オピニオン/保健指導あれこれ
高齢者の外出、移動の問題を考える

No.2 民間の力を借り、より魅力的な事業に

医療・保健ジャーナリスト
西内 義雄

 産官学民の協働

 2017年5月、三重県松阪市の三重ダイハツ販売松阪船江店において、三重ダイハツ販売=林恒雄取締役社長、ダイハツ工業=三井正則取締役社長、松阪市=竹上真人市長、日本理学療法士協会=半田一登会長など、各団体の長が揃った報道発表が行われました。

 これはダイハツ工業が進めている「コトづくり」の一環として「高齢者の自己低減に受けた取組みを、産官学民での協働のもと開始」し始めたことの発表で、「いくつになっても自由に移動できる自立した生活」と「地域と連携してサポート」することを目的にしたものです。

 基本的な役割は産(ダイハツ工業/日本自動車連盟)、官(自治体)、学(日本理学療法士協会)、民(住民)が担い、実施する地域によりそれぞれの主体は変わります。

 そして発表後、協働の成果である「健康安全運転講座」が公開されたわけですが、一般的な高齢者のための講座とは一線を画す、興味深い内容だったのでご紹介します。

 餅は餅屋

 健康安全運転講座の中身と運営事業者、各者の役割は次のようなものでした。

(産=その1/三重ダイハツ販売)
 自社のショールームや車両を提供し、社員は講座全体の運営を円滑に進める

(産=その2/日本自動車連盟三重支部)
 安全運転のための講習を担当。専門家による詳しい説明に加え、会場内の実車を使い乗車姿勢やドアミラーなどの死角についても実体験してもらう

(官=三重県松阪市)
 事前の住民への周知と産学民の取りまとめ役。講座中に直接的な介入はないものの、高齢者支援課や包括支援センター、地域づくり連携課のスタッフが見守りながら、次なる連携を模索。

(学=三重県理学療法士会)
 すでに松阪市の事業で高齢者のための教室を任されていたスタッフが中心となり、車を運転するために役立つ動きと運動をレクチャー。

(民=松阪市港地区周辺の住民有志)
 住民同士誘い合っての参加(約20人)。松阪市は高齢者支援課などが住民による自主活動の芽を育ててきたので、有志の助け合いもかなりあった。中には民生委員が高齢者を伴っての参加も。

 つまり、いずれもその道のプロが得意分野をしっかり教える体制を整え、実車やAV機器など最新のものを駆使した講座が展開されていったわけです。

 明確な目的と賑やかさ

 画像を見ていただければ伝わるように、会場はガラス張りの明るいショールームなので、とても華やかな雰囲気がありました。関わる人の数も多く、それぞれの講師がどこの所属なのかわかるようなユニフォームを着用し、参加者は「専門家に教えてもらっている」との意識が強く受けたと思われます。

 ところで、皆さんはここに紹介している画像に、男性の参加者が多いことにお気づきでしょうか? 理由は以下のようなものがあると思われます

・テーマが自動車(安全運転)だったから
・自動車メーカーの華やかなショールームが会場だったから
・いつもの市や自主活動の雰囲気と何か違うはずと思ったから

 さらに、地元の自動車ディーラーが会場という親しみやすさ。事前に「どのメーカーの車に乗っていても参加OK」としっかりアナウンスし、市の担当者も後押ししていることの安心感もあったはず。

 もちろん、ダイハツとしてはこれを期に、より地元のお客さんとのつながりを深め、同居の家族や知人たちへの販売に結び付けようとの狙いは当然あるでしょうが、お互いに得るものあることなので、何の問題もないはず。

 さらなる行政と民間の連携に期待

 今、行政と民間企業などの連携が増えています。保健分野では、健診会場にコンビニエンスストアの駐車場を利用させてもらうなどの事例もあります。住民にとっても会場の選択肢が増えるよいことだと思います。

 一方「行政が一企業と連携することに疑問を呈す声」もあり、A社と共に何かしようとすると「同じ業種はたくさんあるのに、A社とだけ提携するのはいかがなものか」との声があがることも珍しくありません。私の知る限り、そのような声は住民よりも役所内から出ることが多いようで、結局諦めてしまったケースもいくつか聞きました。俗にいう「事なかれ主義」ですね。

 超高齢化社会では、高齢者が爆発的に増えていくのに対し、それを支えるマンパワーが圧倒的に不足します。行政だけで支えるなんて財政的にも厳しいことは明白なので、連携できる企業があるのなら、発想を変えて共に生き残る道を探るのが筋だと思う訳です。

 保健指導に携わる行政の皆さんも、もし自分の働く環境で連携するとしたら、どんな企業が候補になり、何ができるのか、今一度考えてみてみませんか?

「地域保健」に関するニュース

2018年09月19日
日本人の28%が65歳以上 女性の高齢者は2000万人超 働く高齢者も最多
2018年09月19日
「糖尿病腎症」のリスクは糖尿病予備群の段階で上昇 検査で早期発見を
2018年09月19日
早期乳児の腸管内ビフィズス菌 母親の分娩時の抗菌薬投与で減少
2018年09月18日
男性の同性間性的接触によるA型肝炎患者が激増
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月12日
【申込開始】あらゆる世代の健康支援に役立つ一冊 保健指導用・健康事業用「教材・備品カタログ2019年版」 
2018年09月11日
肥満でなくても「高コレステロール」に注意 日本人を30年調査 滋賀医大
2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年09月11日
「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位

最新ニュース

2018年09月20日
健やか親子21全国大会事前申込み受付中(10/12日(金)〆切)
2018年09月19日
日本人の28%が65歳以上 女性の高齢者は2000万人超 働く高齢者も最多
2018年09月19日
「糖尿病腎症」のリスクは糖尿病予備群の段階で上昇 検査で早期発見を
2018年09月19日
早期乳児の腸管内ビフィズス菌 母親の分娩時の抗菌薬投与で減少
2018年09月18日
男性の同性間性的接触によるA型肝炎患者が激増
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月13日
【9/10~9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます!
2018年09月12日
【申込開始】あらゆる世代の健康支援に役立つ一冊 保健指導用・健康事業用「教材・備品カタログ2019年版」 
2018年09月11日
肥満でなくても「高コレステロール」に注意 日本人を30年調査 滋賀医大
2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年09月11日
「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位
2018年09月11日
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果
2018年09月07日
「運動不足」が世界に蔓延 日本でも3人に1人が運動不足 WHOが報告
2018年09月07日
【母子保健担当者】災害時の母子保健対策に関するマニュアル等について
2018年09月06日
「保健師の活動基盤に関する基礎調査」を開始 日本看護協会
2018年09月06日
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動
2018年09月05日
高齢者のフレイル対策は栄養指導の大きな課題 日本栄養士会が全国大会
2018年09月05日
「スマートミール」認証がはじまる バランスの良い健康な食事の証
2018年09月05日
育児中の女性の孤独感 SNSなど双方向的な育児支援が必要 京都大
2018年09月05日
禁煙後の体重増加で糖尿病リスクが上昇 でも禁煙のメリットは大きい
2018年09月05日
暑さに対策してウォーキング 安全に運動するための10ヵ条
2018年09月04日
「ストレスチェック制度の活用」へるすあっぷ21 9月号
2018年09月03日
【「STOP!肥満症」強化月間記念行事】特別セミナー&市民のための身体健康チェック体験会ご案内
2018年08月31日
【健やか親子21】18歳から"大人"に!成年年齢引き下げで変わること、変わらないこと。(内閣府)
2018年08月30日
【参加募集中】2018年度 第1回産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「保健指導」※定員に達したため、応募を締め切りました
2018年08月29日
「アルコール」は健康に悪い? 総合的にみて安全な飲酒量はないと結論
2018年08月29日
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか?
2018年08月29日
朝食で「牛乳」を飲むと1日を通じて血糖値が低下 糖尿病を予防
2018年08月29日
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,421 人(2018年08月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶