オピニオン/保健指導あれこれ
働く女性を支える保健指導の視点―ライフステージに応じた健康課題とセルフケア

No.2 PMSは“我慢すべきもの”ではない—職場とセルフケアのアプローチ

女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長
高尾 美穂

 提供  大塚製薬株式会社

「見えにくく、支援が届きにくい」PMS

 就業女性の前半である性成熟期に多くの女性が経験するのが「月経随伴症状」です。最近では、健康経営の面からも、単なる「生理休暇」制度のみならず、「女性特有の健康課題」について、企業としても取り組むべきテーマとなってきています。

 「月経随伴症状」とは、月経周期に関連して現れる心身の不調の総称です。代表的なものに月経困難症とPMSがあります。
 月経困難症では、月経に伴う下腹部痛や頭痛、吐き気などの症状がよく知られており、原因疾患の特定できない「機能性月経困難症」と、子宮筋腫などの疾患を伴う「器質性月経困難症」に分類されます。
 一方、PMSとは「Premenstrual Syndrome」の略で、日本語では「月経前(ぜん)症候群」といいます。月経の始まる3〜10日前からイライラや倦怠感、乳房の張り・痛み、頭痛やむくみといった精神的・身体的な症状が現れますが、月経が始まると症状が軽減または消滅するのが特徴です。

 PMSで何らかの症状を抱えている女性は、70~80%程度にのぼるとされます[1]が、「見えにくく、支援が届きにくい」課題でもあります。月経の経血や痛みのように、わかりやすいサインがあるわけではなく、また「なんとなくだるい」と思っていたら数日後に月経が始まり、後からPMSを疑うケースが多いからです。

PMSは仕事にも影響を及ぼす

 症状の程度や現れ方には個人差があるものの、PMSは仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす、という調査結果があります。
 PMSのイライラや倦怠感で集中力が低下すると、生産性が上がらないのはもちろん、ミスが起きやすくなるかもしれません。体調不良を抱えながら勤務を続け、生産性が低下する状態は「プレゼンティーイズム(出勤していても成果が上がらない状態)」と呼ばれ、企業にとっても見過ごせない問題です。

 しかし、月経前に体調が優れないのは「いつものこと」「我慢するもの」と思い込み、普段と同じペースで働き続けている女性がほとんどではないでしょうか。職場内でPMSの認知は広がっていませんし、女性自身にも我慢するのが当たり前という固定概念があるように感じます。

出典大塚製薬・PMSラボ「仕事への影響」より作成
https://www.otsuka.co.jp/pms-lab/about/influence/work.html ](2025年11月現在)
画像提供:大塚製薬株式会社

我慢せず治療やセルフケアを

 PMSは毎月繰り返すものですが、「ただ我慢する」のではなく、婦人科での相談・治療やセルフケアで不調を改善し、うまく付き合っていきたいものです。

 セルフケアの基本は、睡眠・運動・食事です。生活習慣を見直してコンディションを整え、また、自分の月経周期や症状(時期・内容・程度)を記録して「認知行動療法」で客観的に把握することで、症状が軽減する場合があります。

 何よりもまずは、十分な睡眠時間を確保してほしいと思っています。日本人は睡眠時間が短くて有名ですが、毎日忙しく過ごす中でも優先順位を上げて、7~8時間の睡眠をとれるように意識して取り組んでほしいですね。
 そして、適度な運動も大切です。自律神経を整えたり、筋肉を維持したりするために、ヨガやスクワットがオススメです。
 さらに栄養バランスのとれた食事も欠かせません。タンパク質を意識して摂る人が増えていると思いますが、ビタミン・ミネラルにも注目してほしいです。特に、鉄、カルシウム、ビタミンB6などが推奨されています。食事で補いきれない場合は、サプリメントも選択肢の一つです。

 月経前は体から水分が排出されにくく、「むくみ」が生じやすくなります。「むくみ」などの身体的症状の強い人ほどイライラなどの精神的症状も強いことが、最近の研究でわかってきました。
 最近注目されているのが、ビタミンEの一種である「γ(ガンマ)-トコフェロール」です。大豆油などに含まれており、「むくみ」を軽減するという報告があります。月経前に「むくみ」症状のある女性に、γ-トコフェロールやカルシウム、エクオールなどを、7日間摂取してもらったところ、「むくみ」はもちろん、「イライラ・怒りやすさ」「気分の落ち込み」といった精神症状も改善された、という報告もあります。γ-トコフェロールなどの成分が、PMSによる不調緩和に役立つことが期待できるのです。

 その他にも、婦人科に受診し、低用量ピルや漢方薬、症状によっては向精神薬を用いたりすることで症状緩和につながる場合もあります。
 産業保健師の皆さんには、PMSの不調を改善する選択肢がいくつかあることを、ぜひ女性従業員に伝えていただきたいと思います。

自分のリズムを知り、整える

 ネガティブな印象の強いPMSですが、そもそも女性には月経の周期によってホルモンが変動するリズムがあり、しんどい時期が過ぎ去れば、今度はコンディションの良い時期が訪れます。
 女性アスリートの中には、このリズムを踏まえてコンディションを整え、試合で最高のパフォーマンスを出せるよう調整している人もいます。働く女性もアスリートと同じようにホルモンのリズムを理解・活用することで、自身のコンディションをより計画的にコントロールできる可能性があります。

 現在は月経周期の記録や予測のできるアプリなど便利なサービスがあり、PMSの症状が出るタイミングもある程度、把握できます。PMSの症状で仕事に影響が出るのであれば、まずは自分自身で知ろうとする姿勢は、社会人としても大事なことです。
 例えば、今日はPMSでしんどいから、残業せずに早く帰宅して休もう、といった調整をする。「毎月のこと」と諦めて、実は症状があるのに我慢して過ごすという「当たり前」を見直し、婦人科を受診する。
 そのようなアドバイスやサポートも、産業保健師が担える領域ではないかと考えます。

社内外でサポート体制を

 社内においては、男女を問わず、まずはPMSについて知ってもらうことが大切で、産業保健師からの情報提供や啓発活動がカギを握るでしょう。女性は月経周期によって体調や精神面が変化する、という基本が認知されるだけでも、女性従業員にとっては働きやすい環境に一歩近づくはずです。

出典大塚製薬・女性の健康推進プロジェクト「女性のヘルスリテラシー調査|2025年版」より作成
https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/report/health_literacy.html ](2025年11月現在)
画像提供:大塚製薬株式会社

 「調子の悪そうな部下がいるのですが、どうしたらいいですか?」という相談を受けることがあります。上司から突然、体調について声をかけられればハラスメントだと受け取られる恐れがありますから、そのような時には「産業保健師を頼ってください」と答えるようにしています。上司と部下、そして産業保健師という三者の関係性を作れば、より良いサポート体制が作れると思うからです。

 PMSは性成熟期の女性の誰にでも起こりうる身近な健康課題です。社内で安心して相談できる体制を整えることは、働く環境全体の質を高める第一歩と言えるでしょう。
 「PMSで婦人科へ相談に行く」というアクションは、なかなか起こしにくいと思いますが、かかりつけ医がいれば、さまざまな不調が起きたときに頼れる存在となります。何か他の病気が隠れている可能性もありますので、早期発見・早期治療のためにも、自己判断はせず、定期的に健診・検診を受けること、また、かかりつけの婦人科医を持つことも産業保健師の皆さんで呼びかけてもらいたいと思います。

参考文献
[1]Takeda T, Et al.:Arch Womens Ment Health. 9(4): 209-212, 2006.

大塚製薬の「女性の健康推進プロジェクト」が運営する情報サイト

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