オピニオン/保健指導あれこれ
中小企業の安全で元気な職場つくりを支援するために

No.2 キーワードは“連携、組織化、自主的対応”

愛知医科大学医学部衛生学講座 教授
柴田 英治
 地域職域連携はうまくいっているのか

 連携というキーワードを挙げるときに、決して忘れてはならないのが、地域職域連携という言葉です。

 地域職域連携は中小企業の支援を主な目的としたものではありません。縦割り行政の弊害をなくすため、人生の様々な年齢層で健康支援に関わる行政部署が連携するというのがその趣旨であり、すでに行政用語になっていますが、その意味するところは中小企業への安全衛生支援という側面からも大きな意義を持っています。

 産業保健の分野でも地域職域連携が重要であるという話は私がこの道に入って以来、一貫して強調されてきました。恐らくこの50年間くらいは言い続けられてきたことでしょう。しかし、私の周囲で実際に行われている地域職域連携は、産業保健の場に身を置いてきた私の眼から見ると、踏み込み不足という印象を受けてしまいます。生活習慣病対策を職場でも行うという考え方が基本になっているため、各職場の個別事情が考慮されないという問題があるのです。

 産業保健の分野で常に強調されるのは、現場を見て、その現場のリスクに基づいた活動をしなければならないということでした。工場、オフィスを問わず、現場には物理的・化学的・社会心理的な環境が存在しています。その環境を踏まえた対策を実行することこそが最も効率的な産業保健活動です。近年導入されているリスクアセスメントもこの考え方に基づいています。

 しかし、目を転じて地域保健の立場から見れば、全体を包むようなアプローチを基本とし、個別の職場の問題に入り込むことは上記とは別の意味で効率が悪くなるため、むしろ例外的な取り組みになります。ポピュレーションアプローチと呼ばれるこの手法は公衆衛生の基本的なアプローチの1つとして、地域保健では原則的な活動です。

 これまで、地域職域連携が必ずしもうまくいかなかった背景には、それぞれの職場に存在するリスクに基づいたアプローチ、及び多くの人々に共通する課題に基づいたいわゆるポピュレーションアプローチという2つのものがうまくかみ合わなかったという事情があるように思われます。地域保健分野、職域保健分野の専門家間の交流が不足していることが影を落としているのかも知れません。

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