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糖尿病が強く疑われる者1,100万人 令和6年「国民健康・栄養調査」から読み解く生活習慣病と地域差

 厚生労働省は令和7年12月、令和6年「国民健康・栄養調査」の結果を公表した。今回は4年に1度実施される拡大調査にあたり、全国平均に加えて都道府県別の健康状態や生活習慣の差が詳細に示されている。

 糖尿病が強く疑われる者が推計1,100万人に達したことをはじめ、若年女性のやせや高齢者の低栄養、食塩摂取量や喫煙率の改善といった成果と課題が同時に浮かび上がった。本調査は、今後の保健指導や地域保健施策の方向性を考える上で、重要な示唆を与える内容となっている。

糖尿病が強く疑われる者、1,100万人に到達

 今回の調査で、糖尿病が強く疑われる人は約1,100万人と推計された。これは日本の成人およそ10人に1人(男性17.7%、女性9.3%)が該当する計算であり、平成9年の推計開始(約690万人)以降、増加の一途をたどっている。特に60歳代以上での割合が高い。

 調査では「ヘモグロビンA1c値6.5%以上」、または糖尿病治療中の者を「糖尿病が強く疑われる者」と定義しており、この増加傾向は平成9年以降、一貫して続いている。健康日本21(第三次)で掲げる「令和14年度までに1,350万人に抑制する」という目標に対して、予断を許さない状況にある。
 一方で、予備群にあたる「糖尿病の可能性を否定できない者」は約700万人となり、平成19年のピーク時(約1,320万人)から大幅な減少傾向が続いている。特定健診・保健指導による介入効果が一定程度表れている可能性も示唆される。

働き盛り世代で治療中断・未受診が顕著

 保健指導上の大きな課題となるのが治療状況だ。糖尿病を指摘されたことがある者のうち、現在治療を受けている割合は67.4%にとどまる。特に30~40代の働き盛り世代において未受診・治療中断の割合が高く、男性の30代で約56%、40代で約66%、女性の30代で約94%、40代で約80%が治療を受けていないという結果が出ている(※)。

 健康日本21(第三次)が掲げる治療継続率75%には及ばず、若年層への早期介入と継続支援が急務といえる。

※ただし、30?40代は母数(糖尿病を指摘された人の数)が少ないため、数値がブレやすい点には留意が必要

出典:「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」P.13(厚生労働省、2025年12月 2日)

若年女性の「やせ」と高齢者の低栄養傾向が同時進行

 体格(BMI)に関しては、世代間での課題の違いが鮮明だ。

 適正体重を維持している者(BMI18.5以上25未満、65歳以上は20超25未満)の割合は60.7%だった。年代別にみると、20~60代男性では肥満者(BMI25以上)が34.0%、40~60代女性では20.2%を占めた。
 一方、20~30歳代女性のやせ(BMI18.5未満)は16.6%と依然として高い水準にある。さらに、65歳以上で低栄養傾向(BMI20以下)に該当する者は19.5%に上り、高齢期の低栄養リスクが顕在化している。

 「若年女性のやせ」と「高齢者のフレイル・低栄養リスク」が同時進行しており、ライフステージに応じたきめ細やかな栄養指導が求められる。

食塩は改善するも、野菜・果物摂取は目標未達

 生活習慣に関しては、長期的な改善傾向と目標未達の項目が混在している。

  • 食塩摂取量:平均9.6g(男性10.5g、女性8.9g)で、この12年間で最も低い値を記録した。しかし、健康日本21(第三次)の目標値(7g)とは約2.6gの乖離がある。
  • 野菜摂取量:平均258.7gで、目標値(350g)に対し約90g不足している。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上摂る者の割合も52.8%にとどまり、特に20~30代で低い傾向がみられた。
  • 果物摂取量:平均78.1gで、目標値200gの4割程度にとどまる。
  • 運動:習慣的に運動を行っている者の割合が34.6%と低調で、1日の歩数の平均値は7,071歩(男性7,763歩、女性6,495歩)で、目標とされる7,100歩にわずかに届かなかった。
  • 睡眠:睡眠で休養がとれていると感じている者の割合は79.6%と比較的高い。一方、適正とされる睡眠時間(20~59歳は6~9時間、60歳以上は6~8時間)を確保できている者は56.0%にとどまり、時間の確保が課題となっている。

喫煙率は14.8%で過去最低水準、飲酒リスクはなお残る

 習慣的な喫煙者の割合は14.8%となり、令和4年と並んで過去最低だった。
 男性24.5%、女性6.5%と性差は依然大きいものの、平成24年の男性34.1%、女性9.0%から着実な減少がみられる。禁煙外来の普及やたばこ価格の引き上げ、職場・公共空間での受動喫煙防止の広がりなど、政策と環境整備の効果が一定程度表れた結果といえる。

 ただし、40~50代男性では依然として3割を超えており、若年層における加熱式たばこ等の新型たばこの使用状況についても注視が必要だ。

出典:「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」P.22(厚生労働省、2025年12月 2日)

 生活習慣病のリスクを高める量の飲酒(純アルコール摂取量で、男性40g/日以上、女性20g/日以上)をしている者は、全体で11.4%(男性13.9%、女性9.3%)だった。特に60代男性(21.6%)と50代女性(18.4%)で高い割合を示している。

拡大調査で明確になった地域差と施策への示唆

 今回の拡大調査により、健康状態や生活習慣の「地域差」が統計的に有意な形で示された点は重要である。

 体格(BMI)、野菜摂取量、食塩摂取量、歩数、喫煙率(男性)の5項目について、全国の上位25%・下位25%のグループ間で統計的に有意な差が認められた。食文化・食環境や交通インフラ、気候、社会文化的背景といった地域特性が生活習慣に反映されやすいことは従来から指摘されてきたが、今回の調査では、その傾向がデータとしてより明確に示された。

出典:「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」P.7(厚生労働省、2025年12月 2日)

 地域ごとに課題が異なるという結果は、全国一律の施策だけでは十分な効果が得られないことを示唆している。
 保健指導担当者にとっては、全国一律の施策ではなく、自地域のデータを全国値と比較し、地域特性(歩きにくい環境、濃い味付けの食文化など)を踏まえた「環境整備(ポピュレーションアプローチ)」を進めるための重要なエビデンスとなるだろう。

 本調査結果は、生活習慣病対策を「個人の努力」に委ねるのではなく、地域・職域・生活環境を含めた包括的な支援の必要性を、あらためて示すものといえる。

参 考

令和6年「国民健康・栄養調査」の結果|厚生労働省(2025年12月 2日)
令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省(2025年12月 2日)
健康日本21(第三次)|厚生労働省

[保健指導リソースガイド編集部]