オピニオン/保健指導あれこれ
中小企業の安全で元気な職場つくりを支援するために

No.3 誰が連携を進めるのか

愛知医科大学医学部衛生学講座 教授
柴田 英治

 中小企業と接点の多い、保健所、健保組合いずれに所属する保健師も支援には困難があることは明らかです。こう考えてくるとある種の無力感に襲われそうになります。圧倒的に数が多い中小企業で働く人々に専門家はどう対するのかという問題を解くもう一つのキーワードが自主的対応です。

 先進国でも中小企業で働く人々の安全衛生をどう支援するかという問題は、産業保健の主要課題になっていますが、産業保健専門職が手とり足とり支援することが不可能であることは共通しています。また、法律で逐一規制事項を設けたり、努力義務を列挙したりしても限界があることは、これまで法令準拠を基本に据えてきたわが国の労働衛生行政が胆管癌問題で機能できなかったことが端的に示しています。

 自主的対応と言っても、専門職は労使が動くのを座して待つわけではありません。個人向けの保健指導と同様、彼らに気づかせることによって自分たちでできる実感を持たせることが大切です。

 専門職が頻回に職場に入ることが不可能である以上、現場の労使が自分たちで安全衛生の活動を進められる状況をつくるというこの活動は当然ともいえるものですが、それにしても1つ1つの事業場に対して自主的な活動に導いて軌道に乗せるところまでフォローすることは不可能です。

 これまでに述べたキーワードの組織化、連携を十分に生かし、効率的で的を射たものでなければなりません。専門職の導きで自主対応型の安全衛生活動が盛んに行われ、効果を上げている事例はすでに多数存在しています。

 しかし、これが多数の中小企業をカバーするところまではいっていないのが実情です。私はまだ十分とは言えない我が国の中小企業の安全衛生支援の活動は、これまでに述べたキーワード、「組織化」、「連携」、「自主的対応」をそれぞれの地域の特徴に応じたやり方で進めることで、一挙にとはいかないものの、着実に進むと考えています。

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