ニュース

健診結果から冠動脈疾患・脳卒中の10年以内の発症を予測するスコアを開発 国立循環器病研究センター

 国立循環器病研究センターは、吹田研究のデータから、都市部での地域住民を対象とした冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコア(吹田心血管病スコア、吹田CVDスコア)を開発した。
10年以内のCVD発症を予測 国民の90%を占める都市部住民が対象
 脳心血管病は、世界全体で最大の死亡原因となっており、その対策が急務となっている。

 予防ツールとして、欧米では、冠動脈疾患の発症を予測するリスクスコアだけでなく、冠動脈疾患に脳卒中を加えた脳心血管病の発症を予測するものも開発され、すでに活用されている。

 しかし、日本では欧米と異なり、脳心血管病の発症全体に占める脳卒中の割合が冠動脈疾患より高く、欧米のリスクスコアをそのまま当てはめても正確な予測はできない。また、日本でも脳心血管病のリスクスコアは開発されているが、総人口の90%以上を占める都市部の住民(2015年国勢調査)を対象としたものはなかった。

 そこで国立循環器病研究センター(国循)は、国民の現状により近い吹田研究のデータを用いて、冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコア「吹田CVDスコア」を開発した。

 「吹田研究」は、国循が1989年より実施しているコホート研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)で、第1次コホートは1989年から、第2次コホートは1996年から実施されている。

 吹田研究の対象となっているのは、大阪府吹田市の住民基本台帳からランダムに抽出した吹田市民。全国民の約90%以上を占める都市部の住民を研究対象としているのが特徴で、その結果は国民の現状により近い傾向があると考えられる。
血圧、コレステロール、糖尿病、尿蛋白などから得点を算出
 研究グループは、吹田研究の対象者(30歳~79歳、男性:3,080人、女性:3,470人)を対象とした、冠動脈疾患・脳卒中の発症を2013年12月まで追跡したデータから、10年以内の冠動脈疾患・脳卒中発症確率を予測するスコアを開発。

 性別・年齢・血圧・Non-HDL-C/LDL-C、HDL-C、喫煙、糖尿病、尿蛋白(+1以上)という因子から得点から算出し、36点以上では冠動脈疾患・脳卒中発症確立は26%(心電図あり)、25%(心電図なし)となっている。
吹田心血管病スコア(吹田CVDスコア)

10年以内に冠動脈疾患・脳卒中が発症する確率
尿タンパクや心房細動の有無、心電図所見などを含めた予測も可能
 古典的な循環器疾患の危険因子だけでなく、尿タンパクや心房細動の有無、心電図所見(左室肥大)などを含めた予測も可能だという。さらに、各予測因子のカテゴリーの点数を合計することで、発症確率を予測することができる。

 「吹田CVDスコアは、実際の健康診断や診療の場面で一般的に行われる項目を用いて、容易に計算可能であり、冠動脈疾患・脳卒中の早期予防に広く活用できる。また、脳心血管病に関係するガイドラインの策定などに貢献することも期待される」と、研究グループは述べている。

 なお、このスコアは評価に用いた検査所見などをもった一般的な人の発症確率を示して、診療の補助に使うのが目的であり、個人の診断機器ではないとしている。

 なお、PCやスマートフォンで簡便に使えるアプリなどへの活用も期待されているが、現時点では検討中だという。

 研究は、国立循環器病研究センターOIC循環器病統合情報センター・中井陸運室長らの研究グループによるもの。研究成果は、日本動脈硬化学会の専門誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に掲載された。

 「吹田スコアによる冠動脈疾患発症確率と脂質管理目標値」を簡便に求められるアプリ。

国立循環器病研究センターオープンイノベーションセンター
Development of a Cardiovascular Disease Risk Prediction Model using the Suita Study, a Population-Based Prospective cohort study in Japan(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 2020年2月6日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶