茨城大学などの研究グループは、筑波山周辺地域の特産品「フクレミカン」の果皮に、抗肥満の効果があること、およびストレス抵抗性の獲得効果があることを、マウスを使った実験で確認した。
福来ミカンの果皮に肥満やストレスの改善効果
「フクレミカン(福来ミカン)」は、筑波山麓地域で生産されている在来の柑橘種で、果実は直径3~5cmと小さく、皮が薄いのが特徴。産地では古くから果皮が陳皮として食されており、七味唐辛子などに利用されている。
果肉も食べることが可能で、甘みが少なくすっきりとした酸味がある。最近ではその独特な芳香を活かして、飲料や菓子など多くの加工品の原材料としても利用されている。
福来ミカンの機能性成分については、シークワーサーなどにも豊富に含まれる「ポリメトキシフラボノイド」(ノビレチン、タンゲレチン)が特徴的に多いことが、茨城県産業技術イノベーションセンターの分析によってこれまで明らかになっている。新たな加工食品原料としての福来ミカンの活用が期待されている。
今回の実験では、成熟する前の福来ミカンの果皮の粉末を混ぜたエサをマウスに与え、肥満やストレスに対する効果を検証した。
研究は、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程3年の佐藤瑞穂氏と茨城大学農学部の豊田淳教授、井上栄一教授、宮口右二教授らの研究グループによるもの。
肥満やメタボリックシンドロームの予防効果が
抗肥満効果についての実験では、24時間明るさを保った環境で、一方のグループのマウスには高脂肪食だけを、もう一方のグループのマウスには福来ミカンの果皮の粉末を5%混ぜた高脂肪食を4週間与え続け、体重や血中のコレステロール値・中性脂肪レベルの変化の度合いを比較した。
その結果、高脂肪食だけを与えたグループに対し、福来ミカンの果皮の粉末入りのエサを食べたグループでは、エサの摂取量に有意な差異がなかったにも関わらず、体重増加量が少なくなっていた。また、血中のコレステロール量と中性脂肪レベルについても、福来ミカンの果皮の粉末入りのエサを食べたグループの方が低いことが確認された。
これらの結果から、熟する前の福来ミカンの皮には、抗肥満効果やメタボリックシンドロームの予防効果があることが示された。
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レジリエンスを獲得させる作用も
また、レジリエンス(ストレス抵抗性)に関する実験では、心理社会的ストレスを与え続けて作製したモデルマウスを用いた。3週間の間、通常のエサを与えた場合と、福来ミカンの皮の粉末を5%混ぜたエサを与えた場合とで比較したところ、福来ミカンの果皮の粉末入りのエサを食べたグループのマウスでは、コントロール群のマウスに比べて、レジリエンスが増加する傾向にあった。
その後、柑橘に含まれるフラボノイドであるヘスペリジンを0.1%混ぜたエサで同様の実験をした結果、ヘスペリジン入りのエサを食べたグループのマウスでは、レジリエンスが有意に増加していた。
そこでストレスで活性化するキヌレニン(KYN)経路に着目したところ、心理社会的ストレスによって脳の海馬および前頭前野のKYNレベルが上昇するのに対し、ヘスペリジン入りのエサを食べたグループのマウスではこの上昇がみられなかった。ヘスペリジン入りのエサはストレスによるKYN経路の活性化を抑制することで、マウスにレジリエンスを獲得させた可能性が示唆された。
「福来ミカンの機能性自体は以前から指摘されていたが、その効果が動物実験で確認されたことは大きな前進だ。これまで研究に粘り強く関わってきた学生たちにも感謝したい。果皮に多くの成分が含まれているため、果皮を食べるという習慣も福来ミカンの機能性を活かすことにつながるのではないか。茨城の特産品としてまた脚光を浴びれば嬉しい」と、豊田教授は述べている。
研究成果は、日本栄養・食糧学会の学術誌「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」と、日本農芸化学会の学術誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」にそれぞれ掲載された。
東京農工大学大学院連合農学研究科
茨城大学農学部
Dietary Intake of Immature Citrus tumida Hort. Ex Tanaka Peels Suppressed Body Weight Gain and Fat Accumulation in a Mouse of Acute Obesity(Journal of Nutritional Science and Vitaminology 2019年2月28日)