作ることを目指している。
障害や病気のある人に支援を
 「厚生労働白書」は毎年、厚生労働行政の最新状況や以後の課題・見通しなどを広く国民に伝えることを目的に作成される。

 2018年版のメインテーマは、「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」。

 総務省が公表した2017年度人口動態調査によると、日本の人口は10年連続で減少し、減少幅は過去最大の43万人になった。

 15~64歳の生産年齢人口の大幅な減少も見込まれており、経済成長を維持するために、社会保険料の負担増を抑え、働き方改革で労働の効率を高めるなどの取り組みが課題となっている。

 白書では、働き方改革など働く意欲のある人を後押しする環境整備が必要として、「多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方1人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指すべき」としている。

 障害や病気のある人に対しては、(1)地域や社会から孤立している人も少ないくないことから、そうした人を早期から積極的に把握する必要があると指摘。

 さらに、(2)関係機関の連携・協働により就労支援をする、(3)治療と仕事の両立支援を推進する、(4)段階的自立に向けた包括的・継続的な支援をする――という取組みを求めている。
有業者数に占める通院しながら働く人数の割合 有業者の約3割が通院しながら働いている。その人数は年々増加している。
治療と仕事の両立を支援している好事例を紹介
 厚労省は白書の作成にあたって、基礎資料を得るために2018年2月にアンケート調査を実施した。

 調査では、地域・職場での支え合いや就労に関する質問について、回答者を「(1)障害や病気を有する人」、「(2)身近に障害や病気を有する人がいる人」、「(3)その他の人」の3類型に分類し、それぞれの類型ごとに1,000人、合計3,000人から回答を得た。

・ 地域・職場で、障害や病気で困っている人に対する意識

 地域や職場で障害や病気を有していて、困っている人がいたら助けたいと思うかを聞いたところ、「積極的に助けたいと思う」「助けたいと思う」と答えた人の合計は、(1)では67.3%、(2)では76.9%に上った。

 地域や職場で障害や病気で困っている人がいたら助けたいと思いつつも、実際に過去1年間で助けた経験がない人が多いことが示された。

・ 治療と仕事の両立や、障害を有しながら仕事をすることに対する意識

治療と仕事を両立すること、または障害を有しながら仕事をすることは困難かを尋ねたところ、困難であると考える人の割合が、(1)で66.3%、(2)で72.5%に上った。

 困っている人を助けるような地域活動の展開状況への所感と、相談機関への相談希望についてクロス集計すると、いずれの類型においても、地域活動が「活発に行われていると思う」と回答した群で、「相談したいと思う」と回答した人の割合が85.7%と高かった。地域活動の活発化が相談しやすい環境につながる可能性がある。

・ 職場に障害や病気を有する人がいる場合の影響

 「職場に障害や病気を有する人(本人を含めない)がいる」と回答した人に対し、職場への影響を尋ねたところ、「仕事の進め方について職場内で見直すきっかけになった」が最多で、「各自が自分のライフスタイルや働き方を見直すきっかけになった」「職場の両立支援(休暇制度やテレワークスなど)に対する理解が深まった」と続く。

 一方で、身近に障害や病気を有する人がいる人からは、「仕事の負担が重くなった」という声も聞かれた。

 白書では、障害や病気を有する人などを支える現場の取組み事例として、イオンスーパーセンター、ソニー・太陽、進和学園しんわルネッサンス、武蔵野千川福祉会チャレンジャーなどの障害者雇用・障害者就労支援などを紹介。

 さらに、治療と仕事の両立支援・健康づくりの好事例として大鵬薬品、ティーペック、松下産業、花王などを、社会活動を行うのに困難を有する人などへの支援の事例として、釧路社会的企業創造協議会、滋賀県働き・暮らし応援センターなどを紹介している。
企業における治療と仕事の両立に係る取組の状況 治療と仕事の両立に係る取組のある事業所は約5割。
「年金は老後生活の柱」と強調
 公的年金だけでは老後の資金は2,000万円不足するとした金融庁の報告書が波紋を広げる中、白書では「年金給付が国民の老後生活の柱としての役割を担っている」と明記した。

 年金制度に対する国民の不安払拭に向け、厚労省として決意をあらためて示した格好だ。

 公的年金の基本的な考え方は、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないよう、現役世代の負担能力を示す賃金が変動する範囲内で年金額を改定しようというものだ。

 白書によると、被保険者の種別ごとにみると、いわゆるサラリーマンや公務員等である第2号被保険者が4,266万人と全体の約6割を占めており、学生や自営業者等である第1号被保険者やいわゆる専業主婦(夫)等である第3号被保険者はそれぞれ1,575万人、889万人となっている。

 しかし、賃金が低下する場合には、「現役世代の賃金に対する年金受給者が受け取る年金の比率が従来よりも上昇する一方で、現役世代が将来受け取る年金の比率は従来よりも低下する」ことが、財政検証の結果により明らかになっている。

 このため、将来年金を受け取る世代の給付水準を確保する観点から、賃金が物価よりも低下する場合に、賃金の低下に合わせて年金額を改定するようルールを見直す方針を示した。
高齢者には「自助努力」も求める
 高齢者世帯に関しては、収入の約7割を公的年金などが占め、約5割を超える世帯が公的年金による収入だけで生活している。

 「私的年金の普及・拡大」をはかり、「私的年金の普及・拡大と制度の適切な運営を図るとともに、高齢期に向けた個人の継続的な自助努力の支援に取り組んでいくこととしている」ことを記した。

 厚労省のウエブサイトから、白書の全体や、以下の章単位でPDF版をダウンロードできる。

第1部 障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に

第1章 障害や病気を有する者などの現状と取組み 第2章 自立支援に関する国民の意識調査
第3章 障害や病気を有する者などを支える現場の取組み事例
第4章 包摂と多様性がもたらす持続的な社会の発展に向けて

第2部 現下の政策課題への対応

第1章 子どもを産み育てやすい環境づくり 第2章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など
第3章 女性、若者、高齢者等の多様な働き手の参画
第4章 自立した生活の実現と暮らしの安心確保
第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
第6章 医療関連イノベーションの推進
第7章 国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現
第8章 健康で安全な生活の確保
第9章 障害者支援の総合的な推進
第10章 国際社会への貢献
第11章 行政体制の整備・情報政策の推進
[Terahata]
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