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外食産業を活用して肥満・メタボの課題を解決 京都大学とゼンショーが「食と健康科学研究講座」を開設

 京都大学と、外食産業などで1万店舗以上を展開するゼンショーホールディングスは、同大学大学院医学研究科に共同研究講座「食と健康科学研究講座」(奥野恭史教授)を開設した。

 同研究科のAI解析技術や最新の機器分析学と、同グループがもつ食資源・サプライチェーンを活用し、これまでの機能性食品素材の探索とはまったく異なるアプローチで、あらゆる食材での機能性の網羅的探索に取り組むとしている。

極端な糖質制限は体に負担をかけ「食べる楽しみ」を損なう

 京都大学と、ゼンショーホールディングスは、同大学医学研究科に共同研究講座「食と健康科学研究講座」を10月1日に新たに開設し、研究を開始した。外食企業で、このような食材に関する研究講座を開設するのは初の試み。

 同共同研究講座では、医学研究科のAI(人工知能)解析技術や最新の機器分析学と、ゼンショーがもつ食資源・サプライチェーンを活用し、これまでの機能性食品素材の探索とは全く異なるアプローチで、あらゆる食材での機能性の網羅的探索に取り組むとしている。

 日本人の食生活は、第二次世界大戦以降、動物性タンパク質や脂質の摂取量の増加などの変化を遂げたことで、がん、脳卒中、2型糖尿病などの生活習慣病の増加が深刻な問題となっている。とくに糖尿病をはじめとする生活習慣病の前段階の状態であるメタボリックシンドロームは問題視されている。

 糖分は人が生きていくためのエネルギーとして大切な食品成分だが、摂取量が多過ぎると血管が傷つきやすくなり、さまざまな障害を引き起こす。そのため、血糖値の上昇を抑えるには、糖質の摂取量を減らすことが有効であると考えられるが、極端な糖質制限は体への負担がかかる場合もあり、何よりも「食べる楽しみ」が損なわれる。

 このジレンマを解決するために、「おいしく楽しく満足感のある日常の食事」を通じて、無理なく健康機能を維持できるよう食品をデザインする技術の確立が課題になるとしている。

創薬分野で培った最先端技術を食に応用

 「食と健康科学研究講座」では、これまでの機能性食品素材の探索とは全く異なるアプローチとして、AIを用いた計算科学による食品素材探索を行う。この方法は、創薬科学で近年用いられるようになった方法で、ターゲットとなる化合物や、その作動メカニズムが解明されている場合には非常に有効とされている。

 AI解析技術を中心に、(1) 味覚などの感覚受容体での解析技術、(2) 腸管での栄養吸収解析技術、(3) 高度な機器分析による化学構造解析、(4) ゲノムから代謝産物でのオミクス解析の4つの技術を活用し、食事に対する満足感が得られ、しかも健康機能を維持できるような食品素材探索を行う。

 得られた知見から、食材の組み合わせや摂取の仕方を工夫することにより、無理なく健康機能を維持できる食環境の提供を目指す。

 同大学医学研究科人間健康科学系専攻の奥野恭史教授は、「人の健康維持に食事は欠かせないものです。それだけではなく、おいしい食事は我々に幸福感をもたらします。一方、肥満、糖尿病などの飽食が一因とされる病気の対策には、食事制限やダイエット食などがなされ、おいしいという幸福感を犠牲にしがちであることは否めません。本来、健康は幸福を手にするための必要条件であって、健康を手にするためにおいしい食事を楽しむ幸福感を犠牲にすることは矛盾しているのです。本講座では、これまで我々が医療、創薬分野で培ってきた最先端技術を食に応用することで、おいしさと健康を両立する新たな食の科学の開拓を目指します。」とコメントしている。

外食産業などで1万店舗以上を展開するゼンショーが協力

 ゼンショーホールディングスは、世界中の食のインフラを整備・確立するために、牛丼チェーンの「すき家」や和風ファストフード「なか卯」など、全国で1万店舗以上を展開している。そこで提供される食事は、健康な食生活を保証するものでなければならないとしている。

 「食と健康の課題につきましては、生活習慣病を未然に防ぐという観点から、栄養の過剰摂取が問題視されています。しかしながら今ある健康栄養施策は、おいしく・楽しく食事をすることとの両立を困難にさせています。本講座では、この難問を解決するために食材がもっている新しい機能性探索を開始します。得られた研究成果が、お客様の健康と豊かな食生活をリードできる技術として確立されることを願っております」と、同社ゼンショー中央技術研究所ではコメントしている。

京都大学 医学研究科 人間健康科学系専攻
ゼンショーの研究開発 (ゼンショーホールディングス)
食健ラボ 三色栄養素から調べる栄養素学 (ゼンショーホールディングス)

[Terahata]
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