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高齢者が安全で健康に働ける職場の実現を目指して 有識者会議が報告書をとりまとめ

 厚生労働省の「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」(座長:城内博 日本大学理工学部特任教授)は、このほど報告書を公表した。
 働く高齢者が増える中、その特性を踏まえたうえで、安全で健康に働ける職場の実現に向けて事業者等が取り組むべき事項をとりまとめたもの。本年度中にガイドラインを策定する。
「65歳を過ぎても働きたい」と回答した人は半数以上
 総務省の労働力調査によると、60歳以上の雇用者数は商業や保健衛生業など第三次産業を中心に、過去10年間で1.5倍に増加。

 35~64歳の男女を対象とする内閣府の意識調査では、60歳を過ぎても働きたいと回答した人が81.8%、65歳を過ぎても働きたいと回答した人が50.4%となっており、今後も高齢者の就労は増えていくことが見込まれている。

 一方、高年齢層は転倒災害、墜落・転落災害の発生率が高く、若年層に比べて相対的に高い。実際、労働災害による休業4日以上の死傷者数を見ると、60歳以上の労働者の占める割合は2008年には18%だったのに対し、2018年は26%と増加傾向にある。

 また年齢が高くなるほど休業見込み期間が長くなる傾向もある(いずれも「労働者死傷病報告」より)。

 そのため有識者会議では年齢や性別、経験期間が労働災害の発生率に与える影響について分析。高齢者の安全衛生対策に積極的に取り組んでいる企業担当者や関連分野の有識者にヒアリングも実施し、働く高齢者の安全と健康に関して幅広く検討を行ってきた。
事業者はフレイルやロコモなどの高齢期の特徴への考慮が必要に
 報告書ではまず、働く高齢者をめぐる安全と健康に関する現状と課題を整理。高齢者の就業や健康、労働災害発生状況などのほか、健康経営やコラボヘルスなど企業の取り組みの現状についてまとめた。

 今後に向けた課題と対応の方向性については、多様な就業ニーズをもつ高齢者が安心かつ安全に働ける環境が必要だと提言。就業構造のサービス化、ホワイトカラー化が進展していく中で、高齢者についても管理・事務部門における安全衛生対策が今後、重要になってくるとした。

 一方、高齢者になってからこれまで経験のない業種や業務にキャリアチェンジして就労するケースも増えてくることから、「業務に不慣れな者が多くなることに留意が必要である」と注意を喚起。事業者にはフレイルやロコモティブシンドロームといった高齢期に表れてくる特徴への考慮も求めた。

 また高齢者の労働災害防止対策を進め、安心して安全に働き続けられる職場づくりを進めることは「人材確保に課題を抱える中小企業・小規模事業者等における熟練した人材の確保・定着に資するものであるとともに、経済全体の生産性向上にも寄与する可能性もある」と提言。

 そのうえでガイドラインに盛り込むべき事項として、事業者や労働者に求められる項目をそれぞれ挙げた。

 厚生労働省はこの報告書を踏まえ、本年度中に高年齢労働者の安全と健康の確保に関するガイドラインを策定し、次年度に向けてその普及促進を図っていく方針。

 また令和2年度からは、ガイドラインに沿って高齢者の安全・健康の確保に取り組む中小企業への助成(競争的補助金)を実施する予定だという。

[yoshioka]
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