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【新型コロナ】日本人はいま何を不安に感じているか 求めるのは「安定した社会」 100の国や地域で国際調査を実施

 慶應義塾大学などは、「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」の日本版第1波調査の結果を発表した。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を経験した人や、ふだんから不安を感じやすい人、幸福感の低い人で、COVID-19に関する不安(緊張、落込み、孤独感など)が大きいことが明らかになった。
 今の日本人の願いとして、「コロナに対する不安を減らして、ともに安定した社会をつくること」が浮かび上がった。
COVID-19の経験や不安を100の国や地域で調査
 調査は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する、日本人の経験や不安、政府・地方自治体の首長・医療関係者・メディアへの信頼、国・社会・経済の未来予測などを調査したもの。

 この調査を始動したのは、「世界価値観調査協会」のクリスチャン・ヴェルツェル氏ら。同調査はおよそ100の国や地域で継続的に実施されている。

 その一環として日本チームは、緊急事態宣言下の地域(北海道・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・大阪府・京都府・兵庫県)と解除下の地域に分かれた2020年5月中旬に、全国居住の成人3,000人を対象にインターネット調査を実施した。

 研究は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の谷口尚子教授、同訪問研究員のプラメン アカリースキ博士、名古屋商科大学ビジネススクールのパク ジュナ准教授、電通総研によるものだ。
今後の感染の可能性や国・経済の先行きに対する強い不安
 この調査で分かった主な内容は次の通り――。

(1) 健康・仕事・家庭に対するCOVID-19の影響を強く経験したのは、緊急事態宣言下の都道府県の居住者や若年層。

 COVID-19に関する経験(コロナ関連経験)として多かったのは、「感染を疑う軽い症状を経験」(5.1%)、「仕事を失った」(3.2%)、「パートタイムの仕事を減らされた」(9.5%)、「テレワークで仕事をした」(19%)、「(学校や幼稚園などが休みなので)家で自分の子どもの世話をした」(9.9%)などだった。

 男性は自身や親しい人の感染や症状の経験が多い一方、女性は失職・労働時間短縮・家庭内育児の経験が多い傾向がみられた。

 若年層で健康・仕事への影響がやや大きい傾向にあり、テレワーク化も進んでいる。緊急事態宣言下の都道府県居住者の方が解除地域居住者より、より強く影響を経験している。

属性別:新型コロナウイルス感染症の経験・影響(%)
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

(2) とくに不安が大きかったのは、COVID-19関連の経験がある人、ふだんから不安を感じやすい人、幸福感の低い人だった。

 5月前半の時点で、6割が「不安・緊張」を、4割が「心配」「落ち込み」「意欲減退」を、3割が「孤独感」を感じていた。さらに、COVID-19危機下における「不安感・落ち込み・孤独感」には個人差があることが分かった。

 この5項目に対する回答を、「まったく煩わされなかった=1」「数日間煩わされた=2」「1週間以上煩わされた=3」「ほとんど毎日煩わされた=4」に振り分けて合計したところ(最小5~最大20)、不安の合計値が高かったのは、▼女性、▼20代、▼ふだんから「不安を感じやすい人」、▼持続的幸福感が平均未満の人、▼COVID-19関連経験(健康・仕事・家庭への影響)がある人だった。

COVID-19による「不安」「落ち込み」「孤独感」などの合計値
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

(3) COVID-19について不安を感じている人は、政府(国)・地方自治体の首長・医療関係者・メディアに対する信頼感が低い。

 信頼している対象として多かったのは、「医療関係者・専門家」(76.2%)、「私企業」(54.6%)、「地方自治体の首長」(52.2%)、「メディア(報道機関)」(37%)、「政府(国)」(35.2%)だった。

 男性は政府(国)を信頼し、女性は医療関係者・専門家やメディアを信頼している傾向がみられた。緊急事態宣言が解除された地域の居住者の方が、政府やメディアへの信頼がやや高い傾向もみられた。

 50代以上では全般的に信頼感が高く、とくに医療関係者への信頼が厚い。またコロナ関連の経験をした人も、医療関係者やメディアへの信頼感が高い。

 不安を感じている人の信頼感は全般的に低く、とくに政治(国・地方)や企業への信頼が低い傾向がみられた。

 また、テレビや新聞などの伝統的なメディアへの信頼とTwitterやFacebookといったソーシャルメディアへの信頼を比べると、全体としては半数近くの人がテレビや新聞などの伝統的なメディアをより信頼するものの、若い人ほどソーシャルメディアを信頼する傾向がみられた。

属性・立場別:信頼している対象とその割合(%)
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

(4) コロナ危機では、いつも以上に他者との「連帯」を感じている人もいるが、不安を感じている人は他者をやや厳しくみている。

 他者のふるまいへの評価と連帯感についての調査では、「コロナ危機の中で、日本の大多数の人は適切にふるまっていると思う」(43%)、「(同)とは思わない」(26%)、「最近、他の人と会うと、いつも以上に連帯を感じる」(16%)、「(同)とは感じない」(12%)という結果になった。

 危機にあって、他者に対してポジティブな思いを抱いている人の方が多いことが分かった。ただし「最近2週間で不安を感じた人」に限ると、「日本の大多数の人は適切にふるまっていると思わない」という回答が29%に、「連帯を感じない」という回答が16%にそれぞれ増え、やや厳しい評価になった。

「他者は適切にふるまっている」「いつもより連帯を感じる」と感じている人の割合(%)
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

(5) 多くの人が、今後の感染の可能性や国・経済の先行きについて、強い不安を感じている。また、経済や福祉の安定した社会を求めている。

 「ウィズ/ポスト・コロナ」時代における個人・国・経済・社会に関する見通しについての質問では、「自分や自分の愛する人が、COVID-19に感染したり、ひどく苦しんだりすることを恐れている」(73%)、「今後の不景気で苦しむことを恐れている」(72%)という回答が多く、多くの人が先行きを心配していることが分かった。

 また「コロナ危機をくぐり抜けたあと、日本はひどく傷ついた状態になっている」と思う人は46%だったのに対し、「とても強くなっている」と思う人は8%にとどまり、悲観的に感じている人が多いことも分かった。

 経済の回復に期待を寄せている傾向があり、「環境保護より経済成長優先」という意見の方が多く、また科学技術による問題の解決も望まれているという結果になった。

 今後日本が目指すべき方向性としては、「自由な競争を重んじるものの、税負担が大きくても福祉などが充実し、国が国民の安全と経済の安定を導くような社会が望ましい」という志向がみられた。

 COVID-19対策で財政規模が膨らむ中、公共投資などによる経済成長を重んじるべきか、財政規律を考えるべきかどうかという質問では、意見が割れた。
コロナに対する不安を減らして、ともに安定した社会を
 COVID-19に関する影響・不安・不信の構造を図で示すと、緊急事態宣言下の都道府県の居住者や若い人が、よりコロナによる健康・仕事・家庭への影響を経験する傾向がみられた。

 さらに、これらの影響を経験した人やふだんから不安を感じやすい人・持続的幸福感の低い人で、コロナに関する不安(緊張、落込み、孤独感など)が大きい傾向がある。

 不安が大きい人は、政府・地方自治体の首長・医療関係者・メディアへの信頼感も低く、他者のふるまいも厳しく評価する傾向がみられる。

新型コロナウイルスに関する「影響」と「不安」が「不信」を招く
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

 今回の調査を実施した研究者によると、日本人がコロナ危機への各主体の対応について信頼度が国際的にみて低いのは、「不安の大きさ」が背景にあると考えられる。

 他方で、コロナ危機において他者のふるまいを評価し、「いつも以上に連帯を感じる」といったポジティブな感情もみられた。さらに、たとえ社会的負担(税負担など)が大きくなっても、経済や福祉が安定した国を目指そうとする志向もみられた。

 「"コロナに対する不安を減らして、ともに安定した社会をつくること"が、今の日本人の願いなのかもしれません」と、研究者は結論している。

 「今後は各国のデータとも比較しながら、"ポスト/ウィズ・コロナ"時代における日本人の行動や価値観の特徴、そして未来に向かう姿を知るため、第2波・第3波調査を行っていきます」としている。

「今後の日本社会の目指すべき方向性」として何を期待しているか(%)
出典:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
[Terahata]

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