ニュース

【新型コロナ】毎日をアクティブに過ごすために 糖尿病やがんなど慢性疾患をもつ人のメンタルヘルスを改善

 新型コロナウイルス感染症の拡大によるストレスの影響で、世界中で多くの人がメンタルヘルスケアの不調を経験した。
 とくに糖尿病、心臓病、がん、自己免疫疾患など、慢性的な健康上の懸念がある人では、新型コロナに感染した場合の重症化リスクが高いだけでなく、メンタルヘルスケアの問題も深刻であることが明らかになった。
 「コロナ禍で、慢性疾患をもつ人々のためのメンタルヘルス支援が不足しています。予防と管理を改善するために、的を絞った介入が必要です」と、研究者は述べている。
コロナ禍でメンタルヘルスケアの問題も深刻に
 新型コロナの拡大により、多くの患者はふだん通りに通院治療を続けるのが困難になり、身体的な健康を維持するのが難しくなった。

 とくに糖尿病、心臓病、がん、自己免疫疾患など、慢性的な健康上の懸念がある人では、新型コロナに感染した場合の重症化リスクが高いだけでなく、不安、うつ病、アルコールの乱用、睡眠障害など、メンタルヘルスケアの問題も深刻であることが、カナダのトロント大学などの研究で明らかになった。

 研究グループは、コロナ禍が始まった2019年12月から2020年10月までに発表された、英語と中国語で書かれた67件の研究を解析した。

 身体的健康と精神的健康は、経済の不安定、社会的孤立、医療や介護のケアサービスへのアクセス減少など、心理社会的な影響をともに受けやすいことや、また国や地域によっては、適正な情報が伝わりにくかったり、誤った情報が広がるなど、社会的な混乱が引き起こされた可能性が大きいことが示された。

 「新型コロナの感染拡大により、世界中が未曾有の危機に直面し、個人の対処能力を超えた問題も持ち上がりました。慢性疾患を抱える患者さんは、身体的健康に加えて、精神的健康が損なわれ、治療がさらに困難になることが懸念されます」と、研究委員長であるカナダのクワントルン工科大学のカレン デイヴィソン氏は言う。

 「メンタルヘルス問題のスクリーニング、低所得層への支援、デジタルリソースを使用した患者支援、オンライン医療や社会的処方、患者同士が助け合うピアサポートの充実など、さまざまな課題があります」と、ビクトリア大学社会学部のサイモン キャロル教授は言う。
運動でメンタルヘルスを改善できる
 ストレスを解消するために効果的なのは、運動を習慣として行うことだ。ウォーキングなどの運動には、メンタルヘルスを改善する効果もある。

 多くの人が積極的にメンタルヘルスを改善したいと思っているが、同時に、コロナ禍のもたらしたストレスや不安のために、運動をするのが難しくなったと感じている人も多いという調査結果が発表された。

 英国のマクマスター大学は、新型コロナのパンデミックが、運動不足や座りがちな生活スタイル、メンタルヘルスにどう影響したかを知るために、1,669人を対象にオンライン調査を行った。

 調査実施期間は2020年4月~6月で、回答者の91.9%は4週間以上、社会的に孤立した状態に置かれていたと回答した。

 その結果、新型コロナのパンデミックにより、強い心理的ストレスや、中程度の不安やうつ病を訴えるようになった人が多いことが明らかになった。

 パンデミックの6ヵ月前と比較して週の平均で、ウォーキングなどの有酸素運動は22分減少し、筋力トレーニングは32分減少した。一方で、座りがちな時間は1日に33分増加した。

 パンデミックにより身体活動量が大きく減少した人は、心理的ストレスのスコアが22%上昇するなど、メンタルヘルスの悪化が大きい傾向もみられた。運動量の低下した人は、「不安の増大」「社会的支援の不足」「運動できる環境へのアクセスのしづらさ」などを感じていた。

身体活動を維持できている人はメンタルヘルスの状態も良い

出典:マクマスター大学、2021年
新型コロナに負けず毎日をアクティブに過ごすための4つの方法
 逆に、身体活動レベルを平常時と同等に維持していたり増やした人は、メンタルヘルスの状態は比較的良いことが分かった。身体活動量の変化量と、うつレベル、不安レベルとの間に、負の相関がみられた。

 新型コロナに負けず毎日をアクティブに過ごすために、研究グループは4つのことを提案している。

とにかく体を動かす

 運動量が減ったとしても、くよくよ悩まないようにし、とにかく機会をみつけて、体を動かすよう心かげましょう。ちょっとした運動であっても、何もしないのに比べずっとましなのです。

運動強度を下げてみる

 新型コロナの影響で、強い不安を感じる人は、運動強度を下げてみてください。空いた時間に家の近所を少し散歩したり、室内で体操をするだけでも、立派な身体活動になり、気晴らしにもなります。

なるべく立ち上がって体を使う

 座りがちな時間を減らし、なるべく立ち上がって体を動かすようにしましょう。▼エレベーターよりも階段を使う、▼移動は車よりも徒歩で、▼デスクワークでは1時間ごとに休憩をとり体を動かす、▼テレビのコマーシャルの時間に立ち上がる、▼休日にはガーデニングや大工仕事などを行う――といった工夫をしてみましょう。

カレンダーに予定を書き込む

 運動をする日を決めて、予定を組みましょう。感染対策をして、周囲環境などにも注意を払っていれば、運動を安全に行えます。夏に屋外でマスクを着用して体を動かす場合は、強い負荷の作業や運動は避け、こまめな水分補給をこころがけてください。

Dearth of mental health support during pandemic for those with chronic health problems(トロント大学 2021年7月20日)
Interventions to Support Mental Health among Those with Health Conditions That Present Risk for Severe Infection from Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): A Scoping Review of English and Chinese-Language Literature(International Journal of Environmental Research and Public Health 2021年7月7日)
Pandemic paradox: People want to improve mental health by exercising, but stress and anxiety get in the way, research shows(マクマスター大学 2021年4月12日)
A mental health paradox: Mental health was both a motivator and barrier to physical activity during the COVID-19 pandemic(PLOS ONE 2021年4月1日)
>> 新型コロナ ニュース一覧へ
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2023年08月28日
極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
2023年08月21日
朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
2023年08月21日
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月21日
「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶