オピニオン/保健指導あれこれ
高齢者の外出、移動の問題を考える

No.3 民間の取組みにアンテナを張れば、新たな解決差も見えてくる

医療・保健ジャーナリスト
西内 義雄

 予防的措置なら運転を常に見守るサービス

 No,2でご紹介したダイハツ工業の取組みは、産官学民の連携のよい例といえます。こうした事例はこれからもどんどん増えていくと思われますが、これからは保健従事者側も広くアンテナを張り、良いものを積極的に取り入れていくべきと考えます。そこで今回はさらにもうひとつ、注目を浴びている取組みをご紹介しておきます。

 それは2017年2月よりサービスを開始した、オリックス自動車の「あんしん運転Ever Drive」です。これは自動車に専用車載器を取付けることで、危険な運転挙動や車両の現在位置、走行軌跡などの走行データを、離れた場所からでもリアルタイムで可視化できるものです。

 専用サイト(http://orix-everdrive.jp/)があるので詳細は省きますが、データは過去にさかのぼって見直すことも可能なので、その人の運転が危険かどうか、客観的に判断する材料となるのです。

 これを利用すれば、たとえ離れて暮らしていても見守りたい人の運転を常にチェックすることができ、蓄積したデータは免許証の返納話をする際の有効な説明資料として役立ちます。

 複数企業が連携した試みも!

 もうひとつ、注目したいサービスとしてコンビニエンスストアのローソン、介護サービスのツクイ、そして前述のオリックス自動車の3者による事業「高齢ドライバー運転リスク振り返りサポート」もあります。

 これはローソン店舗内に設けたツクイの介護相談窓口で、高齢ドライバーの運転リスクに対するアドバイスを行うもので、前述の「あんしん運転Ever Drive」を利用している方への期間限定(2018年5月末まで)の無料サービスです。

 すでに利用中の方、これを期に導入をした方などを対象に、ツクイのスタッフが可視化された運転状況(急ブレーキ・急加速・速度超過・長時間運転など運転傾向の変化)を共に振り返りを、安全運転を促すのです。専門家の助言が入るだけで高齢ドライバー本人の受け入れ度がかなり上がるのではないでしょうか。

 実施予定店舗は埼玉と大阪の2府県4カ所。詳細はこちらのリリース(http://www.orix.co.jp/auto/press/pdf/release_170911.pdf)で確認していただくのがよいでしょう。また、この取組の内容については、以下のレポートも参考になると思います。

 オリックス自動車によるレポート(一部修正)

 2017年9月20日(水)、秋の交通安全運動イベント「地域で適正運転を考えてみよう」~高齢ドライバー向け交通事故防止イベント~を「ツクイ・ケアコミュニティさいたま三橋 ローソンさいたまシティハイツ」で開催しました。

 参加されたのは地域の元気なシニア15名。冒頭、オリックス自動車(株)リスクコンサルティング部 Ever Driveデスク工藤麻衣子マネジャーが、高齢運転者の事故の現状やそれに伴う改正道路交通法の内容や運転における認知機能の重要性、オリックス自動車提供のEver Driveなど自動車IoTを活用して自分の運転を知る方法などについて解説。

 その後、NPO法人 高齢者安全運転支援研究会 事務局 主任体操インストラクター平塚喜之氏によるシニア参加型の安全運転体操が実施されました。右手と左手で別の動きを行うデュアルタスクなど一つ一つの体操の動作と、その効果について、ユーモアを交えながら伝授されました。

 会場には度々どっと笑いが起き、終始わきあいあいとした雰囲気となりました。参加されたシニアの方からは「本当に楽しかった!免許更新の話も詳しく聴けてとても良かった。ケアローソンには1日に2回は来ている。またぜひやってもらいたい」というお声をいただきました。

 連携できる企業はもっと増える

 ちなみに、保健従事者にとってローソンなどのコンビニエンスストアは、各地の市町村との連携でもよく名の挙がる業種です。今回の事業に関しても、元はローソンが2015年より展開している「ケアローソン」(コンビニの標準的な商品やレトルトの介護食、介護用日用品などの販売。介護相談窓口や多世代が交流できるサロンスペースを併設)から発展したものといえます。

 No.2でご紹介したダイハツ工業、そしてここでご紹介しているローソン、ツクイ、オリックス自動車など、高齢者ドライバーの移動問題に関わる企業はこれからもどんどん増えていくこと思われます。すでに市町村単位の予算や人員では手詰まり感さえある超高齢化社会の問題は、こうした企業といかに連携していくか。

 官民の垣根などという言葉はもはや存在しないと考え、今後の連携を積極的に模索してくことも必要ではないでしょうか。

 家族の助言はなかなか通らない

 誰しも自分の老いを認めたくありません。運転免許証の更新時に検査を何度も受けたうえで、警察が「もうダメです」と引導を渡すのならともかく、家族や知人から「危ないからそろそろ返納を」のアドバイスに素直に従う人は少ないといいます。運転できなくなると、生活がしづらくなることがわかっているからです。

 歩くのがしんどいから自動車に頼りたいのに、なぜわざわざ取り上げる? との思いもあるでしょう。しかも、家族などからの指摘の多くは、離れて暮らし久しぶりに会って認知機能の低下を感じた。助手席に乗ったら危険を感じた。などのキッカケから始まるため、本人にしてみれば「たまたま会った(乗った)だけで何がわかる!」との気持ちをもってしまうようです。

 自動車に限らず、こうした可視化されたサービスや専門家による相談、指導を取り入れつつ、今後の高齢者の移動の足問題に役立てていきたいものですね。

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