オピニオン/保健指導あれこれ
中小企業の安全で元気な職場つくりを支援するために

No.1 中小企業の安全衛生を支援

愛知医科大学医学部衛生学講座 教授
柴田 英治
 スケールメリットから最も遠い職場

 健診機関にお勤めの方は、業務を行う際に、一事業所あたりの受診者数が少ないことが大変非効率であるとの印象をお持ちのことと思います。すべての働く人々に産業保健サービスを提供しなければならないという専門職の使命感がいくら強くても採算を度外視した活動はできません。

 しかし、この困難な仕事はやらなければならないのです。どうしたらできるのかについては長い間にわたり、様々な意見が出され、実践されています。中小企業の安全衛生を安定的に支援することはこの困難を克服しない限り、難しいといわなければなりません。この難問をどう考えるのかが、日本産業衛生学会中小企業安全衛生研究会の主要なテーマといってもいいと思います。

 産業保健分野における中小企業の位置

 産業保健研究、産業保健実践活動の発展の歴史を見ると、しばしば中小企業を舞台とした研究、実践が重要な契機になっています。

 例えば私の専門分野である職場で取り扱う有害物に関する重要な知見のほとんどが、中小企業での事例を出発点にしています。今ではどんな教科書にも載っているベンゼンによる造血器障害、ノルマルヘキサンによる末梢神経障害、芳香族アミンによる尿路系のがんなどの事例は中小企業で働く人々の中から生まれています。

 これらの貴重な事例の検討を受けて、動物実験や症例の詳細な検討の後、確固とした産業保健上の重要事項として広く認識され、まずは規模の大きい事業所がその成果を享受し、その後ある程度の時間が経過した後に中小企業に成果が回って来るという構造になっていると言ってもいいのではないでしょうか。

 言い換えれば中小企業で働く人々は産業保健サービスを受けるのが困難であるが故に、安全・健康上の被害を真っ先に受ける一方、産業保健の実践・研究から得られた成果を享受するのは最後になっているのです。これは中小企業が経済的にも不況の影響を真っ先に受けるとともに、最後に好況の影響を享受するのと同様です。その背景を見てみると私たち、産業保健専門職がしなければならないことが見えてきます。

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