オピニオン/保健指導あれこれ
保健師の活動と放射線について

No.3 保健師の実践へのヒント(1) ベラルーシ視察報告から学ぶ

保健師の活動と放射線 研究班
大森 純子
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生看護学分野
経歴:
聖路加看護大学看護学部卒業、東北福祉大学大学院社会福祉学研究科修士課程修了、聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程修了、社会福祉学修士、看護学博士。看護師、保健師、日本公衆衛生学会認定専門家。

学部卒業後、臨床看護師、産業保健師、行政保健師として勤務。宮城大学看護学部助手、聖路加看護大学助手、講師、准教授を経て、2014年から現職(東北大学大学院)。

 私たちは放射線防護文化の形成についてどのように考え、住民と共に保健活動を進めていけばよいのか悩みました。そのヒントを得るため、ベラルーシ共和国に視察に出かけました。

 現地では、1986年のチェルノブイリ原発事故の直後から現在まで、時間の経過とともに変化する住民や専門職の状況に応じて、国策として様々な対策を展開していました。

 ベラルーシでも、被曝ストレス症候群が広がり、人工中絶やアルコール中毒などが増加し、多くの人々の自立生活が阻害された時期があったそうです。

 日本でも、現在は、放射線そのものよりも、心理社会的な要因が人々の心身の健康とそれを支える生活文化を脅かしつつあります。

 外遊びや食事の制限による子供の心身の発達のリスク、放射線を話題にすることを避ける雰囲気、不安が強い人ほど表出できずに抱え込む閉塞的状況、避難先から帰還する選択と家族崩壊の危機、風評とスティグマの構図など、今後も長期的な経過の中で多様な問題が顕在化することを暗示しています。

 視察では、チェルノブイリと隣接するゴメリ州南部を中心に、放射線防護に関連する主要な機関を訪ねました。

 そこで、保健医療職・行政職・教育職から、専門職として放射線防護文化形成のためにどのような活動を展開してきたか、どのような役割を担ってきたか聴き取りをしました。

 そこから見えてきたテーマは、「住民自身がたくさんある健康リスクの一部として放射線を捉え、この土地に生きることに誇りをもち、自ら健康増進のための判断と選択、行動ができるようにする」という活動理念でした。その理念に基づく活動として、5つの実践を見出すことができました。この実践の拠点となっていたのは、衛生疫学・公衆衛生センター(保健所・保健センター)と、学校(小中学校・高等学校)でした。

視察のなかで、特に印象に残った場面を紹介します。

 視察の最後に、町内のバス待合小屋がカラフルな絵柄で彩られている理由を、町長に尋ねると、「バスを待っている間に気持ちが暗くならないように、誰かが絵を描いてくれたのよ」と笑顔で答えてくれました。

 文化とは、その地域の人々が共通してもっている、行動や思考の規範・基準となる価値観や信念です。保健師は、その地域の様々なリスクに応じて、住民とともにより健康な生活文化を形成する知識と技術をもっています。ベラルーシから得た実践へのヒントの多くは、すでに日頃から実践していることでもありました。

 日本の放射線防護文化の形成において、保健師は要となる専門職です。視察を通して、このテーマに関する住民との対話力など、放射線防護に関する実際的な知識と技術を習得し、それぞれの実践経験や実践知を共有し、学び合う機会とサポート体制が整えば、他の健康課題と同じように、住民や関連職種と共に事態に向き合い、前進できると思いました。

※環境省平成24年度原子力災害影響調査等事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業・放射線による健康不安対策の推進に関する研究「保健師による実際的な放射線防護文化のモデル開発・普及と検証:放射線防護専門家との協働によるアクションリサーチ」)の一環として、2013年2月にチェルノブイリに隣接するベラルーシ共和国のゴメリ州ブラーギンへ出向いた。

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