ニュース

食塩の摂取量を減らすと医療費を削減できる 「減塩」の効果は大きい

 2型糖尿病のある人が食塩の摂取量を適度に減少すると、脳卒中、心疾患、腎臓病の危険性が低下することが、ロンドン大学クイーン メアリー(QMUL)とセントヘリア病院による調査研究で明らかになった。
高血圧は脳卒中や心臓病、腎臓病
などの危険因子
 研究では、2型糖尿病患者が、食塩の摂取量を減らすと、血圧が低下し、尿中アルブミン排泄量が減少することが示された。この研究は米国糖尿病学会(AHA)が発行する医学誌「Hypertension」に発表された。

 アルブミン尿検査は、糖尿病腎症の初期に尿中に出てくるアルブミンを高感度に検出する検査。アルブミンは生体内のタンパク質の成分で、体液の浸透圧を維持し、いろいろな物質の運搬を行う重要な物質だ。糖尿病腎症になって腎臓のろ過機能が低下した状態になると、本来ならば尿中へ排泄されないはずのアルブミン質が排泄されてしまう。

 糖尿病腎症は心血管病の危険因子でもあり、微量アルブミン尿がみられる患者では、心血管イベントの発症頻度が高いことが報告されている。尿中アルブミン尿検査は、心血管病を早期発見するためにも重要となる。

 また、食塩の過剰摂取は、心血管病を引き起こす高血圧の原因のひとつだ。高血圧が増えると、それに伴う脳卒中や心臓病、腎臓病などが増加する。

 「高血圧は、2型糖尿病のある人にとって、心血管病などの合併症を引き起こす重要な危険因子です。2型糖尿病患者では、糖尿病のない人に比べ、心血管病が起こる危険性が2倍に上昇します」と、QMULのグラハム マクレガー教授は言う。

食塩を減らすと血圧が低下し、尿中アルブミン量も減少
 研究には、収縮期血圧134mmHg/拡張期血圧82mmHgと、血圧が少し高くなっている2型糖尿病あるいは耐糖能異常のある46人の患者が参加し、ランダム化比較クロスオーバー試験として実施された。

 参加者は、6週間にわたり5gの食塩が含まれる錠剤を服用し(介入群)、あるいは食塩0gのプラセボ錠剤のいずれかを服用し(対照群)、2週間の間をおいて、介入群と対照群を入れ替えて6週間にわたり錠剤の服用を続けた。

 その結果、食塩を過剰に摂取すると、血圧が135.5/81.3mmHgに上昇した。一方で、食塩を減らすと血圧は131.2/79.7mmHgに低下した。食塩を減らすと、尿中のアルブミンの量も減少した。

 「研究では、2型糖尿病あるいは耐糖能異常のある患者が食塩の摂取量を減らすと、血圧を下げられ、アルブミン尿も減ることが示されました。2型糖尿病のある人や、糖尿病予備群と指摘された人は、食塩の摂取量を減らすための実際的なアドバイスを受けるべきです」と、マグレガー教授は言う。
食塩の摂取量を減らすと医療費を削減できる
 英国食品安全局(FSA)は、食品業界と共同で、栄養改善と減塩についての先進的なプログラムを2000年に開始した。その目標は、成人の1日当たりの食塩摂取量を6g以下に抑えることだ。

 目標設定から5年後の2006年に、食品中の食塩含量は10~40%低下した。英国人の1日の平均食塩摂取量は、2003年の9.5gから2011年には8.1gと15%低下し、脳卒中、虚血性心疾患の死亡率にも改善がみられた。

 減塩によって脳卒中と虚血性心疾患による死亡は約9,000人減少し、医療費も約2,200億(15億ポンド)低下したと推定されている。

 一方、日本は世界的に見て摂取量が多い「減塩後進国」だ。日本人の1日の食品摂取量の平均は男性 10.8g、女性 9.2gだ。その原因は、調味料をはじめとする加工食品などから多くの塩分を摂取していることだ。
日本の減塩対策はまだ不十分
 日本高血圧学会は、高血圧の予防のために、血圧が正常な人には「1日6g未満」の食塩制限を勧めている。特に糖尿病や慢性腎臓病の人には、循環器病や腎不全の予防のためにも、「1日6g未満」の減塩を推奨している。

 最高血圧が130mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上であると、より低い血圧値の人に比べ、脳卒中などの循環器疾患や腎臓病が引き起こされる危険性が高い。特に糖尿病や腎臓病などを併発している人は、血圧を下げる治療が必要となる。

 日本高血圧学会は、毎月17日を「減塩の日」と定め、幅広い分野で減塩の啓発を広げる活動をしている。
減塩食品のリストを作成
 日本高血圧学会が食品の栄養成分表示の「ナトリウム量」の表示を「食塩相当量」の表示とするよう働きかけてきたのが功を奏し、食品表示基準が制定され、食品の栄養成分表示は2020年までには、原則として「食塩相当量」で表示されることになった。

 また、同学会は減塩をしようとしている人が役立てられるよう、減塩食品のリストを作成している。日本高血圧学会減塩委員会が主催し、高血圧の患者や減塩に取り組む消費者の参考になる市販食品を認定する「JSH減塩食品アワード」も実施している。

 「日本の減塩対策はまだ不十分。減塩の意識のある人を増やし、国民全体の塩分摂取量を減らす戦略が必要です。そのために医療従事者だけでなく、さまざまな立場の人々が協力・連携して活動することが重要です」と強調している。

Salt reduction yields extra benefits for type 2 diabetes patients(ロンドン大学クイーン メアリー 2016年5月10日)
Modest Salt Reduction Lowers Blood Pressure and Albumin Excretion in Impaired Glucose Tolerance and Type 2 Diabetes Mellitus(Hypertension 2016年5月11日)
UK coalition government derailed efforts to reduce salt in food(BMJ 2015年4月28日)
さあ、減塩! 減塩委員会から一般のみなさまへ(日本高血圧学会)
食塩含有量の少ない食品の紹介(日本高血圧学会減塩委員会)
[Terahata]

「特定保健指導」に関するニュース

2019年01月18日
健康について何でも相談できる「かかりつけ医」を検索できるサイトを公開
2019年01月16日
慢性腎臓病(CKD)対策 透析を防ぐために「睡眠」の改善が必要 大阪大
2019年01月16日
産後うつと関連して対児愛着が悪くなる 母親を早期支援し「ボンディング障害」を予防
2019年01月15日
糖尿病腎症の重症化予防 保健師・管理栄養士・薬剤師が連携 先進的な取組みを紹介 厚労省
2019年01月15日
乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」
2019年01月15日
アルコール依存症の飲酒量を低減する薬が登場 飲酒の1~2時間前に服用
2019年01月10日
【先着順申込み受付中!】 2/6 市民公開講演会 全国生活習慣病予防月間2019
2019年01月09日
「働き方改革と健康経営」へるすあっぷ21 1月号
2019年01月09日
【産保PC第7回(2018年度 第3回)レポート】職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~
2019年01月08日
高齢者の肥満症のガイドラインを公開 認知症やADL低下の観点を付加 日本老年医学会

最新ニュース

2019年01月18日
健康について何でも相談できる「かかりつけ医」を検索できるサイトを公開
2019年01月18日
【健やか21】2/11(月・祝日)シンポジウム「周産期からの虐待予防」
2019年01月16日
慢性腎臓病(CKD)対策 透析を防ぐために「睡眠」の改善が必要 大阪大
2019年01月16日
産後うつと関連して対児愛着が悪くなる 母親を早期支援し「ボンディング障害」を予防
2019年01月15日
糖尿病腎症の重症化予防 保健師・管理栄養士・薬剤師が連携 先進的な取組みを紹介 厚労省
2019年01月15日
乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」
2019年01月15日
アルコール依存症の飲酒量を低減する薬が登場 飲酒の1~2時間前に服用
2019年01月10日
【先着順申込み受付中!】 2/6 市民公開講演会 全国生活習慣病予防月間2019
2019年01月10日
【健やか21】ピアサポーター養成講座受講生の募集について(難病のこども支援全国ネットワーク)
2019年01月09日
「働き方改革と健康経営」へるすあっぷ21 1月号
2019年01月09日
【産保PC第7回(2018年度 第3回)レポート】職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~
2019年01月08日
高齢者の肥満症のガイドラインを公開 認知症やADL低下の観点を付加 日本老年医学会
2019年01月08日
大人のがん教育を始めよう がん患者の就労問題に取り組む企業を支援 がん対策推進企業アクション
2019年01月08日
がん終末期患者の3割が「苦痛あり」 介護など家族の負担も大きい 国立がん研究センター調査
2019年01月08日
「冷え性」を克服するための6つの改善策 足の冷えに動脈硬化が隠れていることも
2019年01月07日
保健指導リソースガイド 2018年に読まれた記事ランキング・ベスト20
2019年01月04日
妊娠~子育て期にだれもが切れ目ない支援を受けられるように―成育基本法が成立
2019年01月04日
厚労省が医療的ケア児と家族を支えるサービスの事例紹介の報告書を作成
2019年01月03日
IT導入で「障がい者雇用の可能性を広げる」期待高まる―野村総研調査
2018年12月26日
連休の夜更かし朝寝坊が体調不良の原因? 朝型生活でメタボや糖尿病のリスクを低下
2018年12月26日
認知症の発症を予想する新たなマーカーを発見 久山町研究の成果 九州大学
2018年12月26日
がん患者のための情報サイトを公開 就労や生活上の課題などの情報が中心
2018年12月26日
学生時代の運動歴が将来の健康を左右? 大学時代のスポーツ経験が影響
2018年12月26日
慢性腎臓病(CKD)患者はBMIが高値だと生命予後が良好 2万6,000人を調査
2018年12月21日
【健やか21】「アドバンス助産師1万2,000人に」日本助産評価機構が新たに992人認証
2018年12月20日
経団連の「働き方改革事例集」掲載企業の取り組み② ~仕事と育児・介護の両立支援 編~
2018年12月20日
経団連の「働き方改革事例集」掲載企業の取り組み① ~健康経営・健康増進活動の展開 編~
2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,762 人(2018年12月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶