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ホエイ(乳清)やチーズに含まれるアミノ酸に認知機能を改善する効果

 ホエイ(乳清)やカマンベールチーズなどに多く含まれる「WY ジペプチド」と呼ばれるアミノ酸に、認知機能を改善する効果や、認知症を予防する効果があることが、東京大学の研究で明らかになった。
発酵乳食品の摂取による認知症の予防に期待
 アルツハイマー病に代表される認知症は大きな社会問題になっている。日本では460万人、世界では2,400万人が認知症を患っているが、有効な治療法・予防法は開発されていない。

 東京大学は、乳タンパク質(カゼイン)を特定の微生物由来の酵素で分解して得られた「WYジペプチド」が、培養ミクログリアのアミロイドβ貪食機能を亢進し、炎症性サイトカイン産生を抑制することを発見した。

 ジペプチドは、2つのアミノ酸が1つのペプチド結合で結合した分子。近年、ヒト体内で重要な役割を果たすペプチドが発見され、さまざまな生理作用をもっていることが分かり、研究が盛んになっている。

 「WYジペプチド」は、ホエイ(乳清)やカマンベールチーズなどに多く含まれており、これらの発酵乳食品の摂取による認知症の予防が期待される。

関連情報
「WYジペプチド」が認知機能の低下を予防
 アルツハイマー病モデルマウスに、病態発症前から「WYジペプチド」を経口投与すると、ミクログリアのアミロイドβ除去機能の亢進、炎症状態の抑制など病態の改善がみられ、認知機能の低下を予防できた。

 乳タンパク質を特定の微生物由来酵素で分解して生じたトリプトファン-チロシン(WY)ジペプチドで脳から分離したミクログリアを処理すると、アミロイドβを貪食除去する機能が亢進し、神経傷害につながる炎症性サイトカインの過剰な産生も抑制されることを見出したと発表した。

 研究は、東京大学大学院農学生命科学研究科獣医病理学研究室の中山裕之教授らが、学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻高島研究室、キリンホールディングスと共同で行ったもの。その成果は、科学誌「Aging (Albany NY)」に掲載された。
WYジペプチドやβラクトリンを含む認知症予防食品の開発に期待
 研究グループはこれまでに、アルツハイマー病モデルマウスを用いたカマンベールチーズの認知機能改善効果や、スコポラミン健忘症モデルマウスを用いた乳清由来ペプチド(βラクトリン)の認知機能改善効果を報告してきた。今回に研究では、発酵乳に含まれる特定のペプチド成分をアルツハイマー病の発症前から投与し、予防効果を得られることを解明した。

 今回の研究では、乳タンパク質(カゼイン)を特定の微生物由来酵素で分解して得られた「WYジペプチド」で、脳から分離し培養したミクログリアを処理した。ミクログリアは、脳内の免疫を担うグリア細胞の一種。異物や老廃物の除去など、さまざまな生理機能があることが知られている。

 その結果、アミロイドβ貪食機能が亢進し、TNF-α等の炎症性サイトカイン産生が抑制されることが分かった。さらに、「WYジペプチド」を摂食させたマウスでは、LPSの脳内投与で惹起される炎症が抑制され、記憶の低下も改善された。

 WYジペプチドを19週間摂食させた68週齢の老齢マウスでも、脳の炎症状態進行が抑制され、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの量も減少。加えて、加齢に伴い生じる海馬シナプス活動(長期増強)の低下も改善された。

 次いで、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、「WYジペプチド」投与の病態予防効果を検証したところ、投与群では対照群と比較して、アミロイドβの脳内沈着と脳内炎症が抑制され、空間認知機能やエピソード記憶等の認知機能の低下も改善された。

 これまで認知機能を改善するペプチドとしてβラクトリンが報告されていたが、今回はそのコア配列である「WYジペプチド」によるアルツハイマー病予防効果が明らかになった。

 「WYジペプチドは乳製品の中でも特定のホエイや、カマンベールチーズなどカビで熟成させたチーズに多く含まれていることから、WYジペプチドやβラクトリンを含む食材を用いた、日常的に摂取しやすい認知症予防食品の開発が期待される」と、研究グループは述べている。
東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医病理学研究室
Tryptophan-related dipeptides in fermented dairy products suppress microglial activation and prevent cognitive decline(Aging 2019年5月23日)
[Terahata]

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