オピニオン/保健指導あれこれ
がん治療を楽にする口腔ケア

No.4 乳がん患者さんに起こりやすいお口のトラブルと知っておきたい豆知識

静岡県立がんセンター 歯科口腔外科部長
百合草 健圭志

がんの患者さんによくみられるお口のトラブルとは?

 答えは、「歯周炎」「智歯周囲炎(親知らずが腫れる)」「口内炎」の3つ。

 歯周炎=歯肉炎が進行した状態。歯ぐきのはれや出血があり、歯周ポケットが形成され、ポケットからの排膿、口臭などがみられるようになります。

よくあるのは『親知らず』が悪化するケース

 百合草先生によると、がん治療やその副作用で体力が落ちると、もともとあった口の問題が悪化してくることがあります。

「例えば、『親知らず』が腫れてくる智歯周囲炎。『親知らず』は、斜めにはえていたり、先の方だけが出ていたりするため、そこに汚れがたまり、もともと歯周炎になりやすい場所です。そのため、もともとあった歯周炎が抗がん剤治療で悪化し、治療中に歯がうずくことがあります。事前にわかっていれば、抗がん剤の治療中は抗生物質で炎症を抑え、歯みがきをしっかりしてもらうことで腫れが治まります。どうしてもコントロールできない場合は、歯科担当医としてがん治療担当医と相談して、抗がん剤治療中に抜歯することも検討します」

POINT

 『親知らず』がある患者さんは、治療前に歯科医でチェックを。治療中は、歯肉炎や歯周炎が悪化しないように、正しい歯みがきを心がけることも大切です。

奥歯や『親知らず』の磨き方にはコツがある

 奥歯や『親知らず』は、磨き残しが出やすい部分。

 口を開けていると、奥歯に歯ブラシが届きにくくなるので、少し口を閉じ気味にして、歯ブラシを横から差し込むように入れて磨くのがコツです。

アフィニトールを服用している患者さんへの情報

 「口内炎は、がんの治療中によく見られる症状。一般的に抗がん剤治療では、約4割の患者さんにみられます」と百合草先生。

 しかし、乳がんの治療などで使われる「エベロリムス(商品名:アフィニトール/自宅で内服治療できる分子標的薬)」による治療を受けている患者さんでは、9割に口内炎が出たという報告もあります。なかには口内炎がつらくて、治療を止めたくなってしまうケースも少なくないそうです。

 「分子標的薬は、特定のがん細胞にだけ作用する薬剤といわれ、副作用の軽減が期待されましたが、残念ながらさまざまな副作用が出ます。エベロリムスでも、今までとは別のタイプの口内炎が出ることがわかっています。特徴として、治療開始から1週間ぐらいすると、1cmくらいの小さな口内炎がポツっと出てきて、しみます。ただし、最初の1ヵ月間を耐えれば、口内炎の出現頻度は徐々に下がっていきます。言い換えれば、使い始めにつらい症状がでますが、1ヵ月たって慣れれば、その後は楽に継続できると言えます。つらいときには、口内炎の治療をうけましょう。このアフィニトールによって起こる口内炎にはステロイド薬がよく効くことが知られています。もちろんうがいや歯みがきなどで口内を常に清潔に保つことも大切です」(百合草先生)

 従来の抗がん剤治療による口内炎ではステロイド薬は使わないそうですが、アフィニトールを服用中の口内炎は、アフタ性口内炎に特徴が似ており、ステロイド薬がよく効くそうです。

 このように、自分や家族に使われる抗がん剤の特徴を知っておくと、心の準備も、必要な対処もできますね。

知っておきたい医科歯科連携について

 がんを治療する病院の診療科に必ず歯科があるとは限りません。

 「かかりつけの歯科医がいる人は、がん治療を始める前に、一度受診しておきましょう。治療が必要な歯はないかどうかを確認したり、歯のクリーニングをしておいたりするといいですね。治療に必要な口腔ケアは保険診療で受けられます。普段から定期的に受診し、歯医者ささんと仲良くしておくと、がんの治療の際にもサポートを受けやすくなると思います」(百合草先生)

 かかりつけ医がいない場合でも、現在、全国約1万2000名の歯科医師が、がん連携登録歯科医となり、がん患者さんの口腔ケアをサポートしています。がん治療の担当医に紹介状をもらい、この連携登録歯科医を訪ねてみるとよいそうです。

 ※こちらから検索できます。>>がん連携登録歯科医名簿

「働く人のがん対策」に関するニュース

2019年03月12日
アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 動画を公開
2019年03月06日
大阪府が「健活10」を開始 健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標 1人ひとりの主体的な健康づくりを促す
2019年02月19日
アルコールがんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
2019年02月13日
子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
2019年02月03日
大人のがん教育への活用も。がん医療の現状とサバイバーの今をていねいに描くドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」を鑑賞して
2019年01月30日
すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会
2019年01月28日
2月2日より公開、がんの知識を一から学ぶドキュメンタリー映画『がんになる前に知っておくこと』
2019年01月22日
「食物繊維」が糖尿病や心臓病のリスクを減らす インフルエンザの予防にも有用
2019年01月15日
乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」
2019年01月08日
大人のがん教育を始めよう がん患者の就労問題に取り組む企業を支援 がん対策推進企業アクション

最新ニュース

2019年03月26日
【レポート】スローカロリー研究会 第5回年次講演会 ゆっくり吸収されるカロリーを具体的に活用
2019年03月25日
【新連載】住み慣れた地域で最期まで暮らすことを目指した「暮らしの保健室」~医療・看護・介護を通じた住みよいまちづくりの試み~
2019年03月25日
地域保健・健康増進事業報告②~健康診査についてなど「健康増進事業」の概要
2019年03月22日
2017年度 特定健診の実施率は53.1%、特定保健指導の終了者は19.5% 目標との隔たり埋まらず
2019年03月22日
【健やか21】春本番、自転車の思わぬ事故に注意! ~安全のために知っておきたいポイント~
2019年03月20日
運動は若さを保つための最善の策 40歳以降は筋肉を増やす運動が必要
2019年03月20日
糖尿病リスクはBMIが22以上から上昇 若い頃からの体重管理が重要 順天堂大学
2019年03月20日
保健指導と介護予防を一体的に実施 フレイル対策を強化 厚労省が方針
2019年03月20日
うつ病の発症原因は「仕事の不満足」 回復では「職場ストレス」が重要 職場でのヘルスマネジメント戦略
2019年03月20日
長時間労働が心筋梗塞リスクを1.6倍に上昇 日本人1.5万人を20年調査
2019年03月20日
歯周病がCOPDの引き金に 歯周病の人は発症リスクが4倍に上昇
2019年03月19日
地域保健・健康増進事業報告①~母子保健など「地域保健事業」の概要
2019年03月14日
【健やか21】募集開始!周産期メンタルヘルスと児童虐待予防セミナー
2019年03月14日
保健師の職業紹介番組を放映(テレビ神奈川、3/17)
2019年03月14日
「産業保健プロフェッショナルカンファレス」主催者変更のお知らせ
2019年03月13日
「睡眠負債」は週末の寝だめでは解消できない 睡眠を改善するための6ヵ条
2019年03月13日
認知症リスクは糖尿病予備群の段階で上昇 体と心を活発に動かして予防
2019年03月13日
【新連載】LGBTについて、学校保健分野・地域保健分野・産業保健分野で考える
2019年03月13日
994万人が高血圧 脂質異常症は221万人 糖尿病は過去最多の329万人 【2017年患者調査】
2019年03月13日
日本人妊婦で「静脈血栓塞栓症」が増えている 女性でも珍しいくない病気に エコチル調査
2019年03月13日
高齢者の多くが複数の病気を併発 医療費と介護費が増加 保健指導が必要
2019年03月12日
アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 動画を公開
2019年03月12日
【参加申込受付中】産業保健師会 2019年度 第1回研修会「産業保健師活動のあり方の本質に迫る―今どきの職場不適応の背景とその対応―」
2019年03月08日
睡眠に不満がある人は9割超―求められる十分な睡眠時間と質の高い眠り
2019年03月07日
【取材】多職種連携でも必要な「保健師の技術の可視化」を考える【平成30年度 日本保健師連絡協議会】
2019年03月07日
【健やか21】世界自閉症啓発デー2019(4/6東京) 参加申込み受付中
2019年03月06日
太っていなくても糖尿病やメタボに 日本人は少しの体脂肪増加や運動不足で異常が
2019年03月06日
糖質に着目した「1:1:1お弁当ダイエット法」 主食・主菜・副菜を最適に
2019年03月06日
大阪府が「健活10」を開始 健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標 1人ひとりの主体的な健康づくりを促す
2019年03月06日
認知症の発症を血液検査で予測 100%の的中率で判別に成功 長寿研
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,762 人(2018年12月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶