3. インクレチン(GLP-1とGIP)分泌量を比較

―― 血糖値の上がり方が、パラチノースと砂糖は全然違いましたね。インクレチン分泌も異なる結果だったのですか?

難波: GIP分泌に関しては、僕は頭の中では当然、分解されにくいほう(パラチノース)が刺激しないだろうと予測したのです。そして、分解しやすいほう(お砂糖)は、激しく刺激するだろうと。

 そうしたら、その通りでした(図3)。このGIPというホルモンは、腸に栄養が来ましたよ、インスリンを出して、というメッセージを膵臓に伝えるので、出ること自身は悪いことではありません。

図3
図3

 ただし、このホルモンの特徴として、栄養素を脂肪細胞に取り込みやすくさせるという性質があります。ということは、これがあまり激しく出ると、血中の栄養素、ブドウ糖などを脂肪細胞に導入しやすくするので、肥満を助長しやすいと考えられてます。だからGIPは、十二指腸であまりたくさん出過ぎないほうがいい。

 そして、さらにもう1つありました。消化吸収されていくと糖はだんだん薄まりながら、下部消化管へ移動します。ここには、GLP-1というホルモンがあります。

 GLP-1も、消化管に入った単糖を認識すると消化管粘膜上皮から分泌されます。パラチノースでは分泌されてたGLP-1が、砂糖の場合はすでに上部腸管で消化が終わっているので出ていないことがわかりました(図4)。

図4
図4

 このGLP-1の特徴はGIPの反対で、肥満を抑制しやすい効果を持っており、食欲をブレイクする働きもあります。胃の動きも少しブレイクして食行動を抑えるホルモンが出たほうが、食後の食欲を削ぐ可能性があるわけです。

―― メリットが4つも明らかになったのですね。

難波: とういことで、この研究で生理学的、科学的に証明できる4つの有用性を明らかにすることができました。パラチノースは血管をいじめにくい、膵臓を癒やす、肥満を助長しにくい、そして胃の動きも止めて満腹感を少し強めるのではないか?というものです。

―― 糖尿病治療薬に似た働きがあるのでは?

難波: いやいや、例えばGLP-1受容体作動薬は、これの10倍以上の血中濃度を高めるので桁が違いますよ(笑)。この薬ではその強い作用で胃を止め、食欲を落とそうというもの。パラチノースの場合は、同じような状態をより自然に作り出すということでは似ていますが。ですから、治療というより、予防的レベルのイメージですね。

―― 健常者や血糖値が高めと言われた糖尿病境界型の人には、予防的に使えるのでは?

難波: 健常人や境界型の人では今回の結果からみてシナリオ通りだと思いますが、糖尿病患者さんでどうなのかはわかりません。糖尿病が進むと膵臓が弱ってきて、健常人のようにはインスリンが出にくいはずなので、そういう人でも同じようなメリットが出せるかどうか。まずは、軽症の2型糖尿病患者さんで、研究を行ってみたいです。

次は... 4. 今回の研究から「スローカロリー」を考える

スローカロリーの情報ファイル TOPへ ▶

糖尿病ネットワーク 糖尿病リソースガイド