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女性の健康週間 女性の健康へのリテラシーが必要 日本でも子宮頸がんのHPVワクチンが接種可能 「フェムテック」に期待

 3月1日~8日は「女性の健康週間」だった。女性が生涯を通じて健康で明るく、充実した日々を自立して過ごすためには、生活の場(家庭、地域、職域、学校)を通じて、女性のさまざまな健康問題を社会全体で総合的に支援することが重要となる。
 女性に多い子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンの接種が、日本ではなかなか普及しない。「HPVワクチンの有用性についての理解が十分でない」という調査結果が発表された。
 「フェムテック」(女性の健康問題をテクノロジーで解決する分野)への取組みも、本格的に開始されている。
子宮頸がんを予防 日本でも9価HPVワクチンが接種可能に
 日本では毎年約1万人の女性が新たに子宮頸がんと診断され、約2,900人もの尊い命が亡くなっている。子宮頸がんは、発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても、女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患だ。

 すでに80以上の国と地域で承認され、世界でも広く使用されている9価HPVワクチンが、日本でも2月から接種可能になった。子宮頸がんとHPVワクチンについては、日本人1人ひとりが理解すべき重要なテーマとなっている。

 子宮頸がんに対するヒトパピローマウイルス(HPV)の型のカバー率は、従来の4価HPVワクチンが65.4%であるのに対し、9価HPVワクチンでは88.2%になっており、多くの子宮頸がんを予防できる。
HPVワクチンの接種 「迷っている」が過半数
 女性の健康教育と婦人科系疾患の予防啓発活動を行っているシンクパールと、女性向けアプリ「ルナルナ」を運営しているエムティーアイは、3月1日~8日の「女性の健康週間」に合わせて、「女性特有のがんとHPVワクチンについて」の調査を共同で実施した。

 HPVワクチンは、日本では小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われている。

 HPVワクチンがあることを「知っている」と回答した、娘のいる母親に対し、「娘さんが、子宮頸がんの予防のためにHPVワクチンを接種することについてどう思いますか?」と聞いたところ、「迷っている」が54.7%、「受けて欲しい」が22.6%、「受ける必要はない」が14.0%、「すでに受けたことがある」が8.7%となり、接種にすることを迷っている母親が多いことが分かった。

 その理由(複数回答)は、「接種後の副反応が心配だから」がもっとも多く、「信頼できる情報がないから」「接種の効果効用がわからないから」と続く。
若年層に予防のための啓発をしていく必要が
 また、子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であるとされている。主な感染経路が「性交渉」であることを知っていることを「知っていた」女性は60.9%、「知らなかった」が39.1%となった。

 年代別にみると、24歳以下の若年層では約5割が経路について知らないという結果となった。子宮頸がんは、20歳代後半から増加することからも、予防のためにも感染経路を含めた正しい知識を、若年層も含めより啓発していく必要性がある。

 「今回の調査結果で、子宮頸がんという病気についての知識やHPVワクチンの有用性についての理解が十分でないことが明らかになりました。HPVワクチンにより子宮頸がんを減らすことは、国民の命を守ることに加え、少子化問題を考える上でも急務です」と、慶應義塾大学名誉教授・前内閣官房参与・元日本産科婦人科学会理事長の吉村泰典氏は述べている。

 「(HPVワクチンの接種は)厚生労働省が定める定期接種であるものの、当事者やその家族が接種に対して納得できていない実情も明らかになりました。昨年10月から接種対象者に通知を行うことが推奨されていますが、お住まいの各市区町村からの通知が届いていないという声を聞きます。ぜひ対象者に向けた通知と同時にわかりやすい情報提供の徹底を行っていただきたいと願っています」と、シンクパールの難波美智代代表理事はコメントしている。

出典:エムティーアイ、2021年
働く女性の悩みをフェムテックで改善に導く
 一方、SOMPOひまわり生命保険は、全国の女性1,000名を対象に、「フェムテック」(女性の健康問題をテクノロジーで解決する分野)に関する調査を実施した。

 経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」によると、"女性特有の月経随伴症状などによる労働損失"は年間4,911億円と試算される。「フェムテック」は、月経・生理に限らず、女性1人ひとりの身体的・精神的な課題の解決や、労働人口の減少などの社会課題への解決策としても期待されている。

 調査では、働く女性の悩みとして、「月経・生理」を挙げた女性が228人、「妊娠・出産」は47人、「更年期」は21人だった。とくに多かったのは、月経では「生理痛」、妊娠・出産では「つわり」、更年期では「全般的な不調」だった。

 働く上での女性特有の健康課題が解決された場合、仕事のパフォーマンスは、現状を100とした場合、平均41.3%上がると回答。月経・生理、妊娠・産、更年期による身体的・精神的苦痛を感じている方が多く、それらに対する対策を取ることができれば、パフォーマンスを向上できるという期待が示された。
フェムテックの認知度は低いものの、サービスを使用している女性は多い
 一方、「フェムテック」を認知している女性の割合は1.9%と低く、前年の調査から向上していなかった。一方で、26.4%が「女性のからだ・健康の悩み」に対応するサービスを使用していることが分かった。

 「新型コロナウイルス感染症流行の影響で、ヘルスケアに注目が高まる中、遠隔診療や在宅検査キット、薬の宅配などのデジタルヘルス分野のビジネスが急速に成長しています。フェムテックもその流れをうけ、改めてその重要性が認識されています」と、デロイト トーマツ ベンチャーサポートのセントジョン 美樹さんは述べている。

 「米国では、女性支援などを含む、子育て世代の自社従業員を支援する企業のほうが、そうでない企業よりも5倍以上のビジネスインパクトをもたらしたという調査も発表されています。女性は、自分の体(ホルモン値やバイオデータなど)を知って、妊娠、更年期などのライフイベントにまつわる選択肢を早くからら知ることで、ライフデザインをしやすくなります。そういった社会の実現のために、行政や企業、周囲の関係者もこの分野のリテラシーをあげることが必要です」としている。

出典:SOMPOひまわり生命保険、2021年

シンクパール
一般社団法人 シンクパール
SOMPOひまわり生命保険
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