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「ワークライフバランス」の改善の効果 生活満足度は女性より男性で改善 34ヵ国を比較

 「ワークライフバランス施策の推進によって人々の生活満足度が高まる」ということは、一見自明にみえるが、ほんとうにそうだろうか?
 東京理科大学の研究チームは、OECD(経済協力開発機構)加盟34ヵ国のデータを用い、多国間の比較に基づいたマクロレベルの解析が行った。
 「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」の取得状況を改善すると、女性よりも男性の方が効果が大きいことが明らかになった。
ワークライフバランスの取組みが生活満足度を改善する?
 仕事と生活のバランスをとること(ワークライフバランス)と生活満足度との関係について、政策立案者や労働経済学者などの関心を集めている。多くの先進国でワークライフバランス政策が実施されており、国際的なトレンドとなっている。

 「生活満足度」は人々の幸福度や社会の健全性を測る重要な指標だ。「ワークライフバランスが改善されれば、人々の生活満足度も高まるだろう」と考えられているが、ひとつの国内や少数の国を対象とした研究しか行われておらず、多国間にまたがるマクロ的視点からのアプローチはなかった

 そこで東京理科大学経営学部の野田英雄教授は、日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟34ヵ国のデータにもとづき、生活上のさまざまな要素が男女の生活満足度にどう影響するのかを分析し、その結果を発表した。研究成果は「Journal of Happiness Studies」に掲載された。

 野田教授が既存の文献調査を行ったところ、ワークライフバランスに関する多くの既存研究は、会社規模、ジェンダー、管理レベル、個々人のキャリアステージなどといったミクロレベルのデータを使用していることが分かった。

 また、これまで行われてきた多くの生活満足度に関する研究では、労働経済学的アプローチがとられている。たとえば、製造企業による「家族に優しい」慣行の導入など、ワークライフバランスを改善するための取組みが、生産性や生活満足度の改善と関連付けられている。
日本はいまだに「男は仕事、女は家事」?
 ある社会学の研究では、ヨーロッパ諸国のデータを調査した結果、労働時間の長さと「ワークライフコンフリクト」または「ワークファミリーコンフリクト」の有意な関係性が明らかにされている。

 ワークライフコンフリクトとは、長時間労働・子育てや介護など、何らかの原因により、仕事と生活のアンバランスが目立つ状態のことをさす。

 ほかにも、ヨーロッパ25ヵ国を対象としたより大規模な研究では、職場の自律性と柔軟性がワークライフバランスにもたらす影響は多様であることが明らかにされている。

 カナダやEU諸国では、介護休暇や育児休暇の取得や労働基準法の改善に非常に前向きな姿勢がみられ。一方で、日本では家庭を支援する広範な法的枠組みがあっても、いまだ労働に関して「男は仕事、女は家事」といった、性別に基づいた伝統的な役割分担の意識が根強いことが示されている。
34ヵ国の「より良い暮らし指標」を比較
 そこで野田教授は、マクロレベルの視点から、OECDの「より良い暮らし指標(Better Life Index)」のデータを収集し、「ワークライフバランス改善の試みが、生活満足度にどの程度変化をもたらすか」を評価するための値(生活満足度のワークライフバランス弾力性)を算出し分析を行った。

 また、OECD加盟34ヵ国の男女双方の主観的健康状態、長期失業、所得格差と生活満足度の関係についても分析を行った。

 その結果、ワークライフバランスの指標である「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」は、EU加盟国の間で一様に高く、特にノルウェーとデンマークでは、生活満足度のスコアが同様に著しく高い値だった。

 さらに、34ヵ国すべてにおいて、男女問わず、スコアの傾向は類似していた。EU諸国、ニュージーランド、オーストラリア、イスラエル、カナダ、米国といったGDPの高い国々では、GDPと生活満足度の間に大まかな関連性があることも示された。
女性より男性のほうがワークライフバランスの改善が必要
 従来、ワークライフバランスの政策では、女性の懸案事項に焦点が当てられてきたが、今回の研究により、男性の方が女性より「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」を必要としており、もし、その時間が得られた場合の生活満足度への影響は、男性の方が大きいことが明らかになった。これは従来考えられてきた既存の見解とは異なる知見だ。

 このことから、人々の生活満足度を高め、生産性も高めるためには、組織の規定作成や国の労働政策のデザインの際に、従来のように女性の懸案事項に注力するだけではなく、男性のワークライフバランスを改善する施策を盛り込むことも重要であることが示唆された。

 一方で、所得格差による影響については、統計的な有意性は示されなかったが、さらに変数を追加して研究を行うことが必要かも知れないと野田教授は指摘している。

 将来的に、個々人の生活満足度を高めるような政策は、生産性や国民の福祉を向上するにあたり、重要な役割を果たすようになると考えらる。

 野田教授は「本研究で明らかになった知見は、日本を含むOECD加盟諸国での労働政策デザインにおいて、有益な示唆を提供することが出来ると考えています。また、現代はAI(人工知能)、スマートテクノロジー、ロボット工学などの急速な情報技術の発展による第四次産業革命とも呼ばれる変化の時代であり、労働環境も否応なく変化することが予想されますが、こうした変化がワークライフバランスに与える影響も、今後調べていく必要があると考えています」と述べている。

東京理科大学経営学部
Work-Life Balance and Life Satisfaction in OECD Countries: A Cross-Sectional Analysis(Journal of happiness studies 2019年5月15日)
[Terahata]

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