2. 血糖値とインスリン分泌量を比較

―― 研究のはじまり

難波: パラチノースに関する過去の研究からみた作用機序を知り、分解・吸収が穏やかであるということは、今我々が使っている糖尿病治療薬αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)のコンセプトに非常に近いなと直感で思いました。

 消化管のホルモンは単糖になってはじめて刺激されて分泌されるということはわかっていました。二糖でもオリゴ糖でも出ない(刺激しない)。ということは、α-GIで単糖になるステップを邪魔すれば小腸上部の消化管ホルモンは出にくくなり、下流に到達したときの単糖が小腸下部の消化管ホルモン分泌を促すことが作業仮説ではわかっています。

 消化管ホルモンとして知られるインクレチンには、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)という2種類があります。GIPは小腸上部(主に十二指腸)で、GLP-1は小腸下部(回腸)で多く分泌されるホルモンです。つまり、単糖が小腸のどの部位で消化管ホルモンを刺激するのか?によって、GIPとGLP-1の分泌バランスが変わってくると予想されるわけです。

 パラチノースは砂糖よりもゆっくりと消化吸収されるため、消化管下流に到達してはじめて単糖になる成分が多いと考えられ、このα-GIの作用コンセプトに近いなと思ったのです。そこで、パラチノースを飲んで普通のお砂糖の場合とインクレチンの分泌バランスを比べてみたらどうかなというのがこの研究のはじまりです。


―― 結果はどうだったのでしょうか。

難波: 今回はいきなり糖尿病患者さんというわけにはいきませんでしたので、健常者の方を被験者にしました。

 図1を見てください。これが砂糖とパラチノースを摂取した際の血糖値の推移です。砂糖と比較してパラチノースの血糖変動は予想通り山(ピーク)は低くなり、谷は浅くなりました。

図1
図1

 食後の血糖上昇は、なるべく穏やかなほうがいいのです。高濃度のブドウ糖で山が高くなると、血管内皮を傷害するといわれています。こういう高血糖の状態が繰り返し続くことで合併症を引き起こす可能性も高くなります。ですから、急激に血糖値を上げる食品は患者さんにあまり摂ってもらいたくない。

 次に、図2を見てください。同じく両糖質摂取後のインスリン分泌量を比較しています。激しく血糖が上がると、膵臓はインスリンを出さざるをえなくなるのです。健常人もしくは軽症の2型糖尿病の人では、まだ膵β細胞が元気なので、上昇した血糖に応じて強く分泌されます。

図2
図2

 激しくインスリンが出ることによって、血糖値は少し遅れてガクンと下がりこむという現象を引き起こします。ですから、山が高いと、それに巻き込まれて谷も低くなる。急角度に血糖値が下がると、お腹が減ります。

 激しい血糖変動が1日に1回でも2回でも繰り返され、年余にわたって継続すれば膵臓にとってはストレスになります。血糖値を急激に上げないということは、長い目でみると合併症の予防のみならず、短・中期的にみれば膵臓の不要なストレスを軽減できる癒やしにもなるわけです。

次は... 3. インクレチン(GLP-1とGIP)分泌量を比較

スローカロリーの情報ファイル TOPへ ▶

糖尿病ネットワーク 糖尿病リソースガイド