オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.4 上司・同僚への支援

名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻
渡井 いずみ
ヒント8. 互いに支え合い気遣う職場風土づくりを促します
1.本人への働きかけ
 復職する労働者には、自分は会社に不要な人間であると自己判断して退職を早期に決断しないよう話します。また、会社に無理な配慮を要望して職場における人間関係や公正性が損なわれることがないような支援を心がけます。例えば、以下のような支援が考えられます。

  • ◆自分に出来ること、出来ないことを上司や同僚に明確に伝える(例:週に1回は放射線治療のために出勤が遅れるが、○ケ月後には治療が終了する予定である)
  • ◆残業や業務の見直しなど職場が配慮をしてくれている場合、きちんと感謝の意を表現するよう伝える

2.上司・職場への働きかけ
 がん治療中(治療後)の労働者と一緒に働くことは、上司や職場にとって業務負担が増えることにつながります。一方で、「大きな病気に罹っても、この会社は社員を見捨てない」という会社への信頼感や満足感が職場全体に増す、という効果もあります。 産業看護職はこのような特徴をふまえ、

  • ◆がんを持つ部下を含めて職場をマネジメントしていることを支持する
  • ◆上司や職場がどのように業務分担や工夫をしているかを聞き、共感し、努力を労う
  • ◆周囲が無理をしすぎないよう、いつでも相談にのることを伝える
  • ◆必要に応じて、社内(外)での成功事例を紹介する

       といった態度で支援をします。

      3.人事労務担当者への働きかけ
       がん治療中(治療後)の労働者の復職判断、その根拠となる社内の就労規則の策定・改定について人事労務は重要な役割を担います。産業看護職は、適時、復職後の状況や職場での受け入れ状況に関する情報の中から必要なものを選択して人事労務担当者と共有し、本人あるいは所属部署に対する具体的な配慮について助言することを期待されます。社内での成功事例が蓄積され、人事労務担当者の経験知があがると、がんをもつ労働者の復職に対する心理的ハードルも低くなります。根気強く成功事例を増やし、その情報を伝えていくことが、ひいては会社組織全体の「互いに支え合い気遣う職場風土づくり」の醸成につながると考えられます。

著者プロフィール

  • 渡井 いずみ
  • 渡井 いずみ
    名古屋大学大学院 医学系研究科 看護学専攻

    経 歴

    1989年 千葉大学看護学部 卒業
    1989年 虎の門病院 助産師
    1992年 富士通 株式会社 保健師
    2005年 東京大学大学院医学系研究科修了(修士)
    2007年 東京大学男女共同参画室 特任助教
    2011年 東京大学大学院医学系研究科 特任助教 学位取得(保健学)
    2012年 名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻 准教授
    現在にいたる

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