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日本酒の「酒粕」を再利用した酒粕クッキーや酒粕ショコラテを開発 酒粕には多くの栄養素が 福井大学のSDGsへの取り組み
2021年02月16日

福井大学や吉田酒造などは、産業廃棄物として扱われている酒粕を用いた「酒粕ショコラテ」「酒粕スコーン」「酒粕クッキー」を開発し、このほど期間限定で販売を開始した。同大学研究室によるSDGsの取り組みを事業化した成果だ。
産業廃棄物の「酒粕」を再利用
肥満抑制や整腸の効果を期待
現在、日本酒を製造する際、「酒粕」が産業廃棄物として年間約1,800トン排出されている。甘酒や粕汁に使用されることはあるが、そのほとんどが使用されずに捨てられている。
酒粕にはレジスタントプロテインやビタミンB群など、多くの栄養素が含まれる。レジスタントプロテインは、タンパク質でありながら食物繊維の働きをする成分。胃の中で分解されず、腸に届いて腹中の余分な脂を吸着する特徴がある。また、ビタミンB群は、エネルギー代謝の補酵素として重要だ。
そのため酒粕は、肥満抑制、整腸効果、美容効果などがあると期待されている。
福井大学が、ASUWAYAMA DECK、吉田酒造の協力のもと開発した商品は、酒粕をふんだんに使用したもので、健康と美容の両方の実現に貢献でき、産業廃棄物の減少にも貢献できるとしている。酒粕独特の香りを抑えつつ、酒粕の風味を感じられるようになっており、「酒粕が好きな方はもちろん、苦手な方も手に取っていただけるような商品です」としている。
販売期間は、2021年2月12日~3月31日(水)で、福井市内から数分で行けるカフェであるASUWAYAMA DECKで販売する。同カフェは、空と山と森に囲まれた開放的な空間で、市街地が見渡せるスカイデッキからの眺めは絶景だという。
開発に協力した吉田酒造(福井県吉田郡)は、1806年に酒造りをはじめた老舗で、同大学と2018年にオリジナルブランドとなる純米大吟醸酒「福の愉」を開発している。
肥満抑制や整腸の効果を期待

出典:福井大学 大学院工学研究科 産業創成工学専攻 経営・技術革新工学研究室
酒粕スコーン(プレーン、ドライフルーツ)酒粕スコーンは酒粕の風味が感じられる、外はサクッ、中はしっとりとしたスコーン。
プレーン 320円(1個入り)、ドライフルーツ 350円(1個入り) 酒粕クッキー(プレーン、紅茶)
酒粕クッキーはペースト状の酒粕を使用したことで、酒粕の風味を感じることができる、なめらかなクッキーに仕上がっている。
プレーン 320円(5枚入り)、紅茶 350円(5枚入り) 酒粕ショコラテ
酒粕ショコラテは酒粕を一度ペースト状にし、裏ごしをすることで酒粕を使った飲み物特有の舌触りを減らし飲みやすくしたチョコレートドリンク。
500円 ※価格はすべて税込表示。
古くから地場産業として盛んな酒造をSDGsで活性化
福井大学院工学研究科 産業創成工学専攻 経営・技術革新工学研究室は、2016年度より吉田酒造と産学連携による研究活動を進めており、2017年度に「起業化経営論」の受講学生が、田植えからデザイン、販売までを担った、日本酒の純米大吟醸酒「福の愉」を開発した。
2018年度はマーケティングやコトづくりの知見を含んだ教育活動を経て、2019年度より「FAA学ぶならふくい!応援事業」の補助を受け、SDGs達成をテーマに取り入れた教育活動を展開している。
「持続可能な開発目標」を意味するSDGs(エスディージーズ)は、持続可能でより良い世界の実現を目指す国際目標。経済、社会、環境の課題が17項目で示されている。健康・長寿の達成や、食品業界の積極的な参画、必要な栄養素を含む食品の安定供給、産業廃棄物の減少なども課題に含まれる。
福井大学では、食品産業の活性化とSDGsの達成に着目した研究・教育に取り組んでいる。授業では、日本酒を製造する過程で大量に廃棄される「酒粕」を応用した商品・サービスの創出を課題として課してきた。
福井県の地酒は古くから地場産業として盛んだ。日本でも有数の米の生産量を誇り、酒造りに最適な米を生産し、ミネラル分を含む水も豊富にある。江戸時代には廻船などの酒造りがいちはやく発展した地域でもある。
同県の地酒は現在、インターネットや物流の発展に合わせて全国的に人気があるものの、少子高齢化の影響を受けかげりがみえはじめている。次世代に向けた成長が期待されている。
今回の産学連携による研究活動が関連するSDGsの目標項目として、以下が挙げられている。
11 住み続けられるまちづくりを11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12 つくる責任 つかう責任
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
破棄されている表皮(ふすま)を食用に加工する技術を開発
農研機構北海道農業研究センターは、従来捨てられていたダッタンソバの表皮(ふすま)を食用に加工する技術を開発した。
ダッタンソバ粉は子実を粉砕して得られるが、その際に生じる、ソバ粉として使われない粒径の比較的大きな画分を「ふすま」と呼んでいる。ダッタンソバふすまは大部分が破棄されており、有効利用が求められている。
農研機構は、ダッタンソバふすまが、ダッタンソバ粉の約5倍量のルチンを含む画期的なルチン高含有食素材であることを確認。また、雑菌が多く保存性に劣る、ダッタンソバふすまから、色彩値を測定しながら焙煎加工することで、殺菌処理されたルチン高含有の焙煎ダッタンソバふすまを得る方法も確立した。
ルチンは、生活習慣病の予防・改善などに効果があると期待されている機能性成分。ダッタンソバの子実には、ルチンが普通ソバと比べて100倍程度含まれている。機能性食品の開発を目指す。未利用資源であるふすまの有効利用が可能になれば、ダッタンソバ生産者の所得向上にもつながる。

出典:農業・食品産業技術総合研究機構、2021年
福井大学 大学院工学研究科 産業創成工学専攻 経営・技術革新工学研究室
吉田酒造有限会社 農業・食品産業技術総合研究機構
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