オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.4 上司・同僚への支援

名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻
渡井 いずみ
ヒント7. がんと診断された労働者が仕事を続けられるような、職場のサポート体制づくりと強化を行います
 産業看護職には、個々の労働者への健康支援だけでなく職場全体の健康支援や組織支援を行う役割もあります。

1.上司へのサポート
 がんの治療中の部下を受け入れることで、多くの上司は責任や不安・葛藤を抱えることになります。産業看護職は上司にとってのプライマリーな相談者・助言者となることが求められます。

 まず、がんと診断された労働者本人に対して、 (1)上司の理解を得ること、(2)上司が職場の同僚に適切な指示をしやすいように、職場の同僚にもある程度の情報開示が必要となることがあること、を良く説明します。本人のプライバシーを守りつつ上司の責任や立場も尊重する、そのためのバランス力が求められます。
 具体的なサポートとして、

  • ◆上司ががんと診断された部下と話し合う場を設け、職場の同僚に対して病状や業務制限についてどこまで開示するか、その伝達方法などについて合意形成をはかる
  • ◆状況によっては、人事労務担当者に該当職場への人材加配を提案する
  • ◆産業医や産業看護職が窓口となって医療機関と連携することを伝え、上司の負担軽減をはかる

 が、あげられます。上司が本人の健康面での配慮や対応に困ったときには、いつでも相談できることを伝えることが大切です。

2.同僚を含めた職場へのサポート
 復職した労働者への支援とともに、働く職場全体に対しても、きめ細やかな支援が必要です。

  • ◆定期的に職場巡視を行って作業状況や作業姿勢を確認し、職場と本人に対して具体的な助言をする(ストーマに作業台があたらないような作業方法を工夫する、など)
  • ◆作業条件や業務内容の見直しが必要な場合には、産業医面談を設定して就業制限等の変更を検討する(例:化学療法・放射線療法後に感染機会を減らすため出張制限をする)
  • ◆職場に対して、職場が配慮すべきこと、に関する健康教育を実施する
  • ◆該当職場における、緊急時のマニュアルやプロトコールを作成する

       これらを行いながら、産業看護職の存在や役割を周知し、困ったときには誰でも相談できることを伝え、本人を取り巻く職場の同僚の心理的負担を減らすようにします。

著者プロフィール

  • 渡井 いずみ
  • 渡井 いずみ
    名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻

    経 歴

    1989年 千葉大学看護学部 卒業
    1989年 虎の門病院 助産師
    1992年 富士通 株式会社 保健師
    2005年 東京大学大学院医学系研究科修了(修士)
    2007年 東京大学男女共同参画室 特任助教
    2011年 東京大学大学院医学系研究科 特任助教 学位取得(保健学)
    2012年 名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻 准教授
    現在にいたる

アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶