オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.4 上司・同僚への支援

名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻
渡井 いずみ
 このコラムでは、がんを支える労働者本人や上司や人事担当者など職場の関係者に対して、産業看護職が支援を行うための重要なポイントや具体的な内容について紹介していきます。第4回となる今回は、上司・同僚への支援を取り上げます。

ヒント6. 治療と仕事を両立できる職場環境や作業条件を確認し、調整します
1. 病前の業務状況の把握
 がん治療のために休業している労働者が復職を希望する場合、病前の職場へ戻すことを基本として、産業看護職は休業中から準備を進めます。具体的には、

  • ◆上司や本人へのヒアリングを通して、病前の業務内容、作業姿勢、作業環境、職場のメンバー構成等を把握
  • ◆身体的負荷の高い作業(重量物の取り扱い、立位作業、厳しい作業環境、夜勤など)や単独業務(運転など)の有無について確認
  • ◆残業時間、出張頻度、突発的な業務の有無など業務の裁量度について確認
  • ◆職場巡視を行って実際のメンバーや作業状況を確認し、病前の仕事ぶりを聞き取る

 を行い、これらの情報を統合して復職判断に必要なアセスメントを行います。

2. 復職後の業務内容の確認
 職場における業務分担や調整の責任者は上司であるため、事前の連絡や調整は重要です。休業中(現在)の体調や治療状況について本人の同意を得た範囲で上司に伝え、また上司が復職後の業務計画をどう考えているかを確認します。復職判断には本人の病状だけでなく、復職意欲や受け入れる職場の状況、人事労務の方針など様々な要素が影響するので、上司の考えと本人の意思との一致度を確認しておくことは、とても大切です。

3. 復職後の業務内容の調整
 1、2を実施した上で、本人、産業医、産業看護職、人事労務担当者等が協議する「復職判定会議」を開催します。復職判定会議の目的は、様々な情報を関係者が共有し討議することにより、復職の可否を含めた「職場適正配置」を決定することです。最終的な見解は、産業医が公的文書(復職判定書、就業に関する意見書など)として会社に提出することになりますが、それぞれの関係者が最終決定に対して合意することが大切です。看護職は、十分な討議ができるよう必要な情報の共有と関係者間の調整を行うファシリテーターとしての役割を担います。

著者プロフィール

  • 渡井 いずみ
  • 渡井 いずみ
    名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻

    経 歴

    1989年 千葉大学看護学部 卒業
    1989年 虎の門病院 助産師
    1992年 富士通 株式会社 保健師
    2005年 東京大学大学院医学系研究科修了(修士)
    2007年 東京大学男女共同参画室 特任助教
    2011年 東京大学大学院医学系研究科 特任助教 学位取得(保健学)
    2012年 名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻 准教授
    現在にいたる

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