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糖質の多い甘い飲料が肥満・メタボを悪くする 内臓脂肪が増え脂質代謝のリズムも乱れる

 糖質が多く含まれる高カロリー飲料を飲み過ぎると、2型糖尿病のリスクが高まるという研究が発表された。糖質の摂り過ぎにより、中性脂肪もたまりやすくなる。「飲み過ぎにはくれぐれも注意が必要です」と専門家は指摘している。
糖質の多い食品は血糖値を上げる
 糖尿病になると、血糖値を下げるインスリンが不足したり、うまく作用しなくなってしまい、血糖値が高い状態が続くようになる。糖質の多い食品を多く摂取すると、血糖は上がりやすくなる。とくに甘いものなど単純糖質を含む食品は、急激な血糖上昇の原因になる。

 糖質が多く含まれる高カロリー飲料を飲み過ぎると、2型糖尿病のリスクが高まるという研究が発表された。高カロリー飲料を飲むと、内臓脂肪が増えやすくなることも確かめられた。飲み過ぎには注意したい。

 ジュースやコーラなど清涼飲料や菓子類などの甘味の強い加工食品の多くに「果糖ブドウ糖液糖」が甘味料として使われている。コーンスターチ(トウモロコシから作られたデンプン)などから製造される果糖ブドウ糖液糖は、果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)を主成分とする異性化糖。工業的に安定して生産でき、価格が安いので、多くの食品に広く用いられている。

 ごはんやパン、穀類、いも、カボチャなどの野菜に含まれる炭水化物が複合糖質であるのに対し、フルクトースやグルコースは吸収されやすい単糖類だ。フルクトースは糖の中ではもっとも甘味が強く、多量を摂り続けると体重増加や肥満につながりやすいと懸念されている。

関連情報
高カロリー飲料が糖尿病リスクを上昇
 ハーバード公衆衛生大学院の研究によると、ジュースやコーラなどの高カロリーの清涼飲料を多く飲む人は、2型糖尿病のリスクが高い。

 研究チームは、3件の長期研究――看護師健康研究(Nurses' Health Study)、看護師健康研究II(Nurses' Health Study II)、医療従事者追跡研究(Health Professionals' Follow-up Study)に参加した19万2,000人の男女の22〜26年分のデータを解析した。

 その結果、高カロリーの飲料を1日に約114g(4オンス)、4年間飲み続けると、2型糖尿病の発症リスクが16%上昇することが分かった。ジュースやコーラは350mL(12オンス)で売られることが多く、この3分の1の量で糖尿病リスクは上昇することになる。

 糖尿病のリスクは100%フルーツジュースであっても上昇するという。一方、1日に1杯の高カロリー飲料を、水や、無糖のコーヒーやお茶に置き換えると、糖尿病リスクは2~10%減少した。

 米国心臓学会(AHA)は、高カロリーの清涼飲料を1日に85g(3オンス)未満に抑え、摂取カロリーが1週間に450kcalを超えないようにすることを勧めている。これは週に350mL入りの缶2本に相当する。
高カロリー飲料は内臓脂肪も増やす
 高カロリー飲料を飲み過ぎると、内臓脂肪が増えるという研究も発表されている。内臓脂肪が過剰になると、ホルモン分泌に異常があらわれ、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。これは2型糖尿病と心臓病のリスクを高める原因になる。

 米国で実施されている「フラミンガム心臓研究」は、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるための大規模研究。米国国立心臓・肺・血液研究所の研究チームは、1,003人(平均年齢45歳)の参加者を対象に、6年間追跡して調査した。参加者は内臓脂肪の変化を測定するためにCTスキャンによる検査を受けた。

 その結果、高カロリー飲料を飲む頻度の高い人ほど、内臓脂肪が増えることが明らかになった。内臓脂肪の体積の増加は、高カロリー飲料を月に1回または週に1回未満しか飲まない人では649cm³、1週間に1回または1日1回未満の人では707cm³、毎日1杯以上飲む人では852cm³になった。

 「高カロリー飲料の摂取量の増加と、内臓脂肪の増加との間に、直接的な相関関係があることが明らかになりました。食事ガイドラインにしたがい、高カロリー飲料の飲み過ぎには注意が必要です」と、フラミンガム研究に携わったキャロライン フォックス氏は言う。
糖質を取り過ぎると肝臓の脂質代謝のリズムが乱れる
 食品によって体内のリズムは変化する。名古屋大学のグループによる研究では、糖質を取り過ぎると、肝臓の脂質代謝のリズムが乱れて、中性脂肪を蓄積しやすくなることが解明された。

 2型糖尿病や高血圧の前段階であるメタボリックシンドロームの主な原因は、食べ過ぎや運動不足などだが、糖質の取り過ぎも影響している。世界保健機関(WHO)は1日の糖質の摂取量を摂取エネルギー総量の5%未満にすることを推奨している。

 名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループは、ラットの実験で、糖質の取り過ぎにより脂質代謝異常(脂肪肝、高中性脂肪)を発症するメカニズムを詳しく調べた。

 その結果、糖質(ショ糖)の取り過ぎにより、肝臓の脂質代謝の概日リズムが乱され、中性脂肪が蓄積されやすくなることを解明した。ショ糖を構成する果糖とブドウ糖は、わずかな構造上の違いがあるだけにもかかわらず、代謝におよぼす影響が大きく異なり、それに体内時計が関係していることも分かった。

 脂質が過度に合成されると、肝臓に中性脂肪がたまりやすくなる。この脂肪肝が進行すると非アルコール性の脂肪性肝炎になり、さらに進行すると肝硬変などに移行しやすくなる。また、脂肪肝はインスリン抵抗性を引き起こす。

 小田准教授らは「デザートは別腹と言うように甘味には特別な魅力がある。ショ糖や果糖の取り過ぎによるメタボリックシンドロームの予防への手がかりになると期待される」としている。
Drinking more sugary beverages of any type may increase type 2 diabetes risk(ハーバード公衆衛生大学院 2019年10月3日)
Changes in Consumption of Sugary Beverages and Artificially Sweetened Beverages and Subsequent Risk of Type 2 Diabetes: Results From Three Large Prospective U.S. Cohorts of Women and Men(Diabetes Care 2019年9月)
Sugar-sweetened drinks linked to increased visceral fat(米国心臓学会 2016年1月11日)
Sugar-Sweetened Beverage Consumption Is Associated With Change of Visceral Adipose Tissue Over 6 Years of Follow-Up(Circulation 2016年1月11日)
名古屋大学大学院生命農学研究科
Circadian rhythm-dependent induction of hepatic lipogenic gene expression in rats fed a high-sucrose diet(Journal Of Biological Chemistry 2019年9月3日)
[Terahata]
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